
日が短くなる秋冬は、空き巣などの侵入盗が増える季節です。「今まで被害に遭ったことがないから、うちは大丈夫」と思っている方ほど要注意! その油断が思わぬスキを生んでいるかもしれません。今回は、防犯のプロ・日本防犯学校の桜井礼子さんに、犯罪者の目線から見た「狙われにくい家づくり」のポイントを教えてもらいます。少しの工夫で、住まいの安全度はぐんと高まります。ぜひ今日からチェックしてみてください。
犯罪被害に「うちに限って…」は通用しない時代
ここ数年、報道で「闇バイト」や「トクリュウ※」いう言葉を耳にすることが増え、シニアを狙った空き巣や強盗事件の被害が深刻化しています。「特に戸建ては被害に遭いやすく、今まで被害に遭ったことがないという家も早急な対策が必要です。『うちに限って』という考えはまず捨ててください」と桜井さんは言います。
※匿名・流動型犯罪グループ
警察庁によると、2024年に起きた住宅への侵入窃盗はおよそ16,000件。侵入窃盗を手口別に見ると、家の中に人がいない隙に侵入する「空き巣」や寝ている間に侵入する「忍び込み」、昼間、人がいる時に侵入する「居空き」などがありますが、被害件数は空き巣が最も多く、侵入窃盗全体の約1/4を占めます。最近は宅配業者を装って住宅に押し入ったり、窓ガラスを割って押し入ったりする悪質な強盗も多発しています。
「日が短くなる秋から冬にかけて空き巣の被害は増える傾向にある」と桜井さんは言います。「日暮れが早いと室内照明がついていない家は留守にしていることがすぐわかり、狙われやすくなります。また、秋は行楽シーズンで家を空ける方も多い。晴れた日は空気がカラッとして気持ちよく、窓を開けて換気をする家も多いので、そういった点でも狙われやすくなります」
では、侵入窃盗をはじめとする犯罪に遭いにくい家にするために、どのような対策が有効なのでしょう。桜井さんによると、犯罪者に狙われやすい家には共通する5つの特徴があるそうです。みなさんの家が狙われやすい家になっていないか、チェックしてみましょう。
あなたの家は大丈夫?狙われやすい家の5つの特徴

1、見通しが悪い
塀や植え込みを高くしていると、犯罪者が侵入しても外からわかりづらいため、かえって犯罪被害に遭いやすい環境になってしまっているケースが多い。
2、敷地内が暗い
「節電・節約」のために敷地を含め暗い家で生活していると、「侵入しても気づかれにくい家」と犯罪者に狙われやすくなってしまう。
3、簡単に敷地内に入ることができる
門扉や外構のない家や、門扉に鍵をかけていない家は誰でも出入りできるので、犯罪者が敷地内に侵入していても周囲が違和感を感じづらい。
4、外出中であることが明らか
車を所有している家がガレージを空にしていたり、昼間から雨戸やシャッターを締め切りにしていたりすると留守であることを気づかれてしまう。
5、鍵をかけ忘れている
基本的なことですが、侵入窃盗の被害のうち無施錠の家が半数近くにのぼるのだそう。鍵がかかっていない家は、犯罪者にとってもっとも狙いやすい家になってしまう。
「防犯のため」と思って今までやっていたことが、かえって犯罪者のターゲットになりやすい家にしていたということもあったのではないでしょうか。ここからは具体的な「被害に遭いにくい家づくり」について解説していきます。
被害に遭わないための家づくりのポイントとは?
【音】で「異常を知らせる」

■敷地内に防犯砂利を敷く
ガラス製の防犯砂利は、踏むと大きな音がするので侵入防止に有効です。
■窓用センサーアラームをつける
窓ガラスに攻撃を加えたときに大きな音が出るため、犯罪者をひるませることができます。
【光】で室内に人がいるように見せ、夜間でも人の動きを可視化する工夫をする

