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「ブルーベリーは本当に効く?」スマホ時代の正しいアイケア習慣

「ブルーベリーは本当に効く?」スマホ時代の正しいアイケア習慣

夕方になると目がかすむ、目が疲れて頭痛や肩こりが酷い……。そんな目のお悩みはありませんか? スマートフォン(以下スマホ)が普及し、現代社会は目にとって負担の大きな時代です。視力の低下はうつや認知症にもつながるとされ、「目を守ることはこれからの人生を守る」といっても過言ではありません。大事な目を守るためのアイケアについて眼科専門医に聞きました。

スマホ使用によって起きる目のトラブルとは

現代においてスマホやパソコンは仕事や私生活の中で必要不可欠な道具。特にスマホは日本人の9割以上が所有する生活に欠かせない存在となっています。「SNSや動画配信、ゲームアプリなど便利なサービスが増え、スマホに費やす時間が増えている方も多いと思います。それに伴い、目にもさまざまなトラブルが現れています」と話すのは、眼科専門医の栗原大智さん。

栗原さんによると、いちばんの影響はドライアイや眼精疲労。ドライアイは、涙の分泌量が不足し、涙の質のバランスが崩れることで、目の表面が乾燥して不快感や見えにくさなどを引き起こす病気です。ゴロゴロする、ぼやけて見えるなどがその症状で、スマホの使用時はまばたきの回数が減り、涙が乾きやすくなるため、ドライアイの症状が強くなります。眼精疲労は目の使いすぎで生じ、目の疲れに加えて、頭痛や肩こりなどの症状も引き起こします。

しかし、スマホが引き起こす目のトラブルはこれだけではありません。栗原さんによると、特に注意が必要なのは次の3つだと言います。

スマホ老眼
老眼は、目のピント調節機能が低下して手元の物が見えにくくなる状態です。「加齢」が原因と考えられがちですが、スマホを使っている若い世代にも老眼に似た症状が出てきています。

■内斜視
内斜視は、右目か左目のどちらかの視線が内側に向かう状態です。スマホは目から近い手元の位置で操作するため、長い時間使用していると寄り眼の状態が続くことになります。さらにスマホは画面が小さいため、スクロールによって目を動かさなくても文字や画面の動きを追うことができます。その結果、目を外側へ動かす筋肉が緊張しやすくなり、内斜視を引き起こしやすくなります。

■睡眠不足

眠くなるとき、脳ではメラトニンというホルモンが分泌されます。寝る前にスマホを見るとスマホの光がメラトニンを減少させて睡眠の質が低下し、日中、集中できなくなります。

このようにスマホの使用は私たちの目を通して体に大きな負担を与えています。

さらに、スマホの使いすぎで問題になるのが「近視の進行」です。近視は一般的に「目が悪い」といわれる状態で、近くの物が見える一方、遠くの物が見えにくい状態です。「近視が恐ろしいのは、その程度が強くなると、白内障や緑内障などさまざまな目の病気のリスクが高くなること」だと栗原さんは言います。

「近視でもメガネやコンタクトレンズで対処すれば問題ないと考える方もいるでしょう。『視力が悪くなるからメガネをかけたほうが良い』と理解はしていても、近視が白内障や緑内障の原因になることまでは知らない方も多いです」

視力の低下は認知症リスクにも影響する

また、視力の低下は認知症を引き起こす要因になることもわかっています。2021年に発表された研究では、視力障害が認知症の発症リスクを1.47倍に、認知機能障害の発症リスクを1.35倍に引き上げると報告されています。 「イギリスの医学雑誌『ランセット』が設立した委員会も、認知症のリスク要因としてあらたに『視覚障害』を加えました。これらの報告や発表によって、視力が認知機能にも影響を及ぼす重要な要因であると注目を集めています。視力を守ることは、あなたの脳を守ることにつながります」と栗原さんは言います。

実は思い込みだった!? 目の常識をチェック

では、具体的にどんな対策を講じたらよいのでしょう。目に関する情報には案外誤りが多いもの。「何となくずっと意識してきたけれど、これって本当に正しいの?」。そんな目に関する常識を解説します。

目を酷使すると視力は悪くなる?

