コレステロールは“悪者”というイメージをお持ちの方も多いと思います。健康診断で悪玉コレステロール(以下LDL)が高いと動脈硬化のリスクが高まるため数値を下げるよう指摘されるのが理由のひとつではないでしょうか。でも、LDLを単に下げれば良いというわけではありません。健康維持にはLDLとHDL(善玉コレステロール)をコントロールすることが大切です。
監修/白澤卓二さん
そもそもコレステロールとは。LDLは“悪者”ではない⁉
私たちの体は約60兆個の細胞からできていて、コレステロールは細胞膜の材料になります。細胞膜は細胞内部の状態を維持する働きがあり、細胞膜が機能しないと細胞は死んでしまいます。その細胞膜の材料となるのがコレステロールです。
コレステロールは神経細胞の神経線維を覆っているほか、胆汁や副腎皮質ホルモンなどの材料になります。
体に重要な栄養素であるコレステロールの約80%は肝臓で作られていて、コレステロールを肝臓から全身に運んでいるのがLDL、血管内の余分なコレステロールを回収して肝臓に戻すのがHDLです。
LDLはコレステロールを運んでいるので、数値が低すぎると細胞膜の材料が不足して細胞の新陳代謝がスムーズに行われなくなってしまいます。
一方で、LDLが過度に血液中に存在すると、酸化して血管壁に潜り込みプラークというコブのようなものができてしまいます。この“酸化したLDL”が“悪者”です。
プラークにより血管内は狭くなり、血圧が高くなったり動脈硬化のリスクが高まったりします。プラークがはがれて血流に乗って流されると細い血管に詰まって脳梗塞や心筋梗塞の原因にもなります。
LDLのコントロールのために重要な役割を果たすのがHDLです。
動脈硬化を改善する働きがあるHDL
HDLは血液中の余分なコレステロールを回収して肝臓に戻す役割を果たしているほか、強い抗酸化作用があり、LDLの酸化を防ぎます。
また、HDLは血管壁に沈着した酸化LDLを回収して動脈硬化を改善するという機能があることがわかり、注目されています。
つまり、LDLの数値があまり高くなくてもHDLの数値が低いと動脈硬化のリスクが高まりますし、逆にLDLの数値が高くてもHDLの数値が高ければ動脈硬化のリスクは下がると言えます。
LDLとHDLのバランスをチェックする指標に「LH比」があります。
LH比の数値の見方は以下の通りです。
■1.5以下/健康
■2.0以上/コレステロールが溜っている
■2.5以上/血栓ができやすい
LH比が2.5以上の場合は要注意!
LDLとHDLの数値を上手にコントロールするには、食事や運動、生活習慣の見直しが大切です。
食事:“体に悪い油”トランス脂肪酸を避ける
食事の影響が大きいと言われていたコレステロールですが、研究によりコレステロールの約80%が肝臓で合成され、残りの20%が食事由来だということがわかってきました。
とはいえ、LDLを下げる食品を積極的に食べたり、LDLを上げる食品を避けるたりすることは大切です(LDLのコントロールに役立つ食品について、詳しくはこちら)。
また、体内の活性酸素が増えるとLDLが酸化しやすくなって動脈硬化が進みやすくなります。酸化した脂質(トランス脂肪酸)を多く含む加工食品を避けることで体内の酸化を予防できます。
できるだけ避けたい!トランス脂肪酸を多く含む食品
・マーガリン
・ショートニング
上記を使ったケーキやドーナツ、高温で揚げたスナック菓子や揚げ物、インスタント食品などにも多く含まれています。
調理にはエクストラバージンオリーブオイルがおすすめ!
調理油には低温で圧搾したエクストラバージンオリーブオイルがおススメです。加工時に高温で加熱していないのでトランス脂肪酸が含まれている心配がなく、体内の酸化を防ぐポリフェノールやビタミンEなども含まれています。
ドレッシングの代わりにエクストラバージンオリーブオイルをかけ、少しの塩とコショウを振るだけで、簡単においしくサラダがいただけますよ。
注目成分!サトウキビから抽出したキューバ産ポリコサノール
HDLを上げてLDLを下げる食品として最近注目されているのがキューバ産ポリコサノールです。
ポリコサノールとはサトウキビや米ぬかなどに存在するアルコールの一種。フィトケミカルとは植物が温度や乾燥、紫外線、害虫などから身を守るために作りだす化学物質のことで、高い抗酸化作用があり、病気の予防や改善などに役立つとされています。
そして、フィトケミカルの一種、ポリコサノールのなかでもキューバ産のものがコレステロールのコントロールにつながるというエビデンスが数多く明らかになってきており、日本をはじめ、オーストラリア、フランス、イタリアなど世界30か国以上で機能性成分として認められています。
HDLの抗酸化力や抗炎症力を高めるほか、肝機能や腎機能のアップ、認知症予防にも役立つことがわかってきています。
今後も要注目のキューバ産ポリコサノールはサプリメントなどで摂ることができます。
運動:理想は1日30分以上の有酸素運動を長期的に
有酸素運動は血液中のLDLや総コレステロールを減少させ、HDLを増加させることがわかっています。
おススメの有酸素運動
・ウォーキング
・水泳
・スロージョギング
・サイクリング ……など
日本動脈学会「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022番」によると、有酸素運動は1日30分以上、少なくとも週3回は行うのが望ましいとしています。
30分連続で行うのが難しい場合は、10分の運動を3回に分けて行うなどでもOKです。
運動の効果はすぐには現れにくいので、数カ月以上続けることが大切です。
生活習慣:禁煙、飲みすぎ注意!ストレス発散も大切
男性のHDLは20~24歳をピークに減少し、LDLは20~40代にかけて上がっていきます。HDLが低い男性、特に中年期からは動脈硬化が進行しないように生活習慣の見直しも大切です。
タバコに含まれるニコチンや一酸化炭素は血管にダメージを与え、血液中の活性酸素を増やします。タバコを吸う習慣がある方は、禁煙をしましょう。
アルコールはHDLの合成を促すという報告がありますが、過度なアルコール摂取はHDLの抗酸化力などを下げる可能性があるので、お酒は適量を心がけましょう。
また、ストレスも体内の活性酸素を増やす要因になります。
なにかとストレスを感じやすい環境の場合は、お風呂にのんびり浸かる、カラオケに行く、ドライブをする、スポーツ観戦をするなど、自分に合った方法で日々、リフレッシュを心がけてください。
白澤卓二さん/医師、医学博士。お茶の水健康長寿クリニック院長、Residence of Hope館林代表、国際予防医学協会理事長。『長寿遺伝子HDL 長寿の秘訣キューバ産ポリコサノール』(笠倉出版社)、『脳の毒を出す食事』(ダイヤモンド社)など著書多数。