
水面に映り込む紅葉が、まるで絵画のように美しい“逆さ紅葉”。空と山、湖がひとつになった幻想的な光景は、この季節だけの贅沢です。東京近郊にも、そんな絶景を堪能できる水辺の紅葉スポットが点在しています。アウトドアガイドが厳選した水辺の紅葉の名所をご紹介。とっておきの秋景色を探しに出かけませんか?
実は水辺こそが紅葉鑑賞のベストスポット

紅葉といえば公園の木々や街路樹の並木道を思い浮かべる方が多いかもしれません。けれど、実は“水辺”こそが紅葉を愛でるにはベストスポット。「湖やダム、渓谷などの水面に映る紅葉は、まるで鏡のように色づいた山々を写し出し、絵画のような景色を楽しませてくれます」と話すのは、八ヶ岳南麓を中心に湖上などカヤックでの紅葉スポットを案内するアウトドアガイドの藤井憲一郎さんです。
中でも、風が止まる瞬間にだけ現れる「逆さ紅葉」は、まさに自然が生み出すアート。その静けさや幻想的な雰囲気も、水辺ならではの魅力です。今回は、藤井さん厳選の名所3選をご紹介。都会の喧騒を離れて、心まで染まるような秋の絶景を見に行きませんか。
名所1:寸又峡・接岨湖【静岡県】
エメラルドグリーンのダム湖と紅葉のコントラストの絶景

静岡県川根本町の寸又峡(すまたきょう)の紅葉は、エメラルドグリーンのダム湖と、山肌を彩るカエデやモミジのコントラストが名物。藤井さんによると、おすすめの時間帯は早朝〜午前中。光が柔らかく、湖面への映り込みもきれいに出やすいのだそう。夕方近くなると足元や視界が暗くなるので、訪れるならぜひ早めの時間帯に。

全長約 90m、高さ約 8mの「夢の吊り橋」は、湖面と紅葉を一緒に撮影できる人気スポットです。橋を渡った後に戻ることはできない一方通行の橋なのでご注意を。秋の紅葉時期には、橋を渡るのに待ち行列ができることも(人数制限が設けられる場合あり)。
散策ルートの「寸又峡プロムナードコース」は約90分程度で一周できます。「展望スポットは、尾崎坂展望台、飛龍橋、散策路の途中の高台地点など。 歩きながら途中で見下ろす角度や木々の間越しの視点がいいです」(藤井さん)。
■見頃: 10月下旬〜11月下旬
■アクセス:静岡県榛原郡川根本町千頭
寸又峡温泉街から吊り橋への歩道入口まで徒歩約30分。
■注意点: 遊歩道は暗くなると危険なため、16:00 までに橋を渡り切るよう案内している。紅葉ピーク時は駐車場が混む可能性あり。早朝訪問がおすすめ。
奥大井のSUPクルーズでさらにディープな紅葉狩りも

「このエリアでさらに紅葉をディープに楽しみたい人に」と藤井さんがおすすめするのが、接岨湖(せっそこ・別名:長島ダム湖)のSUPクルーズ。「接岨湖ってどこ?」という人も湖上の絶景駅として名高い、大井川鉄道南アルプスあぷとライン「奥大井湖上駅」と聞けばピンとくるのではないでしょうか? この奥大井湖上駅は接岨湖の真ん中にあるのです。
寸又峡と接岨湖は山を挟んで直線距離で5㎞ほどの近さで、車で約30分。「奥大井湖上駅展望所」の撮影スポットでは上にご紹介したような写真が撮影できます。展望所付近の県道388号線沿いは路上駐車禁止なので、「奥大井湖上駅駐車場」を利用しましょう。

ちなみにSUPとは、Stand Up Paddleboard(スタンドアップ・パドルボード)の略称で、ボードの上に立ってパドルを漕ぎ、水面を進むスポーツです。ボート上でバランスをとるため、体幹を鍛えるエクササイズ効果もあります。


接岨湖はSUPツアーを催行するツアー会社があり、必要な道具を用意してくれます。「水面から見上げる紅葉は、立木が水際に迫る景観が迫力満点です。水鏡的な映り込みが楽しめる区間もあり、水面に突き出た立木群、滝・渓流の落水、湖岸の断崖混じりの紅葉帯が楽しめます」と藤井さん。水上視点での紅葉は、陸からの紅葉の進行具合より少し遅めに感じられることもあるのだそう。
SUPクルーズで上流の奥大井方向へ漕ぐと、湖上駅方面や入り江などを巡り、約3時間の湖上散策を楽しめます。時間に余裕をもって、ゆったりと湖上での紅葉狩りを楽しみましょう。
■見頃: 10月下旬〜11月下旬
■所在地・アクセス: 静岡県榛原郡川根本町
■注意点:水位・流れ・風(湖上風)で漕ぎにくくなる区間あり。秋は気温低下による冷えにも注意。SUP体験ツアーの持ち物や服装等、ツアーの催行日等は、直接問い合わせを。
■SUPツアー問い合わせ先:
「水の音色SUPクラブ」
Instagramのメッセージのみで受付。土日祝日のみ催行。
名所2:亀山湖【千葉県】
25の橋を巡って、赤・黄・橙・緑の色彩豊かな紅葉を愛でる

