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仏像にはヒエラルキーがある⁉仏像の種類と見方「基本のき」

仏像にはヒエラルキーがある⁉仏像の種類と見方「基本のき」

長く暑い夏が姿を消し、ようやく秋の行楽シーズン到来。旅先でお寺を巡り仏像拝観をされる方も多いのではないでしょうか。仏像には種類があり、それぞれ表情や着ているものに特徴があります。

仏像の見方の基本を知っておけば、お寺巡りがもっと楽しくなります。

仏像にはヒエラルキーがある⁉

ひとくくりに仏像といっても種類があり、例えばよく耳にする「薬師如来(やくしにょらい)」や「阿弥陀(あみだ)如来」は「如来」の部類。

「観音菩薩」や「弥勒(みろく)菩薩」は「菩薩」の部類です。私たちにいちばん身近な「お地蔵さん」は「地蔵菩薩」なので、こちらも「菩薩」です。

仏像は大きく4つの種類に分けられて、ヒエラルキーでは、上から「如来」「菩薩」「明王(みょうおう)」「天(てん)」となります。

王子だったお釈迦様が悟りを開いて得た姿が「如来」

如来とは釈迦族の王子として生まれたお釈迦様(ゴータマ・シッダールタ)がその地位を捨てて修行の末に悟りを開いて仏陀になった姿がモデル。如来とはつまり仏陀のことをさします。

悟りを開き煩悩を絶っているので、王子時代の装飾品は身に着けていません。身にまとっているのは、人々が捨てた布を拾って洗い縫い合わせたといわれる「衲衣(のうえ)」。

頭上に盛り上がり(肉髻・にっけい)と小さな巻貝を集めた、いわばパンチパーマのような髪型(螺髪・らほつ)も特徴です。額からは白く長い毛が渦を巻いて生えています(白毫)。

背中にある輪のようなものは「光背」。如来から放たれる光を意味していて、如来の智慧や慈悲を表しています。

如来は蓮の花をかたどった「蓮華座(れんげざ)」に座っています。蓮華は泥の中から生えて美しい花を咲かすことから、どんなところでも清浄でいることを示しています。

如来には主に
・釈迦如来……悟りを得て仏教の開祖となった
・阿弥陀如来……西方極楽浄土の教主
・薬師如来……心身の病を癒す仏
・大日(たいにち)如来……密教の教主
などの種類があります。

王子だった釈迦の修行中の姿が「菩薩」

菩薩とは、釈迦族の王子だったころのお釈迦様がモデル。髪が長く、宝冠(ほうかん)やネックレスのような瓔珞(ようらく)などの装飾品を身にまとっていて、お洒落なルックスです。

左肩から右脇にかけて、たすきのような1枚の布(条帛 じょうはく)を巻き、肩から腕に掛けて長い布(天衣 てんね)をひらりと垂らしているのも特徴です。

「菩薩」は如来になるために修行をする者のことを言いますが、地蔵菩薩や観音菩薩は、如来になれる智慧と徳を持ちながら、人々を救済するためにあえて菩薩にとどまっています。広大な慈悲信を持ち優しい表情を持っているのも特徴です。

菩薩は主に
・地蔵菩薩……六道(地獄・飢餓・畜生・修羅・人・天)で苦しむ者を導く。特に子どもを救う
・観音(しょうかんのん)菩薩……さまざまな姿に変身して人々を救う
・文殊(もんじゅ)菩薩……お釈迦様を補佐する菩薩。“三人寄れば文殊の智慧”の由来
・弥勒(みろく)菩薩……お釈迦様の次に如来となる菩薩
などの種類があります。

激しい怒りで煩悩を破壊する密教の仏「明王」

見るからに恐ろしいルックスの「明王」。明王は悪しきものを除くといった霊力を自在に使える密教の仏で、どんな相手も打ち負かしてしまうと言います。

やさしい言葉や態度では心を改めない者を導き、煩悩や悪を打ち破るために強い怒りの表情をしています。如来や菩薩と違い光背が火炎になっているのは、智慧の炎で煩悩を焼き払うため。宝剣(ほうけん)や羂索(けんさく)などの武器を持っているのは欲を起こさせる煩悩を断ち切ることを意味しています。

条帛を巻いたり臂釧(ひせん)などのアクセサリーを付けたりするなど、菩薩との共通点もあります。

明王は主に
・不動(ふどう)明王……明王のなかでも中心的な存在
・降三世(ごうざんぜ)明王……過去・現在・未来(降三世)の悪しきものを降伏させる
・孔雀(くじゃく)明王……優しい表情の女性の明王、身心の毒を除く
・愛染(あいぜん)明王……愛欲の煩悩を悟りに変える明王
などの種類があります。

古代インド神話の神々が転じて仏教を守る守護神となった「天」

天部とも言われる「天」は、仏や仏教を守る役目があります。

優れた4人を意味する「四天王」という言葉は、東西南北の四方を守る役目を持った仏教の4人の守護神が由来。北を守る多聞天(たもんてん)、南を守る増長天(ぞうちょうてん)、西を守る広目天(こうもくてん)、東を守る持国天(じこくてん)で構成されていて、中央にいる如来や菩薩を守っています。

守護する役割があるため、鎧を身に着けた武人の姿。手には宝棒や鉾を持ち、仏教に背く邪鬼を踏んでいます。ブーツのような沓(くつ)を履いているのも特徴です。

天は主に
・梵天(ぼんてん)、帝釈天(たいしゃくてん)……守護神の代表
・四天王(多聞天、増長天、広目天、持国天)…帝釈天に仕える4人の守護神
・弁才天(べんざいてん)……梵天の妻で音楽や言葉などの才能を持つ神
などの種類があります。

数年前に美しいと話題になった興福寺の阿修羅も天に属する神です。

仏像が何を着ているか、何を持っているかいつくかの特徴を覚えておけば、仏像の種類がわかり、どんな仏様でどんな願いを込めて祀られているのかを想像しやすくなります。

監修/渋谷申博(しぶや・のぶひろ)さん
1960年、東京生まれ。早稲田大学第一文学部卒。

日本宗教史研究家。主な著作に『参拝したくなる! 日本の神様と神社の教科書』(ナツメ社)、『眠れなくなるほど面白い 図解 仏教』『眠れなくなるほど面白い 図解 神道』(以上、日本文芸社)、『全国名所図会めぐり』(GB)、『猫の日本史』(出版芸術社)ほかがある。

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