
普段何気なく使っている物や言葉、経験している現象の中には、実はその名前をきちんと知らずに「アレ」で済ませているものが意外と多くあります。そんな物・事の名称解説をSNSで行っている今話題のクイズ系インフルエンサー・けんたろさんに、知っておくとちょっと周りに自慢できるかもしれない「言葉雑学」を教えてもらいました。
「発見」と「驚き」がいっぱい!奥深き言葉の世界へようこそ

小さい頃からクイズ番組に魅了されてきたというけんたろさん。「学生時代はクイズアプリに没頭し、社会人になってからはクイズサークルに参加するなど、その魅力に取り憑かれてきました」
特に言葉の持つ面白さに惹かれ、その魅力を多くの人と共有したいという思いから本業のかたわらでXでの発信を始めたのだそう。難読漢字や意外な商品名の由来など「へぇ~」とうなるような言葉にまつわる雑学を発信中で、Xのフォロワーは今や8.8万人(2025年5月現在)にのぼります。
言葉にまつわる知識を学ぶことについて「大人の方々にとってはこれまでの人生で蓄積してきた知識や経験を新たな視点から見直す機会になる」と話すけんたろさん。「『あぁ、そういうことだったのか』という発見と『へぇ~』という驚きを通じて、言葉の世界の奥深さを再認識していただければ」と話します。
「紹介する情報を通じて『言葉って本当に奥が深いな!』『クイズって面白い!』『新しい知識が増えた』と感じていただけたら嬉しいです」
ではさっそく、言葉の教養を深めていきましょう! あなたはいくつわかるでしょうか?
雑学1:実は略語だった!よく使う言葉の正式名称

「最近の若い人は言葉を略しすぎだ」と思ったことはありませんか? でも実は、あなたが日頃使っている言葉の中にも、無意識のうちに略している言葉はたくさんあるんです。
■食パン
食パンの語源に関しては複数あり、どれが正しいかわかりませんが、有力な説を2つご紹介します。
1つは、「主食用パン」の略。パンが日本に入ってきた当時はイースト菌などもなく、比較的小さな菓子パンだけが作られていました。それからパンが大きく膨らむようになり、米の代わりになり得るようになったため、「主食用」と名付けられました。
もう1つは「食べられるパン」の略。昔は美術のデッサンなどでパンを消しゴムの代わりに使うことがありました(消しパン)。そこから、消しパンと区別する意味で使われるようになりました。
■演歌
「演説歌」の略。元々は自由民権運動の政治運動家(壮士)たちが演説の代わりに歌った壮士節が始まりとされています。1930年代にジャズやクラシックが大衆歌に組み込まれていき、歌詞も政治とは関係のない叙情詩的なものに変わっていきました。
■バス
ラテン語で「すべての人のために」という意味の「オムニバス」が語源。フランスの乗合馬車の発着所の雑貨屋に書かれていたことに由来します。そこから多くの人が利用する乗合自動車をオムニバスと呼ぶようになり、その後略されました。
■経済
古代中国の「経世済民」を略した言葉です。現在の政治と同じような意味で昔から使われていました。明治以降“economy”の訳語として頻繁に使われるようになったようです。
■ピアノ
イタリア語で「小さい音と大きい音を出せるチェンバロ」という意味の「クラヴィチェンバロ・コル・ピアノ・エ・フォルテ」を略したもの。いつの間にか「小さい音」をあらわすピアノだけに略され、楽器を表す名詞となりました。元のピアノの意味は今でも音の強弱を表す音楽記号として使われており、mp(メゾピアノ)やpp(ピアニッシモ)などを楽譜で見た方も多いのでは。
雑学2:「アレ」で済ませがちな物の名前
日常会話の中で名前がわからずに「アレ」と呼んで説明をして済ませているものってありますよね? そんな「物自体は知っている」けれど名前がわからない「アレ」をまとめました。
■食パンの袋に付いているプラスチックの袋留め

アメリカのクイック・ロック社の創業者フロイド・パクストンが発明し、特許を取得している「クイック・ロック・バッグ・クロージャー」が正式名称ですが、一般的には「バッグクロージャー」と呼ばれています。もともとはリンゴを詰めた袋の口を簡単に閉じる方法として考案されましたが、やがてパンの包装にも使われるようになりました。日本では、クイック・ロック・ジャパン株式会社のみが製造しています。
■ミカンの房に付いた白い繊維状のもの

