きらめく|FMVマイページ

昭和から時代を超えて愛される名喫茶5軒

昭和から時代を超えて愛される名喫茶5軒

メニューもインテリアも創業当時からほとんど変わらず、昭和の時代から長年愛され続ける東京の喫茶店をご紹介。個性がありながら、どこか懐かしく、無性にくつろげるお店を5軒、厳選しました。

平井「珈琲 ワンモア」 60年代の純喫茶文化を引き継ぐ、コーヒーとホットケーキが最高のお店

JR総武線「平井」駅から徒歩約2分の場所にある「珈琲ワンモア」。創業は1971年。店主の福井明さんは子どもの頃、コーヒーの香りが漂う喫茶店が “大人への架け橋”のようで大好きだったといいます。60年代には渋谷で、当時最先端だったというアメリカンスタイルの喫茶店「マウンテン」で、コーヒーの淹れ方やホットケーキの作り方などを習ったそうです。

当時の喫茶店ではスパゲティなどの“ごはんもの”は、コーヒーの香りの邪魔をするという理由で提供されていなかったそう。そのスタイルは「ワンモア」にも引き継がれ、メニューにあるのは、コーヒーや紅茶などの飲み物、サンドイッチやトーストといったパン類やホットケーキなどの軽食です。

「ワンモア」の軽食のなかでも人気で、さまざまなメディでも紹介されているのがホットケーキ(700円)です。

素材はいたってシンプル。オーダーが入ると牛乳、小麦粉、砂糖、卵、ベーキングパウダーを混ぜて、温めた銅板でゆっくりこんがりと焼いていきます。

小さいサイズのものは、焼き加減を確認するためのプロトタイプ。
焼きあがったら1枚をお皿に乗せてバターをたっぷりと塗り、2枚目を重ねます。

仕上げにバターを乗せて完成。素朴でやさしい甘さのホットケーキです。自家製メープルシロップをたっぷりとかけていただくと、まさに“口福”!

同じく銅板で焼いて作るフレンチトースト(700円)もお店の人気メニュー。

「見た目が寂しいから」と、フレッシュの輪切りレモンを乗せたところ、レモンを絞って食べるお客さまが多く評判もよかったことから、さらにレモン果汁をプラスしたスタイルが「ワンモア」のフレンチトーストの定番に。

メープルシロップをかけていただくと、甘さと酸味のバランスがちょうどよく、まるでレモンケーキ!女性客にはホットケーキよりも人気だそうです。パンの厚みもほどよく、あっさりといただけてブランチにぴったり。

「ワンモア」はサンドウィッチもおいしい!一口サイズにカットされていて、パクッと食べやすいのも特長です。写真はミックスサンド(1,000円)で、パンを4枚使用し、焼いた卵とロースハム、きゅうり、トマト、レタスの具材をマヨネーズとマスタードで味つけしたもの。焼いた卵の風味やロースハムの燻製香などがアクセントになり、リッチな味わいです。

9時半~13時にはサンドウィッチセットが提供され、3枚のパンを使用したハムエッグサンド(卵はゆで卵)か野菜サンドのどちらかにコーヒーか紅茶が付いて900円です。

「焙煎機がないと好みの味を出せない」という福井さんのこだわりから、「ワンモア」では、ブラジル系の豆を自家焙煎した深煎りのコーヒー豆をペーパーでドリップしてコーヒーを提供しています。

深みがありながらすっきりとしたコーヒー。ウェッジウッドのカップでいただきます。

アイスコーヒーはシロップ入りで、これは福井さん曰く「昔は砂糖は貴重品で、砂糖があれば必ず入れていた」という当時のスタイルから。

ブラック好きには「アイスダッチコーヒー」(700円)がオススメです。

専用の機械でコーヒー豆に水を1滴1滴たらし、約8時間かけて抽出。深みがあって、からだに染み入るようなおいしさの「アイスダッチコーヒー」は絶品です。

「アイスダッチコーヒー」で作る「コーヒーゼリー」は、常連客にファンが多い一品。

「自然光が入るお店にしたくて、午前中は東側から日光が入るこの店舗に決めた」という福井さん。おいしいコーヒーやホットケーキを食べに、お店に行くなら午前中が特にオススメです。

