
鬼塚雅(おにつか みやび)選手は、2015年に史上最年少で世界選手権を制した日本女子スノーボード界の先駆者です。スロープスタイルとビッグエアに出場する彼女は、豊富な経験と世界屈指のジブ技術を武器に、三度目の正直となるミラノでの国際大会で、悲願のメダル獲得とプロとしての集大成を世界に示します。
■プロフィールと基本情報
| 項目 | 内容 |
| 氏名 | 鬼塚 雅(おにつか みやび) |
| 生年月日 | 1998年10月12日 |
| 出身地 | 熊本県熊本市 |
| 身長 | 158cm |
| 所属 | 星野リゾート |
| 主な種目 | スロープスタイル / ビッグエア |
| スポンサー | バートン、レッドブル 他 |
| 使用ギア | Burton Talent Scout / Lexa |
鬼塚選手は、南国・熊本県出身でありながら、10代前半から世界の頂点を知る「スノーボード界の象徴」です。長い間、日本の女子チームを精神的支柱として牽引してきました。現在は経験豊富なベテランとしての円熟味を増しつつ、常に最先端の難易度を追い求める姿勢を崩さない、真のプロアスリートです。
■来歴:室内リンクから始まった「熊本の奇跡」
鬼塚雅のキャリアは、日本のスノーボード史上でも類を見ない特異な環境から始まりました。
- 5歳での衝撃的な出会い: 雪の降らない熊本市に生まれた彼女がスノーボードに出会ったのは、5歳の時。福岡市内にある室内練習施設「ビッグエア福岡」へ通い始めたことがきっかけでした。週末ごとに往復数時間をかけて練習に通い、幼少期から「雪のない場所で磨く技術」を徹底的に叩き込みました。
- 「バートン」史上最年少契約: 小学1年生にして、世界最大のスノーボードブランド「バートン」と異例のスポンサー契約を締結。その才能は当時から別格で、国内の大人顔負けの大会でも表彰台の常連となりました。
- 16歳での世界制覇: 2015年、オーストリアで開催された世界選手権にて、スノーボード女子スロープスタイル種目で史上最年少での金メダルを獲得。この瞬間、「Miyabi Onitsuka」の名は世界的なものとなり、日本女子スノーボード界の新しい扉を開いたのです。
■主要大会での実績:世界を席巻し続ける安定感
彼女のこれまでの戦歴は、まさに「女王」としての輝きに満ちています。
- 世界選手権でのメダル三冠: 2015年の金メダルに続き、2017年には銅メダル、2021年にはビッグエアで銅メダルを獲得。複数回にわたり、世界のメダル圏内を維持し続ける継続力は驚異的です。
- X Gamesでの快挙: 世界のプロライダーが最も憧れる招待制大会「X Games」においても、ビッグエアで銀メダルを獲得するなど、コンスタントに結果を残してきました。
- 国際大会での苦悩と成長: 2018年、2022年の大規模国際大会では、メダル候補筆頭として期待されながらも、強風などの悪条件に阻まれ、本来の力を出し切ることができませんでした。しかし、その悔しさが彼女をさらに強くし、ミラノへと向かわせる原動力となっています。
- ワールドカップ(W杯)制覇: これまでにW杯種目別優勝を何度も経験し、世界のトップランカーとしての地位を盤石なものにしています。
■技術とパフォーマンスの分析:緻密な「ジブ」と「高回転」の融合
鬼塚選手の最大の強みは、他の選手が真似できない「ジブ(障害物)」の完成度と、計算された戦略性にあります。
1. 世界一と称される「レール技術」
スロープスタイルの前半セクションで行われる、レールやボックスでのパフォーマンス。鬼塚選手はこのセクションでのバリエーションが非常に豊富で、複雑な回転を加えて乗り込み、クリーンに降りる技術は世界屈指です。ここで高い加点を得ることが、彼女の安定した高スコアに繋がっています。
2. 強靭な体幹による「安定した着地」
彼女の滑りは、ジャンプの頂点から着地まで、まるで吸い付くように安定しています。独自のトレーニングで鍛え上げた体幹により、多少の軸のブレも空中で瞬時に修正。コンクリートのような硬い着地でも、膝を柔らかく使ってストンプ(完璧な着地)を決める姿は圧巻です。
3. 戦略的なルーティン構築
鬼塚選手は、自分の持ち味とジャッジの好みを天秤にかけ、最も勝率の高いルーティンを組む「戦略家」でもあります。最近では女子でも必須となったダブルコーク1080、1260といった高回転技を、ただ回るだけでなく「いかに美しく見せるか」に重きを置いた構成で挑んでいます。
■出場種目の詳細とライバル:新旧交代の波を乗り越えて
【種目:スロープスタイル / ビッグエア】
スロープスタイルは総合力、ビッグエアは一発の技術力を競う、どちらもスノーボードの華と言える種目です。
【主要ライバル】
- ゾイ・サドウスキー・シノット(ニュージーランド): 圧倒的な身体能力を誇る現役最強のライダー。鬼塚選手が金メダルを手にするために、必ず超えなければならない巨大な壁です。
- 村瀬心椛(日本): 若き天才であり、同じ日本代表のチームメイト。互いに技術を高め合ってきた最高のライバルであり、ミラノでは激しい表彰台争いが予想されます。
- アンナ・ガッサー(オーストリア): 鬼塚選手と同じく長くトップを走り続けるレジェンド。ビッグエアでの勝負強さは依然として健在です。
- テッサ・コーディ(オーストラリア): 爆発力のある滑りが特徴で、近年急成長を遂げている強敵です。
■メダル獲得の可能性と期待の注目ポイント
ミラノでの国際大会において、鬼塚雅選手が表彰台の一角を占める可能性は非常に高いと言えます。
今回のミラノ大会における彼女の最大の武器は、過去二度の苦い経験から得た「対応力」です。特設会場の風の変化や、硬い雪質、心理的なプレッシャー。若手選手が戸惑うような状況下でも、鬼塚選手は冷静に最適解を見つけ出すことができます。
また、彼女が長年磨き続けてきた「ジブ」セクションの難易度は、最近の採点傾向でも非常に重視されています。ジャンプの難易度競争が激化する中で、セクション全体の完成度で勝負できる彼女には、大きなチャンスがあります。
「結果を出すことは大切だけど、自分が一番納得できる滑りをしたい」
若手時代のような「勝たなければならない」という悲壮感はなく、今の彼女からは「スノーボードを心から楽しむ」という余裕が感じられます。そのリラックスした状態こそが、彼女を最強のパフォーマンスへと導くはずです。
熊本から世界を飛び越え、日本のスノーボードシーンを支え続けてきた女王、鬼塚雅。ミラノの雪上で、彼女が描く最後の放物線は、きっとまばゆい色に輝くに違いありません!