ラテン語で「白さ」を意味する「アルベド」が正式名称。アルベドは果実を大きくするために水や養分を送る維管束です。よくアルベドをきれいに取る人もいますが、食物繊維が豊富で、毛細血管を強くするといわれるビタミンPなどの栄養素も多く含まれているといわれています。
■腕時計の時刻を合わせるつまみ

お寺の釣鐘を吊り下げるための綱を通す部分である「鈕(ちゅう)」のことを日本では「竜頭」と呼んでいました。やがて日本に西洋から懐中時計が持ち込まれ、懐中時計に紐や鎖を通して吊るす部分を、鐘と同様に同じく時を告げるものということで、「竜頭」と呼ぶようになったのではないかとされています。
■刺身の下に敷かれているシート

スーパーなどで肉や魚などの生鮮食品の下に敷かれているアレ。1984年に食品包装資材を扱う(株)三和コーポレーションが、自社で作っている吸水紙を“ドラキュラ=血を吸う”という発想で「ドラキュラマット」と命名しました。ちなみに、生鮮食品から出る血液や肉汁のことを「ドリップ」と言うことから、「ドリップシート」とも呼ばれています。
■福引で回す道具

「ガラガラ」や「ガラポン」などとも呼ばれますが、正式名称は「新井式回転抽選器」といいます。新井卓也氏が考案したためその名が冠されています。当時帽子店を営んでいた新井氏がお客様への抽選会をするために、帽子の箱を利用して作ったのが始まりのようです。そのため、六角形や八角形の形となりました。
雑学3:よくある「あの現象」の知られざる名前
誰もが経験するけれど、名前を知らなかった「あの現象」を由来や原因とともにご紹介します。
■ウトウトしていたら「ビクッ」となる現象

この現象を「ジャーキング」といいます。医学的には入眠時に発生する筋肉の収縮の一種で、無理な姿勢でいる時や精神的なストレス・疲労があると起きやすいそう。原因は、まだ脳が完全に眠っていない状態の時に体や心が疲れていることで脳が混乱し、間違って筋肉を収縮させる信号を送ってしまうためとされています。リラックスした状態でもよく起こるようであれば、医師に相談を。
■図書館や書店に行くとトイレに行きたくなる現象
この現象の呼び名は、書評専門誌『本の雑誌』の読者欄に掲載された際の投稿者の名前から取って「青木まりこ現象」と言われています。現象の理由は「本のインクのにおいが誘発する」「トイレがない書店が多いので強迫観念からトイレに行きたくなる」などさまざまに推測されていますが、いまだに原因は判明していません。
■歳を取ると時の流れが早く感じる現象
子どもの頃に感じた1年より大人になってからの1年の方が短く感じることを、フランスの哲学者ポール・ジャネが提唱したことに由来し、「ジャネの法則」といいます。原因としては子どもの頃より刺激が少なくなり、単調な日々になっているからという説があります。この法則によると、時間の心理的長さは年齢に反比例するとされており、例えば50歳は1年の経過を5歳より10倍速く感じるのだそう。
いかがでしたか? 今日出合った「へぇ~」を、ぜひ家族や知人との話のネタにしてみてください。
若々しい脳を保つためにも、知的好奇心を持ち続けましょう

週末は図書館に通って雑学に関する調べものを続けてきたというけんたろさん。ご紹介した言葉の多くはクイズをきっかけに出合ったものなのだそう。
「クイズを通じて様々な知識に出合い、知識が増えていくことで世の中の解像度がより上がっていくと感じています。身の回りの事象に興味を持ち、考え、調べることで、人生はきっと豊かなものになるはずです」
知的好奇心を持ち続けることは、脳細胞を活性化し、いつまでも若々しい脳を保つためにも効果的といわれています。みなさんもぜひ、豊かな毎日のために「調べる楽しみ」を習慣にしてみてはいかがですか?
■教えてくれた人
けんたろ さん
国公立大学院卒業後、営業マンとして社会人生活をスタート。趣味のクイズや読書を通じて営業の奥深さを実感。「昨日よりちょっぴり賢いあなたへ」をモットーに、会話が苦手な方の話のネタや、勉強が苦手な方の興味を引く言葉の知識やクイズを発信中。Voicyパーソナリティとしても活動。
X:https://x.com/kenlife202010
※本記事は、けんたろ著『けんたろ式“見るだけ”ことば雑学辞典』(KADOKAWA刊)を基に構成しています。