■門灯、玄関灯、勝手口灯は夜中もつけた状態にする
就寝中もつけておくようにしましょう。
■敷地内の暗い部分はセンサーライトを設置する
■リモコン付きの照明器具を活用し、不在時も日没の時間帯に室内が明るくなるようにする
就寝中もどこか一室は照明をつけたままにして、タイマー機能で明け方に消灯するように設定しましょう。また、ドレープカーテンのすき間から外に光があえて漏れるようにしておくのがポイント。スマホ操作でカーテンを開閉できるグッズもおすすめ。
侵入に【時間】がかかる仕組みを整える

■フェンスはよじ登りづらい高さ180㎝ほどの縦桟にする
「縦桟」とは、縦方向に渡された桟のこと。よじ登ろうとしても足を掛ける場所がないため侵入防止に効果的。高さがあれば、なお◎。
■CP建材※を活用する
今は防犯性に優れた建材がたくさんあります。せめて1階部分はCP建材を活用しましょう。窓も防犯ガラスや防犯フィルムを全面貼りにすることをお勧めします。
※防犯性能の高い建物部品(防犯建物部品)として「CPマーク」がつけられている製品のこと。
■窓に補助錠を設置する
窓の上下に設置するのが◎。レールをサッシ枠に両面テープで留め本体をレールに通すタイプの鍵付きの補助錠を選ぶようにしましょう。
「空き巣犯は5分以内に侵入できない場合、約7割が諦めると言われています。大事なのは犯罪者に狙われない家にすることですが、狙われてしまった場合も侵入に5分以上かかるような「入りづらい家」にしておくことが重要です」(桜井さん)
地域の【人の目】で犯罪を防ぐ
犯罪者は人に見られることを嫌がります。地域で普段見かけない人がいたら顔を見て会釈しましょう(車も同様)。
■見通しの悪いブロック塀などの高さは、通行人にも敷地内が見える120~140㎝がベスト
■庭木は剪定して見通しをよくする
■日頃からご近所と良好な関係性をつくっておく
「不審者がいる」「家の前を何度も行き来する人や車がいる」など、異変を気に掛けてくれるご近所さんがいると安心です。
■人の目に代わる防犯カメラを設置する

防犯カメラには、センサーがキャッチしたものすべてに反応する「センサーカメラ」と、人や車に反応する「AIカメラ」があります。いずれも異変を察知したらスマホに通知が届くため、遠隔でも通報が可能です。音やライトで威嚇するタイプもあります。
防犯カメラの映像は警察庁の「110番映像通報システム」に送信し、捜査に協力することもできます。
その他
■ガレージを空にするときは、自転車を停めておく
「この家には誰かいる」という気配を出しておくことが大事です。長期不在の際は郵便局に不在届を提出しましょう。
防犯アイテムの購入は自治体の補助金制度の活用を

防犯対策で大事なことは、自身の家や行動を客観視することだと桜井さんは言います。「ぜひ一度、自分が犯罪者になった目でご自宅を見てみてください。きっと『もっとこうしておかないと』という隙が見えてくるはずです」。
防犯アイテムはホームセンターなどで様々な種類が販売されていますが、桜井さんによると「安価すぎる商品はおすすめできません。選ぶ際には注意が必要」と言います。個人宅に対する防犯対策用品の購入・設置費用に対して補助金を交付している自治体もあります。みなさんがお住まいの自治体の制度をぜひチェックしてみてください。
■教えてくれた人

桜井礼子(さくらい・れいこ)さん
一般社団法人日本防犯学校学長、日本初の女性防犯アナリスト。防犯界の第一人者、予知防犯提唱者、テレビでお馴染み「防犯の梅さん」こと梅本正行氏の一番弟子。事件現場の検証と取材に携わり自分自身でできる防犯対策をはじめ、子どもと高齢者・女性を守る防犯対策を分かりやすく解説。弱者を犯罪被害から守る予知防犯を提唱する活動を展開している。著書に『すぐできる60歳からの自宅防犯ワザ100(宝島社刊)』ほか。





