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認知症のサインや前兆はある?一気に進む原因は? 認知症の段階/種類別の症状と対策&進行を早める原因

認知症のサインや前兆はある?一気に進む原因は? 認知症の段階/種類別の症状と対策&進行を早める原因

認知症では物忘れだけでなく、進行段階によってさまざまな症状が見られます。認知症の4つの進行段階・4つの種類別の症状や進み方、特徴などについて解説します。認知症は早めのケアが重要です。正しい知識を身につけて進行・悪化に対処しましょう。

認知症の症状は2種類に分けられる

認知症の代表的な症状としては、物忘れや記憶力の低下などの「記憶障害」が知られていますが、その他にもさまざまな症状があります。

認知症の症状は、大きく「中核症状」と「周辺症状」の2つに分けられます。ここからは、それぞれの症状について詳しく見ていきましょう。

中核症状

中核症状とは、病気や病的な変化によって起こった脳の障害・機能低下によって起こる症状のことです。

主な中核症状の種類は以下の通りです。

  • 記憶障害……新しいことが覚えにくく、エピソードが丸ごと抜ける
  • 見当識障害……見当識(現在の日時、自分がどこにいるかなどを把握する能力)が低下し、時間・場所・人がわからなくなる
  • 遂行機能障害……計画を立てたり手順を考えたりすることが難しくなる 
  • 理解・判断能力障害……理解力や判断力が低下し、臨機応変な対応が難しくなる
  • 失行……手足の動かし方、身近な道具の使い方がわからなくなる
  • 失認……見たものの正しい認識ができなくなる
  • 失語……言葉の理解、表出ができなくなる

周辺症状

中核症状が本人が困る症状だとすれば、周辺症状は周りの方が困る症状と言えます。

本人の性格や生活習慣、周囲の対応、ストレスや不安などの心理状態が原因となって現れ、「行動・心理症状(BPSD)」とも呼ばれます。

主な周辺症状は以下の通りです。

  • 不安、抑うつ、無気力
  • 昼夜逆転、徘徊
  • 興奮、暴言・暴力
  • 妄想、幻視・幻聴
  • 不潔行為
  • 介護の拒否 など

ユマニチュードの姿勢で接し(患者の心に寄り添い、目線の高さを合わせ、手をとる接し方)、環境を整えることで向精神薬を用いずとも改善することもあります。

段階別│認知症の症状・進み方

認知症の進行段階は、大きく以下の4段階に分けられます。

  • 前兆(主観的認知機能低下(SCD)、軽度認知障害(MCI))
  • 初期(軽度)
  • 中期(中等度)
  • 末期(重度)

ここからは、認知症の進行段階を4段階に分けて症状について詳しく解説します。

前兆

前兆は、認知症になる前の段階です。物忘れのような症状が見られるようになるものの、日常生活に支障をきたすほどではありません。

加齢に関連した正常な変化の場合もありますが、認知症の最初期の兆候の可能性もあります。

1:主観的認知機能低下(SCD)

主観的認知機能低下(SCD/Subjective Cognitive Decline)とは、「最近物忘れが増えたかもしれない」と自覚はあるものの、周囲にはまったく気付かれていない状態のことです。

日常生活や仕事には支障はなく、認知機能検査でも問題ありませんが、近年の研究ではSCDの人の中にも、アルツハイマー病の初期段階の人が含まれていることがわかってきています。

脳血管性の認知症であれば、禁煙や生活習慣病を治すことで、認知機能の増悪を防ぐことができます。

SCDに該当するかどうかは、簡単なセルフチェックも可能です。

2:軽度認知障害(MCI)

軽度認知機能障害(MCI/Mild Cognitive Impairment)は、物忘れが増え、さらにそれが周囲にも気づかれ始める段階といえます。

日常生活や仕事への影響はないか、あっても軽度。そのため、「もう年だから」など、認知症の前兆とは気づかず加齢による物忘れと軽く考え、放置してしまう人が多く見られます。

