羊肉、ラム肉は免疫力アップなど健康づくりに役立つ必須アミノ酸やビタミンなどの栄養が豊富。低カロリーで脂肪燃焼効果も高く、おススメの食材です。 神楽坂にある内モンゴル料理店「草原の料理 スヨリト」。店主は中華人民共和国の内モンゴル自治区出身。モンゴル民族に古くから伝わる、羊肉を無駄なくおいしく食べる知恵を生かした絶品の羊肉料理をいただける飲食業界注目のお店です。
大切な羊。命を無駄にせず調理法を工夫してすべておいしくいただく
「内モンゴルでは羊は非常に重要な存在です。食材としてもそうですが、羊毛としてなどすべてをお金に換えられる宝物だと言われています」
と話す「草原の料理 スヨリト」の店主・スヨリトさん。
スヨリトさんの父は現在も現役の羊飼いで、かつては料理人だったそうです。
「子どもの頃、私は父のような料理人になりたいという夢を持っていました。
モンゴル料理は、大切な命を無駄にせずに、すべていただくという伝統があります。内臓などの部位ごとに調理法を変えておいしく食べます。そんなモンゴルの羊肉の調理法の基礎を私は父から学び、料理人になりました」とスヨリトさん。
故郷のモンゴル料理店で料理人として10年ほど働いたのち、2016年に来日。東京にある羊料理に特化した人気中華料理店で7年ほど腕を振るい、「内モンゴルの料理と文化をもっと広めていきたい」という想いから2022年12月に自身のお店、内モンゴル料理店「草原の料理 スヨリト」を神楽坂に開店しました。
内モンゴルでは、羊肉は主に、「焼く」「煮る」の調理法でいただくそう。
「スヨリト」では父から学んだ伝統的な調理法を基本とし、スヨリトさんが日本人も食べやすいようにと味付けなどを工夫したメニューが提供されています。
部位ごとに素材を変えたマリネ液で肉をやわらかくし、おいしさを引き出す
「スヨリト」では羊肉を加熱する前にすべてマリネしてから使用しています。
マリネとは肉などの食材を調味液につけて柔らかくしたりおいしさを引き出したりする調理法。
スヨリトさんは、羊肉のそれぞれの部位の肉質や特徴によってマリネ液の内容を変えています。例えば皮付きスペアリブの場合は、肉をしっとりとさせ、皮をやわらかくするためにマリネ液にはヨーグルトを使用。
ヨーグルトに溶き卵と塩、片栗粉を加えたマリネ液を串打ちした肉に塗り、皮がやわらかくなるまで2時間ほど置いたら炭火で焼いていきます。
焼く際に、まずはバターを刷毛で塗っていくスヨリトさん。これは、内モンゴルの伝統的な調理法ではなく、スヨリトさんオリジナルのおいしく羊肉を食べるアイデアだと言います。
「バターを塗るのは、皮をパリっと焼き上げるため。そしてもうひとつは、ミルクの香りをプラスするためです。捌いた直後の羊肉はほのかなミルクの香りがするのですが、うちではアイスランド産の冷凍の羊肉を使っているため、その香りを感じにくく、バターで補っています」
炭火でじっくり焼き上げながら塩とコショウで味付けをして完成です。
お店の串焼きで使っているのは、月齢12カ月未満の羊肉だそう。
「若い羊肉は焼いても肉の味がしっかり中に閉じ込められるうえに、柔らかく仕上がります。短い時間で火が通るというのも特長です」。
「ヨーグルトでマリネしたラムスペアリブ」440円。※価格は税込みです(以下同)。
バターの効果か、ほのかな甘みと羊肉独特の風味がほどよく香ります。食感はしっかりとありながらお肉はしっとりとやわらかい絶妙なおいしさです。
串焼きをもう1品。こちらは「香りのよい脂で焼いたラムの腎臓」638円。
腎臓は脂がたっぷり付いているそうで、マリネをした後に脂を取り除かずに焼き、クミンや唐辛子、ゴマで味つけ。香りのよい脂が口いっぱいに広がってビールが欲しくなります。羊の腎臓っておいしい!