珈琲 ワンモア 
住所/東京都江戸川区平井5-22-11
電話/03-3617-0160
営業時間/9:30~16:30(LO16:00)
定休日/日・月曜

本郷三丁目「ルオー」 70年以上に渡り東大関係者に愛されるセイロン風カレー

店名は画家のジョルジュ・ルオーから。1952年、画家でアートコレクターの初代が、所有する絵画を展示する喫茶店として開業しました。初代より現在のオーナー・山下淳一さんが引き継ぎ、現在の東大正門前に移転して約50年が経ちます。

その立地から、常連客は主に東大の学生や教授、職員たち。彼らが愛するのが、ここの「セイロン風カレーライス(セミコーヒー付き)」(並1,200円)です。

カレーは大・並・小の3サイズから選べます。大は1,400円、小は1,000円。すべてセミコーヒー付き。セミコーヒーはアイスコーヒー、アイスティ、野菜ジュースに変更可能です。

レシピは初代の妻が考案したものが今に引き継がれていて、じゃがいもとポーク、玉ねぎ、見た目ではわかりませんがニンジンをオールスパイスなどで煮込んでいるそうです。
ところでなぜセイロン(現スリランカ)風カレーなのかを、現オーナーの息子で店の切り盛りを手伝う山下栄介さんに伺うと……。

「初代の妻はイギリスに留学経験があったそうで、お店を開業するにあたり、当時すでにあった欧風でもインド風でもなく、珍しいセイロン風にしたと聞いています。留学中にセイロン風を食べていたようです」。

ひと口目はやさしく、食べ進めるうちにしっかりとスパイスが香ります。付け合わせの福神漬けやらっきょうとともにいただくと味の個性が変わってスプーンが止まらず、あっという間に完食!

「ルオー」では、メニューをオーダーしてから素早く料理が提供されます。「授業の合間に利用される教授も多く、お昼を食べそびれないよう、注文が来たらすぐにお出しするようにしています」と山下さん。コーヒーは、カレーを食べ終わったちょうどいいタイミングで提供されます。

カレーのおいしさだけでなく、提供するタイミングなどの心配りも長年常連客に愛される理由のようです。

店内には、ジョルジュ・ルオーのほか常連客より寄贈された絵画が飾られています。内装はオープン当初から変わらず、椅子やテーブルは初代から引き継いだものだそう。それらを眺めながら、ゆっくりとお茶をしたくなる、落ち着いた雰囲気も「ルオー」の特長です。

初代から引き継いだというジョルジュ・ルオーの作品。
“70年もの”の椅子の背は、コーヒーカップとビールジョッキの形にくりぬかれています。手作業のためひとつずつ微妙に形が違い、それらを見比べる楽しみも。

とっても滑らかで、ほどよい甘さの自家製アイスクリーム(550円)。午後の食後のデザートや休憩タイムにオススメです。

ウインナーコーヒー(580円)。甘いホイップクリームを溶かしながらゆっくりと過ごすのもいいですね。

朝9時半からオープンしている「ルオー」。11時までは「朝カレーライス」(1,000円)もアリ。モーニングに、70年以上の歴史を持つカレーを楽しむ方も多いそうです。

