
初詣は日本人にとって、もっとも身近な年中行事。でも、例えば海外からの観光客に「初詣にはどんな意味があるの?」「神社とお寺、どちらにお参りすればいいの?」と聞かれて即答できる人は、そう多くはいないのではないでしょうか。そこでこの記事では、初詣の起源、神社・お寺の参詣マナーの違いなどについて解説していきます。
初詣の起源は?今の形になったのは明治時代から

初詣が日本のどの風習からはじまったのかということについては諸説があり、一般的には「年籠り」と「恵方参り」を起源とする説があります。
「年籠り」とは、家長が代表となり、大晦日の夜から元日の朝にかけて氏神様の社に籠り、新年の豊作や家内安全を夜通し祈願する風習で、平安時代からはじまったとされています。
一方、「恵方参り」は、その年の干支によって決まる恵方(縁起がよいとされる方角)にある神社やお寺に参詣して、一年の無事と開運招福を願う風習で、節分の時期に食べる恵方巻とともに江戸時代から盛んになりました。
現在の「正月三が日に初詣へ行く」というスタイルが定着したのは、明治時代以降とされています。鉄道網の発展により遠方の寺社への参拝が容易になり、鉄道会社が沿線の有名神社やお寺を初詣先としてPRしたことが背景にあります。こうして初詣は全国的な行事となり、現代のような一大イベントへと変化していきました。
初詣は神社にお参りするべき?それともお寺が正解?

人気の初詣スポットというと、関東では明治神宮(東京)や浅草寺(東京)、川崎大師(神奈川)、成田山新勝寺(千葉)などが有名で、毎年300万人以上の参拝客が訪れるといいます。
神社とお寺、両方の名前があがっているため、「どちらにお参りするのが正解なの?」という疑問をいだく人も多いかもしれません。
答えは「どちらでも正解」です。
神社は神様をまつるところ、寺は仏様をまつり死者を弔うところという具合に神社とお寺の役割がはっきり分かれたのは明治時代の神仏分離令からのこと。それ以前の神社とお寺は「神仏習合(しんぶつしゅうごう)」という考え方のもと、一体化していました。今でも神社の中に仏堂があったり、お寺の中に鳥居があったりするところがあるように、日本人にとって神様と仏様をともにまつるのは自然なことなのです。
初詣で願いごとをするのは不謹慎?

初詣というと「願いごとをする場」というイメージを持つ人も多いかもしれません。しかし、本来の意味は、神様・仏様への新年のあいさつと、前年を無事に過ごせたことへの感謝にあります。まず感謝を伝え、そのうえで一年の決意を報告するのが古くからの基本的な姿勢です。
もちろん、「願いごとをしてはいけない」という決まりがあるわけではありません。ただし、その際には「〇〇してください」と一方的に頼むよりも、「こう努力しますので見守ってください」と誓いを立てるほうが、初詣の趣旨には沿っています。神仏にすべてを委ねるのではなく、自分自身の行動を見つめ直す機会と捉えることが大切です。
「喪中参り」「はしご参り」などのタブーはあるの?
親族が亡くなったばかりの「喪中参り」や、神社とお寺を続けて参拝する「はしご参り」について不安を感じる人もいるかもしれません。でも、初詣について宗教的に明確な禁止事項はありません。 ただ、神社には死を「穢(けが)れ」とする考え方があるため、「喪中参り」は避けるべきだという考え方があるのは確かです。また、神社とお寺の役割を厳密にとらえている人のなかには、「はしご参り」が神様・仏様への失礼にあたると考える人がいるかもしれません。とはいえ、初詣を「神様・仏様へのあいさつと感謝の場」ととらえるならば、形式にこだわる必要はないと考えることもできます。
初詣はいつまでに行く?期限はあるの?

初詣の期間については、一般的には「松の内」までと言われています。「松の内」とは、お正月に門松などの飾りを飾っておく期間のことで、年神様(としがみさま)が家にお泊まりになっている期間を指します。地域によって異なり、関東では1月7日まで、関西では1月15日まで(小正月まで)とされています。
また、「松の内」を過ぎても「節分(2月4日頃の立春の前日)」までを初詣とする神社やお寺もあります。
神社とお寺の参拝マナーの違い
神社とお寺の参拝マナーには、どのような違いがあるのでしょうか?
神社の参拝マナー

神社では、まず鳥居の前で一礼し、参道の中央を避けて進みます。参道の中央は、神様の通り道だと考えられているからです。手水舎で手と口を清めた後、賽銭箱の前で「二礼二拍手一礼」。これは神様への敬意と感謝を表す所作です。拍手には、神様に自分の存在を知らせる意味があります。
お寺の参拝マナー

お寺では拍手をしません。賽銭を入れたら静かに合掌し、一礼するのが基本です。仏様は悟りの存在であり、呼びかける必要がないと考えられているためです。線香やろうそくを供える際も、周囲への配慮を忘れず、落ち着いた振る舞いを心がけましょう。
初詣は「心を整える行事」
初詣は、古来からさまざまな風習の変遷を経て現代に根づいた、日本人にとってもっとも身近な年中行事です。その由来や意味を知り、神社とお寺の違いを理解することで、参拝はより丁寧で心のこもったものになります。今年の初詣は、正しい知識とともに、感謝の気持ちを伝える時間として過ごしてみてはいかがでしょうか。