まずは、お近くの内科で認知症スクリーニング検査を行いましょう。MMSEという世界的に行われるスクリーニング検査で24-27点であれば、MCIに該当します。

MCIの原因として、脳への刺激が足りていないことが多く、まずは社会性が保たれているか、また視力低下、難聴などが認知機能低下の原因になりますので、感覚器の健診も受けましょう。

脳への刺激を元に近づけることで、認知症の症状をMCIの段階で症状をとどめておくこともできるかもしれません。

さらに、2021年のNatureでは運動させたラットの血清を他の認知症ラットに注入すると海馬細胞が保持されており、運動が海馬萎縮を防ぐ可能性が示唆されました。(Nature. 2021 December ; 600(7889): 494–499 )

 運動によりMCIも改善が期待できるかもしれません。

MCIは認知症の前段階とされ、アルツハイマー病が原因である場合はレカネマブ投与の対症となります。投与した場合、進行を7.5か月遅らせることができるとされます。

初期(軽度)

初期の認知症では、「同じことを繰り返し聞く」「直前にしていた行動を忘れる」「会話のスピードについていけなくなる」など、日常生活や仕事に支障をきたすようになります。

今までできていたことが思うようにできなくなることで、意欲低下、気持ちの落ち込みが起こり、うつ病のような症状が起こることもあります。

中期(中等度)

中期では記憶障害がさらに進行し、「新しいことを覚えること」が困難になります。そのため、自立した生活を送ることが難しくなってきます。

  • 日時・場所、住所、電話番号などがわからなくなる(見当識障害)
  • 食事をしたことを忘れる(食べたことを覚えていない)
  • メモをしても、メモをしたこと自体を忘れる

記憶力は低下するものの「楽しい」「悲しい」といった感情は残りやすいとされ、適切なサポートが必要です。

末期(重度)

認知症の末期では、常に介助が必要な状態になります。

  • コミュニケーションや意思の疎通が難しくなる(言葉が理解できない、人を認識できない)
  • 歩行障害や運動障害、筋肉のこわばり
  • 失禁
  • 嚥下障害
  • 異食(食べ物以外を口に入れること)
  • 不潔行為

上記のような症状や言動に加え、末期の認知症では免疫力が低下し、感染症のリスクが高まるため注意が必要です。

種類別│認知症の症状・進み方

認知症は大きく分けて以下の4種類があり、それぞれ原因や症状、進み方が異なります。

  • アルツハイマー型認知症
  • 脳血管性認知症
  • レビー小体型認知症
  • 前頭側頭型認知症

ここからは、それぞれの認知症について解説します。

アルツハイマー型認知症

アルツハイマー型認知症は、最も多く見られ、全体の60~70%を占める認知症です。65歳以上で発症することが多く、男性に比べて女性に多く見られます。

女性に多い原因としては2つ考えられ、一つは女性のほうが寿命が長いこと。もう一つは、閉経によってエストロゲン(女性ホルモン)が分泌されなくなることが原因と考えられています。

物忘れ(記憶障害)から始まり、時間の経過によってさまざまな症状が見られるようになり、程度も進行していきます。

アルツハイマー型認知症の原因の一つと考えられているのが、アミロイドβなどのタンパク質が脳内に異常に蓄積することです。

このアミロイドβは、アルツハイマー型認知症が発症する20年以上も前からたまり始めているといいます。

昨年冬から、アミロイドβを取り除くレカネマブがアルツハイマー病の進行を遅らせる初めての薬として上市されました。

脳血管性認知症

脳血管性認知症は、大脳皮質に脳出血や脳梗塞等の脳血管障害が多発した結果、部分的な脳の部分的な機能低下により生じる認知機能低下です。

脳血管性認知症では、物忘れがひどいのに、判断力や理解力には低下がみられないなど、症状にばらつきがみられる(まだら認知症)といった症状が見られます。また感情の制御が難しくなるのも特徴です。