2階の窓からは、東大正門が眺められます。

ルオー 
住所/東京都文京区本郷6-1-14
電話/03-3811-1808
営業時間/9:30~20:00 土曜は17:00まで
定休日/日曜・祝日

新橋「パーラー キムラヤ」 かつてのサラリーマンの聖地はいまや、スイーツ好きの行列店に

1966年、新橋駅前ビルの開業とともにオープンした「パーラー キムラヤ」。

地下1階、ビルの入り口近くにある「パーラー キムラヤ」。今では懐かしい食品サンプルが出迎えてくれます。

お店を入ってまず目を引くのがモダンポップなインテリア。椅子のファブリックを張り替えるなどのメンテナンスを行いながら、当時の雰囲気を維持しているそうです。

オープンからコロナ前までは全席喫煙が可能で、スポーツ新聞を片手にコーヒーを飲みながらたばこを吸うサラリーマンでいっぱいだったそう。しかし、2020年の東京都受動喫煙防止条例により店内は禁煙に。それを機に、女性の方々やカップルなどあらゆる年齢層の方が訪れるように。そして、その多くの方が「プリンア・ラ・モード」(1,050円)を注文するそうです。

プリンはしっかりと硬く、スプーンが入りづらいほど。甘さ控えめでラム酒がほんのり香る大人向けのプリンです。盛り付ける器は、職人さんの手仕事による温かみのあるガラス製。フルーツやホイップクリーム、アイスクリームが添えられ、さくらんぼが美しく飾られたプリンア・ラ・モードの極みといえる見た目とおいしさです。

これがSNSで若い女性を中心にバズり、休日には開店前から行列ができるほど。お昼すぎにプリンが売り切れることもあるそうです。

昼食などに利用する方も多く、トーストやサンドウィッチ、ホットドッグなどのメニューも人気。写真は先代が命名したという「イタリアンスパゲティ」(930円)。スパゲティが白、ピーマンやアスパラがグリーン、パプリカが赤と、イタリアの国旗にちなんで先代が命名したそう。「スパゲティって、そもそもイタリアンなんですけどね……」と店主は苦笑い。素朴でホッとする、おいしいメニューです。

開業から今年で59年。「先日年輩のご夫妻が来て、初めてのデートで来たお店なんです、と。父親に連れられて子どもの頃に来ましたと再訪される方もいらっしゃいます。そんな言葉を聞くと嬉しいですね」と店主。新橋で、同じ味、同じ雰囲気を守っている喫茶店です。

パーラー キムラヤ 
住所/東京都港区新橋2-20-15 新橋駅前ビル1号館B1F
電話/03-3573-2156
営業時間/8:00~19:30(LO18:50)、土曜は11:00~13:00、15:00~17:30(LO17:00)※混雑状況により早く閉店することがあります。
定休日/日曜・祝日

町屋「ファントム」 エルビス好きマスターが営む“下町のファミレス”

現在78歳の日野弘さんが「ファントム」をオープンしたのは1976年のこと。

エルビス・プレスリーが大好きで、店内にはプレスリーのポスターやオーナメントなどが飾られ、BGMももちろんプレスリー。

さぞエルビスファンが多く集まるのだろうと思いきや……。

「ほとんどの人がポスターも見てないし曲も聴いてない笑。お客さんは、エルビスファンでもなんでもなく、ほとんどが地元の常連さんです」と日野さんはいいます。

ファントムのマスター、日野弘さん(右)と奥様の千栄美さん。きさくで優しいおふたり。

ファントムにはさまざまな年齢層のお客様が集います。その理由のひとつが、メニューの豊富さ。

オープン当時は巷に少なかったファミレス。レストランでシェフをしていた日野さんはファントムを「下町のファミレスにしたかった」といい、サンドイッチやバナナシェイクなどオールドアメリカンなお店の雰囲気にぴったりなメニューのほか、アジフライや生姜焼き、かつ丼など、昼のメニューは全部で120! 