千葉県最大のダム湖として知られる亀山湖は、東京から約2時間で行ける紅葉の名所。「亀山湖の魅力は、湖を取り囲む山々にモミジ、イチョウ、コナラ、カエデ、ヤマウルシなど複数の樹種が混在しており、色とりどりに染まる美しい景色です。水面にはその彩りが映り込んでまるで絵画のようです」と藤井さん。
亀山湖で催行している遊覧ボート・紅葉狩りクルーズは複数あり、これを利用すれば陸上からでは見えにくい湖岸の斜面や水際の紅葉を間近に観賞できます。ボートに乗って湖上から眺める紅葉は、まさに非日常の体験。水の上を進むたびに、木々の色合いや光の反射が変わり、同じ景色が二度と見られないのも魅力です。ドライブや日帰り旅にもぴったりな、都心から一番近い“水上の紅葉絶景スポット”です。

亀山湖は湖を横断・周遊する複数の橋(“25橋めぐり”)があって、橋を渡りながら紅葉景観を楽しめる徒歩ルートがあります。「“岩の上橋” や “折木沢橋” 付近からの眺めがおすすめポイント」と藤井さん。遊歩道・ハイキングコースも整備されていて、散歩ペースでゆったりと紅葉を愛でることができます。
毎年「亀山オータムフェスティバル」が紅葉時期に合わせて実施され、クルーズ、レンタサイクル、屋台・物産展、ハイキングイベントなど複数の催しが行われています。2025年の開催期間は11/22~12/7となっています。
■見頃:11月中旬から12月上旬
■所在地・アクセス:千葉県君津市川俣旧川俣
【電車】JR久留里線 上総亀山駅下車亀山観光案内所(やすらぎ館)まで徒歩7分程度
【車】木更津東ICより久留里街道鴨川方面、465号線経由。亀山観光案内所まで所要時間30分程度
JR久留里線・上総亀山駅を起点としたハイキングコース「橋めぐり」などが設けられている。
■注意点:カヤックを持参して浮かばせる場合は、事前に君津市観光協会等へ確認を。
名所3:四尾連湖【山梨県】
湖畔+斜面の紅葉が湖面に映る“鏡映し”の美しさ

最後に紹介するのは、山梨県立自然公園に指定されている四尾連湖(しびれこ)。四尾連湖は水の流入出のない、周囲約1kmの小さなカルデラ湖。水の透明度が高く、湖畔近くや周囲の山斜面の紅葉が湖面に映る景色が見どころです。

「四尾連湖は標高約850メートルのところにあり、山の気配を近くに感じながら紅葉を楽しめます。紅葉はまず湖畔付近から始まり、徐々に山斜面へと広がっていく様子も見ものです」(藤井さん)。湖畔には山荘(水明荘・龍雲荘)があり、それぞれ小さな桟橋が数か所あり、水面越しの紅葉を撮影できます。

藤井さんおすすめの時間帯は、湖面が鏡のように静まり、紅葉が水面に完璧に映り込む早朝(7時~9時)と、西日が山の紅葉を照らした黄金色の光景が美しい午後(15~16時)。風が出やすい正午前後は映り込みが減るため、湖面に映る景色を目的とするなら早朝または夕方がよいでしょう。
四尾連湖では SUPツアーなどが実施されていて、湖上から紅葉を眺める体験ができます。また、カフェも併設されているので、ランチやコーヒー、スイーツも楽しめます。
■見頃:11月上旬から同下旬
■所在地・アクセス:山梨県西八代郡市川三郷町山尾四尾連
【電車+タクシー】JR身延線市川大門駅からタクシーで約30分
【車】甲府南ICから約40分、中部横断道・増穂ICから約30分
※湖畔は私有地のため駐車場なし。舗装道路終点右側にある「水明荘第2駐車場(有料)」に駐車の上、徒歩約5分弱で湖畔へ。
■注意点:冬期(12月1日~3月下旬) に凍結防止のため閉鎖されることがあるので、この時期をまたぐ場合は注意。
■SUPツアー問い合わせ先:NativeSup(ネイティヴサップ)
電話080-3939-1146 ※定休日は毎週火・水曜日。紅葉時期(11月11、12、18、19日)は営業。
■教えてくれた人
藤井憲一郎(ふじい・けんいちろう)さん

八ヶ岳南麓・標高1000mの林の中に暮らすアウトドアガイド。「ひといき荘アウトドアサービス」代表。トレッキングやカヤック、スノーシュートレッキング、ペット同行のアウトドアツアーなどを案内。日本百名山も歩くが、山頂より道中の自然との出会いを楽しむ旅が好き。
※掲載内容は2025年10月現在の情報です。紅葉の見頃は、例年の見頃を基準とした目安です。