
白髪染めを始めて抜け毛が増えた気がする――そんな声をよく耳にします。実は、白髪染めはやり方次第で頭皮への負担が大きくなることも。今回は、自宅で白髪染めをする男性に向けて、「頭皮ダメージを減らしながら、ムラなくしっかり染めるコツ」をご紹介します。
白髪染めを続けると、髪が薄くなるの?

今回、白髪染めの疑問について教えてもらったのは、東京・北参道のヘアサロンenn.のスタイリスト原友希さん。「『白髪染めって頭皮によくないんでしょ?』とか『白髪染めを続けていたら、髪が細くなった気がする』など、男性のお客様から相談を受けることがあります」と原さん。実際のところ、白髪染めと薄毛に因果関係はあるのでしょうか?
「結論から言えば、白髪染めの染料そのものが直接、抜け毛を引き起こすわけではありません。ただし、染め方やケアの仕方によっては、頭皮の状態が悪化し、結果的に髪の成長を妨げてしまうことがあります」
具体的に白髪染めが頭皮に及ぼす可能性のあることとしては、
- 染料に含まれるアルカリ剤や酸化剤が、頭皮(弱酸性)に刺激を与える
- 頻繁にカラーを繰り返すことで頭皮が乾燥し、炎症を起こしやすくなる
- 染めた後に薬剤の洗い残しが毛穴に残り、詰まりやすくなる
などが挙げられるそう。こうした頭皮への小さな負担が積み重なると、頭皮の血行が悪くなったり、毛根が弱ってしまったりするのです。
では、どうしたら頭皮への負担を抑えながらきれいに染めることができるのでしょうか。原さんに自宅染めの正しい方法を詳しく教えてもらいました。
白髪染めの種類は何を選んだらいい?

まずは、白髪染めの選び方から。ドラッグストアの白髪染めコーナーを見ると、さまざまな種類が並んでいます。
ヘアマニキュア
髪の表面をコーティングして色をつけるタイプ。毛髪の内部までは染まらず、キューティクルの外側に色素をのせるイメージ。
メリット:頭皮への刺激が少なく、敏感肌でも使いやすい。髪にツヤが出やすい。
デメリット:色落ちしやすく、髪の内部までは染まらないため、白髪が多い人はムラになりやすい
クリーム
染料を髪の内部まで浸透させて染めるタイプ。理美容室でもよく使われる、最もスタンダードな白髪染めの方法。
メリット:色持ちがよく、しっかり染まる・長持ちする。白髪のカバー力が高く、仕上がりにムラが出にくい
デメリット:アルカリ剤や酸化剤を含むため、頭皮への刺激がやや強い。においが気になる場合がある
泡
泡状の薬剤を髪全体になじませて染めるタイプ。初心者でも使いやすく、手早く仕上がるのが特徴。
メリット:髪全体にムラなく行き渡りやすいため、初心者でも簡単に染められる。
デメリット:泡が軽いため、染料が髪に密着しにくく色ムラが出る場合もある。髪が太く硬い人は染まりが浅くなることも。
以上を踏まえ、原さんが男性におすすめするのが「クリームタイプ」です。「男性の髪は硬く、ダメージの少ない健髪が多いので、女性に比べて染まりにくいです。また、白髪染めの色ムラや色抜けは身だしなみとしてあまりきれいではありません。手軽さよりは一度でしっかり染まる方法を選んだ方がいいでしょう」(原さん)。色は、染め上がりの見本よりも明るく染まることがあるため、希望する色よりワントーン暗めの色を選ぶのがベターです。
セルフカラーで頭皮を守りながらきれいに染める方法
ではここからは、実際に白髪染めを頭皮に負担なくするためのポイントをご紹介していきます。

今回、白髪染めの方法を原さんに教えてもらうのは、都内在住の内藤さん(59歳)。白髪染めは初体験なのだそう。「これまであまり必要性を感じなくて白髪染めをしてこなかったけれど、大学生の娘に『お父さん、髪を染めたらもう少し若見えするのに』と言われ、人生で初めて白髪を染めてみようと思った」のだそう。