豊富なメニューのなかでもファントムを代表するのが、プレスリーのソウルフードだったというピーナッツバナナサンド(550円)です。

本場アメリカのバナナサンドには、ベーコンやブルーベリージャムが入っているそうですが、日本人が食べやすいようにバナナとピーナッツバターだけをサンド。甘みがなく少し塩味を感じるピーナッツバターとバナナの“しょっぱ甘さ”がクセになる味わい。しっかり厚みのあるパンでボリュームもあり、ランチに食べる方も多いそうです。

子どもから大人まで人気なのが自家製プリン(500円)。卵が多めの“硬め系”でどこか懐かしい味わいです。

生レモンサワー(450円)などのほか、カクテル系も充実。写真は弘さんがシェイカーを振って作るブルーハワイ(600円)。

値段が安いこともあり、お酒を飲みに来る人も多いそう。

「今は21時で閉店していますが、以前は24時頃まで営業していました。お酒を飲むお客さんが多いので冷奴やメンチカツといったおつまみ系の料理も出しています」と、弘さん。朝9時の営業から閉店まで、さまざまなお客様のニーズに合わせて飲み物や食べ物を提供しているファントムは、まさに“下町のファミレス”です。

都電荒川線 町屋2丁目停留所より徒歩2分。都電荒川線の線路沿いにあり、店内の窓際の席では“チンチン電車”を眺めながらのんびりとくつろげます。

ファントム
住所/東京都荒川区町屋2-16-2
電話/03-3895-9636
営業時間/9:00~21:00
定休日/不定休

浅草「ロッヂ赤石」 サイフォンで淹れたコーヒーと“お食事系”が人気

つくばエクスプレス浅草駅より徒歩約7分。先代が長野から上京し、1972年に創業した「ロッヂ赤石」は、木とレンガを基調とした山小屋風の落ち着いたインテリアが特長の喫茶店です。

壁に掛けられた古時計や、棚に飾られたカップ&ソーサは先代夫婦のコレクション。現在は二代目が店主を務めています。


現在は使用できませんがゲームテーブルもあり、店内は昭和の雰囲気が色濃く残っています。

落ち着いた店内では、サイフォンで丁寧に抽出されたまろやかな味わいのコーヒー(600円)を楽しむことができます。

お店の入り口に、エビフライやポークソテー、かつ重などの食品サンプルが飾られている通り、「ロッヂ赤石」はお食事系が充実していて家族連れが多いのも特長です。

創業当時からしばらくは24時間営業で、多くのタクシー運転手が深夜や早朝に利用していたそう。

「タクシー運転手の方々や常連客の口コミなどもあり、おかげさまでお店の名前が広まりました」というのは、二代目店主の妻の小沢雪恵さんです。

「お客さまからのリクエストで、メニューがだんだん増えていきました」という小沢さん。

「ロッヂ赤石」の数ある“お食事系”メニューのなかで、特に人気なのがナポリタン(1,050円)です。

「ケチャップは、酸味と甘みのバランスがいい“ナガノトマトケチャップ”を使っています。他にはない味と、好評です」と小沢さん。

見た目よりあっさりとしていて食べやすく、小沢さんのいう通り甘すぎず酸っぱ過ぎずクセになる味わいです。 お昼ごはんや夜ごはんに、がっつり食べたい方に人気なのが「かつ重」(1,300円)。

厳選した豚肉を使用しているとのこと。絶妙に甘辛い卵でとじられたカツが食欲をそそります。

「かつ重」はおしんことお味噌汁付き。夕飯時には一緒にビール(小瓶650円)をオーダーする方も多いそうです。

取材に伺った日は、夕方前頃からナポリタンのほか、オムライスやカツカレー(ともに1,200円)、テイクアウトで名物のエビサンド(1,450円)を注文される方などで賑わっていました。

モーニングセット(コーヒー・紅茶付き)は9時~11時までの提供で、ホットドッグ(700円)、ハムエッグトースト(750円)など。ランチセット(コーヒー・紅茶付き)はカレーライスやナポリタンなどから選べます(900円~)。どれを食べてもおいしくて、リーズナブル。

昭和感溢れるのんびりくつろげる空間で、おいしい食事を食べに足を運んで欲しいお店です。

ロッヂ赤石
住所/東京都台東区浅草3-8-4
電話/03-3875-1688
営業時間/9:00~20:00(LO19:30)
定休日/月曜

※価格はすべて税込です。

Return Top