本格的な行楽シーズンの到来をまえに「新しい旅の仕方はないものか」とネットサーフィンをしていたら、なんだか楽しげなものを見つけてしまいました。
それが今回ご紹介する、JR東日本の『どこかにビューーン!』。
同社の鉄道利用やふだんの買い物などで貯まる『JRE POINT』6000ポイントと引き替えに、指定された新幹線駅までの往復チケットがゲットできるサービスです。
文/鈴木長月
所定のポイントで簡単に申し込める
申込み方はいたって簡単。公式サイトに飛んで、「えきねっと」にログインしたら、出かけたい日にちと、行き帰りの大まかな時間帯を選んで行き先を検索。
東北・秋田・山形・上越・北陸(上越妙高まで)の各新幹線駅の中から、自動的にランダムに選ばれる4つの行き先候補に、自分が「これでいい」と納得できたら、あとは確認事項に目を通して、「この4つの駅で申込む」ボタンを押すだけです。
実際に「どこに行けるか」は申し込んでからでないとわからない、なんて、なんともワクワクする仕組み。かの『桃太郎電鉄』シリーズで言うところの「ぶっとびカード」を使うときのようなドキドキが、リアルに味わえてしまいます。
さっそく検索すると……。
行き先候補には「新花巻」「燕三条」「いわて沼宮内」「角館」の4つが表示されました。それぞれに所要時間や主要観光スポットの紹介があるのも親切です。
宮沢賢治ゆかりの地・岩手の「新花巻」には、かの大谷翔平選手の“聖地”も多そうですし、新潟の「燕三条」は、朝ドラ『虎に翼』の舞台にもなった“旬”な場所。
秋田の「角館」は東北の小京都としても有名ですし、初耳すぎてググってしまった「いわて沼宮内」が新幹線駅なのに1日の平均乗降客数が1000人未満なんてことを知ると、普段旅行先の候補にならないような駅で行き当たりばったり旅……というのも、悪くない気はします。
そんなわけで、今回は“行き”をいちばん早い時間帯、“帰り”をいちばん遅い時間帯の日帰り旅程で、この4駅に申し込み。3日以内に届くとされる、JR東日本からの「行き先決定」メールを待つことにします。
気になる行き先は上越新幹線「燕三条駅」に決定!
そうこうしていると、翌日にはメールが……。
そうと決まれば、さっそくまだ見ぬ「燕三条」を下調べ。行き先決定後には、JR東日本からも「観光情報」メールが届くので、それも参考にしてみます。
燕市は銀食器などでよくその名を聞きますし、三条市も鋳物をはじめとしたものづくりの盛んな町。“ラーメン王国”新潟に行くとなれば、ともに“五大ラーメン”のひとつに数えられる燕の背脂ラーメン、三条のカレーラーメンもマストで食したいところです。
まずは“鋳物の町”三条でフラッと鍛冶体験
というわけで、到着した「燕三条」はあいにくの雨模様!
ですが、そんなことは気にせず、最初の目的地『三条鍛冶道場』に向かいます。
この『三条鍛冶道場』は、誰でも気軽に鍛冶体験ができる公設民営の体験施設。今回はそのなかのひとつ、五寸釘を使ったペーパーナイフ作りに挑戦します。
ほんの40分ぐらいで、カッコいいペーパーナイフが出来上がり。これさえあれば、男なら中身を確認せずにはいられない雑誌の袋とじもスマートに開けられます。
三条鍛冶道場
新潟県三条市元町11-53
体験受付:9:00~11:00、13:00~15:30
(※3名以下は予約不要)
休館日:毎週月曜・年末年始
名物“三条カレーラーメン”の名店へ
鍛冶体験で集中力を使ったら、いい感じに小腹も空いてきたので、次は本日最初のラーメンに。名物“三条カレーラーメン”の名店『大衆食堂 正広』さんに向かいます。
中太麺に絡むルーは、口当たりのいい甘めの和風だしに独自ブレンドのスパイスがしっかり利いた、後引く美味しさ。大きめのゴロッと野菜&豚肉からは、いつ食べても絶対に間違いない、おうちのカレーにも似た安心感も漂います。
大衆食堂 正広
新潟県三条市石上2-13-38
営業時間:平日11:00~14:30、17:00~21:00(火曜は昼のみ)
日祝11:00~15:00、17:00~21:00(※スープがなくなり次第終了)
定休日:毎週月曜
朝ドラ『虎に翼』で話題の彌彦神社に参詣
三条カレーラーメンでお腹を満たしたら、一度、燕三条駅に戻って、今度は燕市からさらに海側の弥彦村にある『越後一宮 彌彦神社』へ。