症状は徐々にではなく、脳の血管障害が起こるたびに進行していきます。

脳血管障害が生じた場所によって症状は異なり、歩行障害や嚥下障害、言語障害などが起こることもあります。

レビー小体型認知症

レビー小体型認知症は、大脳皮質にαシヌクレインで構成されるレビー小体と呼ばれる異常なタンパク質がたまり、神経細胞がダメージを受けることで起こるとされています。

パーキンソニズム(パーキンソン病症状)と幻視が最大の特徴です。

幻視は「白く」「小さい」ものからはじまり、時に存在感を伴って、人物の幻視が出現することがあります。

幻視を驚かずに「淡々と語る」ことも特徴ですが、状態が悪いと幻視に驚いてパニックになり、知人や警察に連絡し社会的な問題を生じることもあり、早期に向精神薬で鎮静されることで車いす、寝たきりになるのも早く、その意味で進行が早いとも言えます。

アルツハイマー型認知症に比べて進行速度が早いことが特徴です。

前頭側頭型認知症

前頭側頭型認知症は脳の前頭葉と側頭葉の萎縮が原因とされ、他の認知症と比べて低い年齢(50〜60代)で発症します。

主な症状では、物忘れよりも「人格・行動の変化」が見られることが特徴です。

例えば、まるで人が変わったような反社会的な言動、暴言や暴力、同じ言動を繰り返す、万引きをする、身だしなみに気を使わなくなるなどです。

社会的に問題となることが多く、早期に向精神薬が使用され、施設に入所する方も少なくありません。

個人差もあるものの、前頭側頭型認知症の進行速度はゆっくりであることが多いといわれています。

認知症の症状の進行を早める原因

認知症の進行が早まる原因としては、いくつかの影響が考えられます。

  • 脳への刺激の減少
  • 生活習慣(食事・運動・睡眠)の乱れ
  • 喫煙、過度の飲酒
  • 運動不足

脳への刺激が少なくなると、脳の活動量が低下して症状の進行につながります。また、生活習慣の乱れは高血圧などの生活習慣病を招き、それが認知症の悪化の原因になることも。

認知症への効果的な対策

アルツハイマー型認知症の根本的な治療方法としてレカネマブが登場しましたが、まだその予防効果は不十分です。(進行を7.5か月遅らせる程度)

他方、運動療法は明らかに認知機能低下を改善させることが証明されており、認知症になる前段階である主観的認知機能低下(SCD)であれば、健康な状態に戻れる場合もあります。

軽度認知障害(MCI)であれば、進行を遅らせることが可能です。

認知症への対策は以下の通りです。

  • 生活習慣を整え、生活習慣病を予防する
  • 認知症についての正しい知識を身につける
  • 相談できる場所を探しておく(かかりつけ医、もの忘れ外来、 地域包括支援センター、NPO法人や民間団体など)また、万が一認知症が悪くなった時、どうしたいかを伝えておく
  • 自分の希望を残しておく
  • 介護費用について考えておく

気になる症状があれば放置せず、早めに対策しましょう。自分や家族の認知症の進行について考えたとき、正しい知識や相談先を用意しておくことも大切です。

認知症の悪化を防ぐには早めのケアが大切

認知症の症状・進み方・進行スピードには個人差がありますが、悪化を防ぐためには早期発見と早めのケアが大切。

主観的認知機能低下(SCD)のような認知症の前段階であれば、対策次第で健康な状態に戻れる人も多いです。

年齢のせいにして放置してしまわないように注意し、できることからケアを始めていきましょう。

監修者プロフィール:渡邊 耕介さん

桜木町駅から徒歩1分、横浜の野毛で『のげ内科・脳神経内科クリニック』を開業しております。頭痛、パーキンソン病、てんかん、認知症が専門です。訪問診療も行っております。4月よりパーキンソン病のリハビリを行い、地域医療に貢献することを目標にしております。

記事提供/ハルメク365

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