「『白髪染めは面倒臭そう』と避けてきたけれど、これを機に若返りたい」と意気込みます。
用意するもの

ヘアカラー剤(クリームタイプがおすすめ)、髪染め用の刷毛と手袋(カラー剤に付属のものでOK)、フェイスタオル(汚れてもいいもの)、ヘアクリップ1本、ティッシュペーパー、鏡、ワセリン、頭皮保護スプレー
【ポイント】

「ワセリン」は、皮膚表面に薄い油膜を作り、薬剤が直接肌に触れるのを防ぐため、カラー剤のつきやすい生え際、首筋などに薄く塗っておきます。ハンドクリームでも代用可。

「頭皮保護スプレー」は理美容室でよく使われており、ヒアルロン酸やセラミド、アミノ酸などで頭皮に潤いを与えつつ、薬剤の刺激をやわらげる働きをします。業務用商品ですがインターネットで購入可能です。
※撮影時に使用した参考商品:ミルボン スキャルプサポートオイル スプレー式頭皮保護オイル
染め方
1、衣類が汚れないようにタオルを首回りにかけておく(床にカラー剤が垂れ落ちることもあるので、必要であれば新聞紙などを敷いておく)。
2、分け目で髪をクリップ留めし、手袋をはめてからあらかじめ作っておいたカラー剤を生え際からしっかり塗っていく。
【ポイント】

染めムラが出ないよう、刷毛の片面にたっぷりとカラー剤をつけて塗っていきましょう。少量ずつ塗っていると、カラー剤が頭皮に付着する時間が長くなってしまいます。 「頭を4ブロックに分けて考えると塗りやすいですよ」との原さんのアドバイスに「4ブロック?」と戸惑う内藤さん。つまりこういうことです。

まず左右でブロックを半分に分け、前側と後頭部でもブロックを半分に分けて考えます。この図でいくと、1→2→3→4と塗っていけば、塗りムラなくきれいに仕上がるのだそうです。
「やり慣れていないとちょっと難しいな」とボヤいていた内藤さんですが、まず前側を塗ってコツをつかむと一気に手際よく塗っていきます。

全体を塗り終えたら、ふたたび生え際を入念に塗っておきます。最後は刷毛についているブラシで全体にカラー剤をなじませます。




3、カラー剤の説明書に合わせて、放置する
放置時間は商品の種類などによって異なるため、使用説明書を読んで確認しましょう。カラー剤を塗っている時間も「放置時間」に含まれていることが多いので注意しましょう。
【ポイント】

乾燥しやすい秋~冬はラップをかけておくとカラー剤の乾燥を防ぎ、よりしっかり染まります。ラップは頭全体にふんわりと乗せる程度でOK
4、放置時間が経ったら、シャンプーでカラー剤を洗い流す
頭皮の負担を軽減するため、カラー剤をしっかり洗い流します。2回ほど洗うのがおすすめ。
大満足の染め上がり!黒髪で家族も喜ぶマイナス5歳見え

髪を乾かし、鏡の前に立った内藤さん。「これは相当印象が変わりますねー」と黒髪になった自身の姿に興奮気味。「俺、今まで結構白かったんだなぁ」とまじまじと鏡を見て「今度はひげの白さが気になってきちゃいますね」と苦笑。ちなみに原さんによるとひげ派の男性は髪色に合わせて黒く染めている人もいるのだそう。



帰宅して、家族の反応は「若返ったね」と好評だったそう。特に娘さんは「5歳は若返ったよ!」と喜んでくれたそうです。「自分で髪を染めるって面倒くさそうと思っていたけれど、コツさえつかめば意外と簡単でした。周りに好評だったら、これからも染めていこうかな」と内藤さん。
白髪染めに躊躇している方もぜひ一度、セルフカラーを試してみてください。
撮影=西嶋祐二
※本文中の年齢や情報は2025年10月25日現在のものです。