弥彦線はそもそもが本数の少ないのですが、終着の弥彦駅行きはさらに本数が限られます。なので今回は、手前の吉田駅からタクシーで向かいました。
地元の人々から“おやひこさま”と親しまれてきたこの彌彦神社は、“越後国一宮”の名が示すとおり、新潟で最も格式高い由緒正しいお社さま。ご祭神には、越後の国を作ったとされる「天香山命(あめのかごやまのみこと)」を祀っています。 最近では、朝ドラ『虎に翼』で主人公・佐田寅子が赴任した新潟家裁三条支部のロケ地ともなっており、年甲斐もなく伊藤沙莉さん演じる“寅ちゃん”のファンになってしまった筆者としては、この旅でぜひとも訪れたい場所のひとつでもありました。
越後一宮 彌彦神社
新潟県西蒲原郡弥彦村弥彦2887-2
受付時間:8:30~16:00頃
宝物館は月曜日(休日の場合は翌日)及び1・2月休館、料金別途
ロープウェイで雨に煙る弥彦山の山頂にも
御本殿で参拝を済ませたら、次は背後にそびえる弥彦山の山頂を目指します。
山頂までは山麓の乗り場からロープウェイで約5分。乗り場まではわりと歩くので、境内から出ているシャトルバスの利用が便利です。
日本海から、遠く佐渡島まで一望できる山頂からのパノラマビューも楽しみにしていたのですが、この日はあいにくの雨模様。チケット売り場でも、定点カメラの映像を見せられながら、「いま山頂はこんな状態ですけど、それでも行きますか?」と念押しされてしまう始末。でもここまで来て、「行きません」なんて選択肢はありません。
ゴンドラに同乗して由緒や歴史を教えてくれるガイドさんの解説を聞きつつ、「着いても海は見えないだろうなぁ」などと思っていたら、ここで奇跡が……! 山頂に着いたその一瞬だけ視界が開け、雲間から佐渡島が見えたのです。
こうなったらもう、山頂駅からさらに800mほど奥へと進んだところにある彌彦神社の御祭神、天香山命とその妃神(熟穂屋姫命・うましほやひめのみこと)を祀る「御神廟」にも行かないわけにはいきません。 テレビ各局の電波塔を横目に見ながら、800mが永遠にも感じられるほどの山道(しかも、雨!)をぜーぜー言いながらひたすら歩き、しっかりお参りをします。
なお、ロープウェイでふたたび山麓に戻ってきたら、カフェや土産物店が建ちならぶ鳥居前で小休止。筆者はふと目に止まった和菓子店『御菓子処 米納津屋』でソフトクリームをいただくことにしました。
弥彦山ロープウェイ
新潟県西蒲原郡弥彦村弥彦2898
営業時間:9:00~16:40(15分間隔で運行)
料金:大人往復1500円
(日祝は展望食堂なども営業あり)
御菓子処 米納津屋 弥彦神社駐車場前店
新潟県西蒲原郡弥彦村弥彦3022-1
営業時間:8:30~17:00
定休日:不定休
硫黄の香り漂う天然温泉でリフレッシュ
ところで、弥彦神社の周辺は湯量の豊富な温泉郷としても有名。 せっかくなので、ロープウェイ乗り場でもらった割引券を使うべく、車で5分ぐらいのところにある日帰り温泉にも寄ってみます(弥彦駅から1日2往復、シャトルバスも出ていますが、ない場合はタクシーをつかまえたほうがベターです)。
ひとっ風呂を浴びてすっかり癒やされたところで、ちょうどタイミングよく乗ることができたシャトルバスで一路、弥彦駅へ。旅のシメに、本日2杯目。今度はお隣、燕の名物“背脂ラーメン”を食しに向かいます。
弥彦 桜井郷温泉 さくらの湯
新潟県西蒲原郡弥彦村弥彦大字麓1970
営業時間:10:00~21:00
料金:1150円(館内着・タオル付き)
定休日:年5回
“元祖”の名店で燕背脂ラーメンを食す
三条が“カレー”なら、同じ“5大ラーメン”の一角を占める燕は“背脂”。
その発祥として知られるのが、弥彦線の西燕駅から徒歩10分ほどの場所にある『杭州飯店』さん。戦前から続く老舗で、県外から通うファンも数多い名店です。
スープまで一気に飲み干したら、名物社長の“三代目”徐直幸さんに軽くご挨拶をさせてもらって、この旅もフィナーレ。さすが人気店だけあって、店を出た18時半の時点で入口には「本日は終了しました」の札がかかっていました。
杭州飯店
新潟県燕市燕49-4
営業時間:平日11:00~14:30/17:00~19:50 土日祝11:00~19:50
(※スープがなくなり次第終了)
定休日:毎週月曜