
2026年、イタリアで開催された国際大会。日本は高梨沙羅(たかなし さら)、伊藤有希(いとう ゆうき)、二階堂蓮(にかいどう れん)、小林陵侑(こばやし りょうゆう)の4名で混合団体に挑み、悲願の銀メダルを獲得しました。前回大会の失格という苦難を乗り越え、圧倒的な飛行能力で世界に日本の誇りを再び示しました。
団体参加選手のプロフィールと基本情報
日本が誇る最強の4名が集結しました。
| 氏名 | 生年月日 | 出身地 | 特徴・役割 |
| 高梨 沙羅(たかなし さら) | 1996年10月8日 | 北海道上川町 | 歴代最多勝利を誇る絶対女王。チームの精神的支柱。 |
| 伊藤 有希(いとう ゆうき) | 1994年5月10日 | 北海道下川町 | 高い技術力と安定感。空中での粘り強さは世界屈指。 |
| 二階堂 蓮(にかいどう れん) | 2001年5月24日 | 北海道札幌市 | 急成長を遂げた若きエース候補。爆発的な踏み切りが武器。 |
| 小林 陵侑(こばやし りょうゆう) | 1996年11月8日 | 岩手県八幡平市 | 「宇宙人」と称される圧倒的飛距離。日本のエース。 |
来歴:幼少期から注目される直前まで
この4名には共通して「ジャンプ王国・日本」を背負ってきた自負があります。
高梨選手と伊藤選手は、共に北海道の自然豊かな環境で育ちました。高梨選手は小学校低学年から男子に混じってジャンプを始め、瞬く間に「天才少女」として世界にその名を知らしめました。
一方の伊藤選手も、ジャンプ一家に生まれ、幼い頃から英才教育を受けてきました。二人は長年、女子ジャンプ界を牽引し、時にはライバルとして、時には戦友として高め合ってきました。
男子の小林選手は、岩手県で4兄妹の三男として誕生。兄の影響でジャンプを始め、葛西紀明氏に見出されたことでその才能が開花。また、今回の団体メンバーに加わった二階堂選手は、名門・下川商業高校を経て頭角を現し、次世代のリーダーとして期待されてきました。
彼らに共通していたのは、2022年の国際大会で味わった、あの「やりきれない思い」です。ルールへの適応、メンタルの維持、そしてチームとしての戦い方。そのすべてを見つめ直し、このミラノの地へ向けて準備を進めてきたのです。
これまでの主要大会での実績
- 高梨沙羅: ワールドカップ通算60勝以上、個人総合優勝4回。
- 小林陵侑: 2022年国際大会金メダル、ワールドカップ個人総合優勝2回、ジャンプ週間総合優勝3回。
- 伊藤有希: 世界選手権金メダル、ワールドカップ通算勝利数二桁。
- 二階堂蓮: 2024年以降のワールドカップでコンスタントに表彰台を争う成長株。
日本チームは、過去のスローガン「日の丸飛行隊」の名の通り、個人戦での実績は十分でしたが、混合団体においては「チームとしての安定感」が長年の課題とされてきました。しかし、2025年の世界選手権でメダルを獲得したことで、ミラノでの確信を得ることとなります。
技術とパフォーマンスの分析:なぜミラノで飛べたのか
今大会、日本のパフォーマンスを支えたのは、徹底した「空力マネジメント」と「メンタルコントロール」です。
- V字スタイルの最適化:
小林選手に代表される、スキー板を広く開き、体全体で風を受けるスタイル。今大会のプレッシャーがかかる場面でも、彼らは恐怖心を抑えて、より深い前傾姿勢を保ち続けました。 - 踏み切りの爆発力:
二階堂選手の力強いキックは、標高の高いミラノの会場でも十分な揚力を生み出しました。 - 完璧なスーツ対策:
前回大会で問題となったスーツのサイズ規定に対し、日本チームは独自の計測システムを導入。数ミリ単位の誤差も許さない管理体制を敷き、「飛ぶ前からの戦い」に完全勝利しました。 - ランディング(テレマーク姿勢):
高梨選手や伊藤選手の美しいテレマークは、ジャッジから高い飛型点(スタイルポイント)を引き出し、飛距離以上の得点差を生み出す要因となりました。
出場種目と今大会のライバルの結果
種目は「混合団体ノーマルヒル」。女子2名、男子2名が交互に飛び、合計得点を競います。
【金メダル】スロベニア:受け継がれる「飛行一族」の血統と結束
前回大会に続き、この種目で見事連覇を果たしたスロベニア。彼らの強さは、一言で言えば「空中操作の精密機械」です。
- プレヴツ兄妹の圧倒的安定感 今大会の象徴となったのが、ニカ・プレヴツ選手とドメン・プレヴツ選手の兄妹です。かつて「絶対王者」と呼ばれた長兄ペテルの背中を見て育った二人は、重圧がかかる場面でもフォームが一切乱れません。特にニカ選手は空中後半の伸びが凄まじく、他国が失速するエリアでもう一伸びする独特の技術を持っています。
- 技術の「標準化」 スロベニアは4人全員が同じ高いレベルの技術を共有しています。誰か一人が突出するのではなく、全員がK点付近に確実に着地する「底上げ」が完璧でした。この安定感こそが、合計得点で競う団体戦において最大の武器となりました。
【銀メダル】ノルウェー:空力(エアロダイナミクス)の限界に挑む開拓者
日本と激しい銀メダル争いを繰り広げ、僅差で競り勝ったノルウェー。彼らの特徴は、「圧倒的なスピードと科学的アプローチ」にあります。
- 個人金メダリストを擁する勢い 今大会の女子個人で金メダルを獲得したアンナ=オディーネ・ストローム選手がチームを牽引しました。彼女の「風を味方につける」感覚は今大会で最も研ぎ澄まされており、団体戦でもその勝負強さを発揮。チーム全体に「今のノルウェーは飛べる」という自信を波及させました。
- 世界最先端の「スーツと姿勢」の融合 ノルウェーは伝統的に空力研究が非常に盛んです。今回も、極限まで空気抵抗を減らしつつ、浮力を最大化する独自の飛行スタイルを確立していました。テイクオフ(踏み切り)直後のスキー板の開き方が非常に速く、瞬時に「飛ぶ形」を作れるため、風が不安定なプレダッツォの会場でも飛距離を伸ばし続けました。
- タレントの多様性 爆発力のあるマリウス・リンヴィク選手や、独特の助走姿勢を持つエイリン=マリア・クヴァンダル選手など、個性豊かなジャンパーが揃っています。それぞれの個性を活かしつつ、後半の男子2名が確実に順位を押し上げる粘り強さは圧巻でした。
メダル獲得の最大の要因:北京の涙を「対話」に変えた4年間
今回のメダル獲得の最大の要因は、間違いなく「チーム内での圧倒的なコミュニケーション」です。
4年前、失格という形で涙を飲んだあの夜から、彼らは「個人競技の集まり」ではなく「一つのチーム」として機能することに全力を注ぎました。高梨選手が抱えていた過度な責任感を、小林選手や伊藤選手が共有し、「誰かがミスをしても全員でカバーする」という文化を醸成しました。
また、スタッフを含めた「ワンチーム」でのスーツ開発や、気象情報の共有が、刻一刻と変わるイタリアの風を攻略する鍵となりました。高梨選手が2回目を飛び終えた際、メンバー全員が駆け寄って抱き合った光景は、彼らが技術を超えた「絆」で結ばれていたことを物語っています。
日本ジャンプ陣の皆さん、銀メダル獲得、本当におめでとうございます!
あなたたちの飛行は、日本中のファンに勇気と、そして「何度でも立ち上がる強さ」を教えてくれました!




