石垣山一夜城を“天下人”気分で散策!思い立ったらすぐ行ける、男ひとりの気ままな日帰りお城旅・神奈川・小田原編。前編では難攻不落の城・小田原城を攻めましたが、後編は豊臣秀吉が小田原合戦のためだけに築城した石垣山一夜城へ!
総石垣造りは東日本初。石垣山に秀吉の狂気を見る!
俗に“一夜城”とも呼ばれるこの石垣山城ですが、さすがに一夜で完成した…なんてことはありません。ですが、実際にかけた工期もたったの80日と爆速。東日本には当時まだなかった総石垣造りの本格的な城郭を、令和の大手ゼネコンもびっくりな突貫工事で建ててしまうとは、さすが天下人はスケールも超ド級。
しかもこのとき秀吉は、北条方から見える斜面の木々はあえて残して工事を進め、頃合を見計らって一気にそれらを伐採することで、まるで一夜にして巨大な城が出現したかのような“絶望演出”まで施したと言いますから、ド級なうえにドSです。
では、こんな立派な城まで建てて、秀吉はいったい何をしていたのか。答えは簡単、北条方を率いる氏政・氏親親子が音を上げるのを、ただひたすらに“待った”だけ。
陸・海合わせて15万とも20万とも言われる大軍勢で小田原の街全体を封鎖して、自身は山の上から、文字通りの高みの見物。極端に言うなら、その間を快適に過ごすためだけに建てられたのが、この石垣山城だったというわけです。
そんな石垣山城でぜひ見ておきたいのが、二の丸から一段下がった場所にある全国的にも珍しい遺構のひとつ、総石垣造りの「井戸曲輪(いどくるわ)」です。
そもそも、天下統一にすでに“王手”をかけている秀吉の頭には、逆に攻め込まれて籠城……なんて筋書きはきっと微塵もなかったはずですから、水場は必要最低限でもよかったはず。それをわざわざ「曲輪」と呼べるほどの規模で作ったのには、訪れた客人たちにその偉容を「見せびらかす」意図があったとしか思えません。
実際、かの地には寵愛していた側室・茶々(淀殿)や千利休らも呼び寄せていたと言いますし、“待ち時間”にすることと言ったら、茶会や宴会がせいぜいだったでしょうから、この考察はおそらく当たらずとも遠からず。
眼下に小田原の街を見下ろせる、すり鉢状の壮麗な高石垣からは「ワシ、すごいやろ」と、とにかく言いたい秀吉の“狂気”が伝わってくるような気がします。
それともうひとつ、一連の“小田原攻め”では、奥州の覇者・伊達政宗が参陣の遅れを詫びるために死装束で秀吉に謁見した……との逸話も有名ですが、そんな世紀のファーストコンタクトの舞台となったのも実は、ここ石垣山城だったりします。
あの勝新太郎御大が、時代劇史上もっともドスの利いた秀吉役を怪演していた往年の大河ドラマ『独眼竜政宗』(1987)でも、若き渡辺謙さん扮する政宗が、まさに“ヘビににらまれたカエル”状態で対峙するシーンが描かれていましたよね。
ちなみに、「日本100名城」の小田原城と同様、こちらの石垣山城もそれに続く「続日本100名城」に選定されています。
スタンプについては、駐車場脇の公衆トイレ前にあるので24時間いつでも押すことができますが、御城印は『一夜城ヨロイズカファーム』での販売のみ。お店の定休日(火・水曜)には買うことができませんのでご注意を!
漁港直結の人気フードコートで、海の幸を堪能する!
基本は車移動でも、ここまで回れば、ゆうに1万歩は超えているはず。ちょうどお腹も空いてきた頃合でしょうから、旅の仕上げはやっぱりグルメ。
石垣山を下って、車で10分。小田原漁港の敷地内にある人気スポット『漁港の駅 TOTOCO小田原』で、獲れたての海の幸をたらふく食べて帰ります。
魚市場のすぐ近くというだけあって、提供されているお魚はどれも、当日の朝6時に競りにかかったものが10時の開店と同時に味わえるという新鮮さ。あえてオフピークの時間帯を狙えば、ランチもゆったり楽しめます。
今回お邪魔した2Fのフードコート『小田原漁港 とと丸食堂』のほか、「刺身ならいくらでも食べられる」という人には、59分一本勝負でおよそ30種類もの海鮮が食べ放題の3F『おさしみ天国・小田原海鮮ゴーゴー‼』もオススメです。
また、1Fのお土産物売り場脇にある『小田原漁港プリン』では、小田原城の最中が乗ったレモンソフトなど、おいしくて“映える”スイーツも各種取りそろえ。
「甘いものは別腹」とばかりにその場で味わうもよし。家族へのおみやげにするもよし。金魚すくいをイメージした見た目にもかわいいプリンを買って帰れば、日頃素っ気ない奥さんや娘さんもきっと「お父さん、なかなかやるじゃん!」となるはずです。
漁港の駅 TOTOCO小田原
営業時間 1F 9:00~17:00
2F 10:00~17:00(16:00 LO)
3F 10:59~17:00(16:00 LO)
定休日 年中無休
なお今回は、車での移動を推奨しましたが、小田原城は全国有数の“駅近”なお城。「まだまだ若いもんには負けん!」という健脚自慢には、小回りが利いて健康にもすこぶるいい、電動アシスト付レンタサイクルという選択肢も。
小田原市が運営している『レンタサイクル ぐるりん小田原』は、市内3ヵ所から1000円(+デポジット1000円)を払えば、すぐに乗り出せてかなり便利。
一日走りまわった足の疲れを、駅直結の人気スポット『ミナカ小田原』14Fにある展望足湯庭園で癒やす、なんてのもオツですよね。
季節もようやく秋めいてきた今日この頃。思い立ったら、すぐ味わえる戦国ロマン。みなさんも、フラッと城旅してみませんか?