
小林陵侑(こばやし りょうゆう)選手は、2022年北京の国際大会で金・銀メダルを獲得し、2024年には世界記録を大幅に更新する291メートルの飛行を成し遂げた、現代最強のジャンパーです。プロとして挑む2026年ミラノ大会では、男子ジャンプ史上初となる二大会連続の金メダル、そして個人二種目制覇という壮大な夢に挑みます。
■プロフィールと基本情報
| 項目 | 内容 |
| 氏名 | 小林 陵侑(こばやし りょうゆう) |
| 生年月日 | 1996年11月8日 |
| 出身地 | 岩手県岩手郡松尾村(現・八幡平市) |
| 身長 / 体重 | 173cm / 59kg |
| スタンス | 独自の「ディープ・エアロ」姿勢 |
| 所属 | チームROY(プロ) |
| 主な使用ギア | BWT / Slatnar(スキー板) |
小林選手は、スキージャンプ界で「宇宙人」や「飛行物体」と形容されるほどの圧倒的な空中感覚を持っています。かつての名門・土屋ホームから独立し、現在はプロアスリートとして自らのチーム「チームROY」を率いて活動。伝統的な枠組みに囚われないファッションやライフスタイルも注目を集め、若者を中心に絶大な人気を誇るアイコン的存在です。
■来歴:雪国の4兄妹から、伝説のスカウトを経て世界へ
小林陵侑の物語は、岩手県の雪深い町で始まりました。
- 「小林4兄妹」の三男として: スキー指導者だった父の教えを受け、5歳からクロスカントリー、小学1年生でスキージャンプを始めました。兄・潤志郎、姉・諭果、弟・龍尚もジャンパーという「ジャンプ一家」の中で、彼は遊び感覚で空を飛ぶ楽しさを身につけていきました。
- 葛西紀明に見出された才能: 中学生時代にジャンプとノルディック複合の両種目で全国制覇を達成。その類まれなセンスに目をつけたのが、伝説のジャンパー・葛西紀明氏でした。「あの子だけは別格」と確信した葛西氏に直接スカウトされ、高校卒業後に土屋ホームへ入社。ここから彼の飛躍が加速します。
- 苦悩から「覚醒」へ: 社会人1、2年目は鳴かず飛ばずの時期もありましたが、2018年平昌での国際大会で7位入賞を果たしたことが転機に。直後のシーズンで日本人初のワールドカップ(W杯)個人総合優勝を果たすと、以後、世界のトップ戦線の常連となりました。
■主要大会での実績:日本人男子の歴史を塗り替えた歩み
小林選手のキャリアは、そのまま日本スキージャンプ界の「新時代」の記録です。
- 2018-19シーズン「ジャンプ週間」グランドスラム: ドイツ・オーストリアを転戦する伝統の4大会すべてで優勝するという、史上3人目の快挙を達成。同シーズンに初のW杯総合優勝を成し遂げました。
- 2022年 北京での国際大会(金・銀メダル): ノーマルヒルで日本男子として24年ぶりの「金」、ラージヒルで「銀」を獲得。極限のプレッシャー下で一回目でトップに立ち、そのまま逃げ切る勝負強さは世界を驚愕させました。
- W杯通算勝利数 日本人男子最多: 2024年にはW杯通算30勝を優に超え、葛西氏の持つ記録を更新。名実ともに日本男子の歴代ナンバーワンへと上り詰めました。
- 2024年 アイスランドでの291m飛行: 特設ジャンプ台にて、人類未踏の291メートルの飛翔に成功。公式記録ではないものの、「人間はどこまで飛べるのか」という問いに自らの体で答えてみせました。
■強さの分析:スパコンも認めた「空飛ぶ科学」と「ゲーム感覚」
小林陵侑のジャンプは、なぜこれほどまでに伸びるのか。その強さは「物理的な最適解」と「精神的な軽やかさ」の融合にあります。
1. 究極の「ディープ・エアロ」姿勢
かつてスーパーコンピューター「富岳」が彼のジャンプを解析した際、他の選手に比べて背面の気流の乱れが極めて少ないことが判明しました。踏み切りから飛行姿勢に移るスピードが尋常ではなく、スキー板と体を完全に一体化させることで、空気の抵抗を「揚力(浮き上がる力)」へと効率よく変換しています。
2. 無重力を操る「空中感覚」
291メートルの飛行プロジェクトでも証明された通り、彼は滞空時間が長くなるほど、微細な風の変化に合わせて手首や体の角度を数ミリ単位で調整し続けることができます。落下しているのではなく、まさに「空を泳いでいる」感覚。これが後半の粘り強い飛距離を生み出します。
3. プレッシャーを「ゲーム」に変えるメンタル
彼はよく「試合はゲームみたいなもの」と口にします。重圧のかかる国際大会の舞台でも、緊張に震えるのではなく、その状況を面白がることができる強心臓を持っています。余計な力みが取れた「ゾーン」状態にいつでも入れる能力こそが、彼の最大の武器かもしれません。
■出場種目の詳細と強大なライバルたち
【出場予定種目】
- 男子個人ノーマルヒル(NH): 精密な踏み切りと正確な着地が求められるテクニカルな戦い。
- 男子個人ラージヒル(LH): 飛距離が大きく得点に影響する。小林選手が最も得意とする舞台。
- 男子団体・混合団体: チームとしての結束力が問われる。
【主要ライバル】
- ドメン・プレブツ(スロベニア): 2025-26シーズンのW杯で首位を独走する、今最も勢いのあるジャンパー。小林選手に勝るとも劣らない低く鋭い飛行姿勢が武器です。
- シュテファン・クラフト(オーストリア): 通算表彰台記録を持つ「生ける伝説」。安定感は世界随一で、大舞台での勝負強さは脅威です。
- 二階堂蓮(日本): 日本チームの「新・第2エース」。今季好調を維持しており、小林選手と「日本人ダブル表彰台」を争う最大のライバルであり最高の仲間です。
■メダル獲得の可能性と期待の注目ポイントのまとめ
2026年ミラノ冬季国際大会において、小林陵侑選手のメダル獲得の可能性は「極めて高い」と断言できます。
今回の見どころは、プロ転向を経て、自らの意志ですべてを選択できるようになった小林選手が、「どこまで完璧な美しさを追求できるか」という点にあります。北京大会の時の「追う立場」から、今回は「追われる王者」としての参戦になりますが、彼に気負いはありません。
特に、イタリアのミラノ・コルティナのジャンプ台は、気流が変化しやすい難所としても知られています。しかし、アイスランドの大自然で未知の風を攻略した経験を持つ彼にとって、その難しさはむしろ「攻略すべきゲームの難易度」として歓迎されるでしょう。
「ただ、一番遠くまで飛びたいだけ」
そのシンプルな情熱が、再び国際大会の夜空を黄金色に染め上げるはずです。史上初の快挙を目指す小林陵侑のフライト。その目撃者になれる幸せを噛み締めながら、私たちは彼の着地まで一瞬たりとも目が離せません。