カタマリ肉は特注のオーブンでじっくり焼き上げる
お店の名物は特注のオーブンで炭火で焼いたカタマリ肉。
「カタマリ肉で使っているのは月齢6~10カ月の羊肉です。お店の開店に合わせて内モンゴルで特注したオーブンで70分ほど焼いています」とスヨリトさん。
オーブンで焼き上げた羊肉を注文前に炭火で軽く焼いて皮をパリッとさせて提供しています。
「スペアリブ焼き(小 約300g)」2,850円。ゴマや唐辛子、クミンをミックスした薬味や、ニラの花で作ったタレを添えて。
「モモ肉焼き(小 約500 g)」2,850円。赤身ですが、やわらかく旨味も凝縮。薬味のほか「スヨリト」特製のソースでいただきます。
「肉付き背骨焼き(小 約400 g)」2,900円。ヒレ肉の背骨焼き。「量が取れないヒレ肉は、内モンゴルでは高齢者や来客などしか食べられない貴重な食材です」とスヨリトさん。
カタマリ肉は、肉やスジを柔らかくし、肉の水分を保って焼き上げられるよう何種類もの野菜や卵を材料にしたマリネ液に漬けてから窯で焼きます。タンパク質を分解するとされる、タマネギやニンジンなどのほか、スイカの皮も入れるとのこと。
「スイカの皮を入れるのは父から習いました」とスヨリトさん。肉の保水と脂肪を溶けやすくさせるのに効果的で、カタマリ肉のマリネ液には欠かせないと言います。
モツや骨肉の旨味たっぷりな煮込み料理
羊肉の伝統的な調理法のひとつである、煮込み。「大切な羊を無駄なくおいしくいただく知恵」が生かされているのが、「ラムのモツ煮込み」1,045円です。
羊の骨肉を15時間以上煮込んだ、とろっとしたコラーゲンスープで胃袋や肺、心臓、舌など6種類のモツを煮込み、塩とコショウだけでシンプルに味つけ。
それぞれのモツの食感と、ホッとする優しい味わいのスープを楽しめます。
お酒のおつまみはもとより、締めにもぴったりです。
ランチでも大人気メニューだという「ラムバラ軟骨シチュー」1,045円。
バラ軟骨を1時間以上煮込んで自家製の辛味噌で味つけた柔らかいお肉とスープでキャベツと白菜をサッと煮込みます。
シチューというよりはほどよく辛い鍋をいただいているよう。バラ軟骨の旨味たっぷりで、ランチで大人気なのも納得です。
丁寧に仕込んだおつまみも絶品!
「ラム胃袋のラー油和え」990円は、胃袋を90分弱火で煮込んでカットした後に、タマネギやピーマンなどの野菜、オリジナルのラー油で和えています。
ラー油はゴマの風味が豊かで、特上のゴマ油を使用しているのかと思いきやサラダ油で作っているそう。
「数種類の唐辛子とゴマなどを、揚げるだけでなく複雑な工程を経て作るラー油です」とスヨリトさん。ラー油を売って欲しいというお客様も多いそうです。
「自家製ラム肉のチャーシュー」1,210円は、ラムの肩ロースを調味料に1日漬けて、味がしみ込んだら窯の炭火で焼いているそう。ほどよい甘みと、しっとり柔らかい肩ロースの旨味がたまりません!
「内モンゴルでは、肩ロースはいちばんおいしい部位だと言われています。肉が柔らかいので短時間で焼き上がります」とスヨリトさん。
ビールをいただきながら、ひと口、もう一口と箸が止まらないおいしさです。
さまざまな部位をおいしくいただく知恵と、手間をおしまないおいしさに溢れている「スヨリト」の羊肉料理。
ぜひ一度、足を運んでみてはいかがでしょうか。
草原の料理 スヨリト
住所:東京都新宿区矢来町82番地
営業時間:11:00〜15:00 17:00〜23:00、土曜12:00〜23:00、日・祝日12:00〜22:00
定休日:月曜