【△】目の疲れやドライアイの原因になることはあっても、大人の場合は使いすぎが理由で視力が下がることは少ない(子どもは注意が必要)

子どもの場合は本やスマホを近くで見ていると、目が近くの物を見やすい構造に変わりやすくなります。その結果、近視(遠くが見えにくい状態)が進み、遠くの物が見えにくくなることもありえます。一方、大人の場合は近視が進むことは少ないそうです。

「その代わりに目の疲れを感じやすくなり、ドライアイによる目の乾きや異物感などの症状も出てきます。中には一時的に見えにくさが出てくることもあるでしょう。しかし、通常は目を休めたり、目薬を使ったりすれば、症状が改善します。目を酷使するほどに目(視力)が悪くなっていくわけではありません」(栗原さん)

緑を見ると視力は改善する?

【×】緑を見ると心が落ち着くかもしれないが、視力が改善することはまれ

「遠くの緑を見ると視力が上がる」といつから言われるようになったかは分かりませんが、これを「緑色を見ると視力が上がる」と記憶している人がいます。たしかに、緑色は目に優しい色とされていて、目にかかる負担が少ないと考えられます。そのため、目の疲れによって視力が一時的に下がっている方は、緑色を見ると疲れが取れて、見え方が良くなるかもしれません。

しかし、緑を見ても視力が良くなるというわけではありません。大事なのは遠くの景色をぼーっと眺めることです。昔は遠くの景色に緑色の木々が多かったので、そこに「緑」というフレーズが加わったのでしょう。

患者さんから「どれくらい遠くを、どれくらいの頻度で見れば良いのか分からない」と言われることがよくあるという栗原さん。

「僕の外来では、『20分に1回、20秒間、20フィート(約6m)離れたところを見るようにしましょう』と説明しています。これは「20-20-20ルール」と言って、アメリカ眼科学会も推奨している方法です。連続して20分間デジタル端末の画面を見たり、文章を読んだりしたら、20フィート(約6m)離れたところを20秒間見るというものです。目の疲れを自覚している方はこのルールを取り入れて、定期的に目を休ませる時間を作ると良いでしょう。

ブルーベリーで視力は改善する?

【△】視力が改善することはほとんどなく、効果があっても目の疲れが取れたり、暗いところで目が慣れやすくなったりする程度

「ブルーベリーが目に良い」という話を信じている方には残念ですが、実は「ブルーベリーに含まれるアントシアニンが視力を改善する」という科学的根拠はあまりないのだそう。「目の疲れが軽減するか、暗いところで目が慣れるまでの時間(いわゆる「暗順応時間」)が多少短縮されるかもしれないというくらいが実際の効果です」と栗原さんは言います。 ちなみに、アントシアニンはブルーベリーの他に、カシスや黒ゴマ、ナス、紫イモなどにも含まれています。そのため、それらの食品を食べている人は、そもそも無理にブルーベリーを食べる必要はありません。「僕はブルーベリーをせっせと食べるより、まずはスマホの電源を切り、そして目を閉じてゆっくり休めたほうが良いと思います」(栗原さん)。

目を守るためにはブルーライトカットメガネが有効?

【△】効果は限定的で、場合によっては悪影響になる

そもそもブルーライトは、目で見える波長の電磁波(可視光線)の一部(波長380~500ナノメートル前後の青系成分)で、太陽光や電球から出る光にも含まれます。近年、パソコンやスマホなどの液晶画面から出るブルーライトが目に悪影響を及ぼすといわれ、ブルーライトカットメガネが普及してきました。 しかし、ブルーライトカットメガネの効果は思ったよりも限定的。むしろ、子どもに関しては、太陽光を遮断して近視を進行させるリスクが高まる等、悪影響の恐れがあります。ブルーライトは体内時計を乱し睡眠の質を下げる恐れがあるため、就寝2~3時間前に使用するのがおすすめ。日中に装用するメリットはなさそうです。

日頃から目の健康に意識を向ける生活を

常に外に露出している目は、非常に繊細な器官です。「現在は正常でも、1か月後に同じ状態が続くとは限りません。目の健康を守るためには、眼科医だけではなく、ご自身の意識が大切です」と栗原さん。違和感は放置せずに眼科を受診するなど、日頃から目の健康に意識を向ける生活を心掛けましょう。


■教えてくれた人
眼科専門医 栗原大智さん

日本眼科学会眼科専門医。横浜市立大学医学部卒。2019年、横浜市立大眼科学教室入局。Webメディア「オンライン眼科」の編集長兼眼科医ライターとして記事を執筆。X(ドクターK@眼科医パパ)アカウントはフォロワー5.2万人超。
※本記事は栗原大貴著『スマホ時代の眼メンテナンス』(高橋書店刊)を参考に編集しています。

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