
暑い日が続くと、ついエアコンの効いた部屋で涼んだり、冷たいものを口にしたりしがちですが、急激な体の冷却は体調不良を引き起こす要因になることも。食事に話題の「薬膳」の考え方を取り入れて、食べ物からゆるやかに体を内側から冷やしてみませんか? 記事後半にはクイズもありますので、ぜひ挑戦してみてください!
なぜ今「薬膳」がブームになっているの?

ドラマで取り上げられるなど、今ブームとなっている「薬膳」。「字面を見ただけでは「薬の話?」と少々難解なイメージがありますが、実は既に私たちの食生活の中に自然と取り入れられている考え方なのです」と話すのは薬膳と栄養学の両方を取り入れたレシピに定評のある料理研究家の植木もも子さん。
「薬膳」を簡単に表現すると、日々の食事に体調や季節に合った食材を取り入れること。植木さんによると薬膳の歴史は紀元前までさかのぼり、今から5000年ほど前に中国で生まれ、日本には奈良時代に伝わってきたのだそう。
「暑い日はスイカを食べると涼しくなるよ」とか「寒いから生姜湯を飲もう」とか、みなさんも自然とこんな会話をしてきたのではないでしょうか。これらも薬膳の考え方を基にしたものです。
「太古の昔は皇帝の子孫を残すことこそ、氏族が生き残るために大切でした。当時は食が重要と考えられており、医師の中でも『食医』がトップに位置していたといわれています。皇帝の健康を維持する目的で食材や生薬について詳しく調べられ、今の薬膳の基となるものができたと考えられています」
「薬膳」といっても生薬や特別な食材を使うわけではありません。スーパーなどで売っているごく一般的な野菜や果物、食材で手軽に取り入れることができます。
「近年夏の暑さが深刻になっていて、以前より体調を崩しやすい人もいると思います。今薬膳が注目されているのも、そういった影響があるのではないでしょうか」と植木さん。「今こそ古来から重視されてきた『食で健康になる』という考え方に立ち返り、食材の特徴を季節や体調に合わせてうまく取り入れる生活を始めてみてはいかがでしょうか」
体を「温める食材」「冷やす食材」とは?

薬膳では、食材を「五性」という5つの段階の性質に分類します。このうち、体を温める性質を持つものを「熱性」と「温性」、冷やす性質を持つものを「寒性」と「涼性」、どちらでもない性質を「平性」と呼びます。つまり、体を冷やしやすい食材、温めやすい食材、温冷のバランスを崩さない食材があるというわけです。
具体的にどんな食材にどんな効能があるのか、詳しく見てみましょう。
■主な「熱性」(体を温める性質が強い)の食材
唐辛子、シナモン、生姜(乾燥させたもの)、胡椒、花椒、羊肉 など
■主な「温性」(体を穏やかに温める性質)の食材
カボチャ、大葉、ミョウガ、ネギ、もち米、モモ、アンズ、タマネギ、ラッキョウ、アジ、イワシ、サケ、ムール貝、エビ、鶏肉、紅茶、コーヒー、黒砂糖、酢 など
■主な「平性」(温冷のバランスを崩さない性質)の食材
うるち米、キャベツ、ニンジン、枝豆、トウモロコシ、カブ、パプリカ、ジャガイモ、サツマイモ、ナガイモ、キクラゲ、シイタケ、カツオ、ブリ、タラ、牡蠣、ホタテ、ウナギ、牛肉、豚肉、イカ、タコ、ココア、牛乳、はちみつ など
■主な「涼性」(緩やかに体の余分な熱を取る性質)の食材
ナス、キュウリ、オクラ、ほうれん草、レタス、セロリ、ダイコン、ビーツ、百合根、舞茸、マッシュルーム、リンゴ、梨、麦茶、烏龍茶、ジャスミン茶、ヨーグルト、氷砂糖、味噌、葛 など
■主な「寒性」(体の熱を取る性質が強い)の食材
トマト、トウガン、ズッキーニ、ニガウリ、空心菜、モヤシ、たけのこ、ゴボウ、レンコン、コンニャク、マルベリー、メロン、スイカ、バナナ、キウイフルーツ、柿、グレープフルーツ、ハマグリ、アサリ、シジミ、カニ、クラゲ、のり、わかめ、昆布、ひじき、緑茶、ルイボスティー、チーズ、バター、塩、しょうゆ、緑豆 など
【涼食クイズ】真夏に食べるならどっち?

ではここからは薬膳の「五性」の性質を基に、夏の暑い日に食べるならどちらの食べ物が良いかをクイズ形式でご紹介していきます。あなたは何問正解できるでしょうか? それでは、レッツトライ!
■第1問
中華料理店に入りました。どちらのメニューを選ぶ?
1:冷やし中華
2:チャーハン
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正解は…
「冷やし中華」

【解説】冷やし中華の麵の原料の小麦は涼性。具材のトマトは寒性、キュウリは涼性なので、載せる食材の五性によってより体を冷やしてくれます。チャーハンは油で炒める(火を入れている)ので体を温める力が強いです。
■第2問
お風呂で汗を流した後、晩酌に一杯。どちらのお酒を選ぶ?
1:冷酒
2:ビール
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正解は…
「ビール」

【解説】涼性の麦を原料とするビールの方が体を冷やす力が強いです。冷酒も毎日飲んでいるうちに熱が体に貯まってくるということなので、一度の飲酒で体が急に温まるというわけではありません。
■第3問
ランチに食べるなら、どっちのメニューを選ぶ?
1:牛丼
2:海鮮丼
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正解は…
「海鮮丼」

【解説】牛肉は平性、魚は生食なら涼性に分類されるので、刺身定食でもOK。
■第4問
お茶の時間に飲むならどっち?
1:冷えた緑茶
2:アイスコーヒー
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正解は…
「冷えた緑茶」

【解説】緑茶は涼性、コーヒーは生豆を焙煎することで温性の性質になります。
■第5問
家族に「ケーキを買ってきて」と頼まれました。どちらを選ぶ?
1:ショートケーキ
2:ガトーショコラ
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正解は…
「ショートケーキ」

【解説】生クリームは寒性、ガトーショコラに使われるチョコレートの原料・カカオは温性です。
何問正解できましたか? 毎日の食事に薬膳の考え方を取り入れて夏を元気に乗り切りましょう!
教えてくれた人

植木もも子さん
健やか料理研究家。管理栄養士・国際中医師・国際中医薬膳管理師。自宅にて東洋医学の薬膳と栄養学双方を取りいれた美味しいウエルエイジのための料理教室を主宰。カルチャースクールでの講師、企業、自治体などの健康増進のための講演、健康メニューの提案、開発等を手掛ける。雑誌やWEBでも薬膳料理を紹介。「毎日の食事が健康を作り、人生を作る」「美味しく!賢く!楽しく!健康に!」をモットーに活動。著書に『増補新版 薬膳・漢方 食材&食べ合わせ手帖』(喩静との共監修、西東社刊)、『身近な素材でつくるかんたん養生酒』(PHP研究所刊)、『薬膳のつくりおき』(家の光協会刊)など。