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魂のラストダンス ― 坂本花織、悔し涙に濡れた集大成の銀メダル

魂のラストダンス ― 坂本花織、悔し涙に濡れた集大成の銀メダル

2026年ミラノ・コルティナ国際大会、フィギュアスケート女子シングル。

日本フィギュア界の精神的支柱として、そして世界の「絶対女王」として君臨し続けてきた坂本花織選手。今大会を現役最後の集大成と位置づけ、全身全霊で氷に刻んだ彼女の舞いは、多くの人々の記憶に永遠に刻まれる輝きを放ち、見事銀メダルを獲得しました。

前大会の銅に続き、個人種目で複数メダル獲得は日本女子初の快挙となり、まさに有終の美を飾りました。


■プロフィールと基本情報

項目内容
氏名坂本 花織(さかもと かおり)
生年月日2000年4月9日(25歳 ※2026年大会時)
出身地兵庫県神戸市
所属シスメックス
コーチ中野園子、グレアム充子、川越正大
主な武器圧倒的なスピード、幅のあるダブルアクセル、高い精神力

坂本選手は、地元・神戸を拠点に活動を続けてきた、生粋の「神戸っ子」スケーターです。明るく天真爛漫なキャラクターと、氷の上で見せる力強くも繊細な演技のギャップが、世界中のファンを魅了してきました。


■来歴:幼少期から注目される直前まで

坂本選手のスケート人生は、4歳の時にNHK連続テレビ小説『てるてる家族』の影響を受けて始まりました。

  • 「神戸の元気娘」の誕生: 神戸のリンクで練習を始めた彼女は、幼い頃から人一倍のスピードを誇っていました。ジャンプの回転不足に悩む時期もありましたが、中野園子コーチのもとで「基礎を徹底的に叩き込む」指導を受け、揺るぎない技術の土台を築きました。
  • 中学時代の頭角: 中学2年生で全日本選手権6位に入り、一躍注目を浴びます。ジュニア時代には世界ジュニア選手権で3位に入るなど、着実に世界のトップへと階段を上っていきました。
  • 挫折と飛躍: 2018年の平昌大会で6位入賞。しかしその後のシーズンでは、代表選考漏れを経験するなど苦い思いも味わいました。しかし彼女はそこで「もう一度、スケートを心から楽しむ」という原点に立ち返り、2022年大会での銅メダルへと繋がる劇的な成長を見せたのです。

■これまでの主要大会での実績

「絶対女王」と呼ばれるにふさわしい、驚異的な実績を誇ります。

  1. 2022年 北京での国際大会: 個人戦で銅メダル、団体戦で銀メダルを獲得。
  2. 世界選手権 3連覇(2022年〜2024年): 日本人初となる大会3連覇を達成。ロシア勢が不在の中でも、「誰が相手でも勝てる実力」を証明し続けました。
  3. 全日本選手権 5連覇(〜2025年): 国内の熾烈な競争を勝ち抜き、長きにわたり日本のトップを守り続けてきました。
  4. 2025-26シーズン: 最後のシーズンと決めた今季、GPシリーズでの表彰台、そして全日本での圧倒的優勝を経て、このミラノの地へと乗り込みました。

■技術とパフォーマンスの分析:なぜ「坂本花織」は強いのか

彼女の演技は、フィギュアスケートの根幹である「スケーティング」の美しさを極めたものです。

1. 異次元の「幅」を持つジャンプ

坂本選手の代名詞といえば、世界一と称されるダブルアクセル(2回転半ジャンプ)です。科学的な解析でも、彼女のジャンプの飛距離(幅)は他選手を大きく凌駕していることが証明されています。高く跳ぶだけでなく、氷を滑るスピードをそのままジャンプの勢いに変えるため、着氷後の流れが非常に美しく、高い出来栄え点(GOE)を常に引き出します。

2. スピードの落ちない「ディープエッジ」

一歩氷を蹴るだけで、リンクの端から端まで到達するかのような加速力。彼女は演技後半になってもスピードが落ちません。深いエッジワークを駆使したスケーティングは、演技構成点(PCS)において世界最高水準の評価を得る最大の要因です。

3. 「引退」を覚悟した表現の深み

今大会、彼女が選んだフリー曲は『Time to Say Goodbye』。自身のキャリアを締めくくるこの曲で、彼女は「技術」を「表現」へと完全に昇華させました。一つ一つの指先の動き、呼吸、視線の配り方に至るまで、これまでの人生を振り返るような情感豊かな舞いは、ジャッジだけでなく観客の心をも揺さぶりました。


■出場種目と今大会のライバル、メダル争いの結果

【種目:フィギュアスケート 女子シングル】

ミラノの氷上で、三度目の大舞台に挑んだ坂本選手。そこには新旧の才能がひしめき合っていました。

立ちふさがる世界の強豪

  • アリサ・リュウ(アメリカ): 金メダル
    一時引退から復帰し、圧倒的な完成度を誇る今大会の金メダリスト。
  • 中井 亜美(日本):銅メダル
    3回転アクセルを武器にする17歳の新星。坂本選手を慕う頼もしい後輩。
  • 千葉 百音(日本): 美しい滑りと安定感で上位を脅かす存在。

激闘の結果

ショートプログラム(SP)を終えた時点で2位につけた坂本選手。首位の中井選手とはわずか1.48点差という大混戦でした。

運命のフリー。最終滑走グループ、5番目に登場した坂本選手。冒頭のダブルアクセルから会場は静まり返り、彼女の滑る音だけが響きました。すべての要素をほぼ完璧にこなし、最後のステップでは観客から自然と手拍子が沸き起こる感動的な演技。

結果はフリー147.67点、合計224.90点。惜しくもアリサ・リュウ選手に届かなかったものの、堂々の銀メダル。中井選手の銅メダルと共に、日本女子初のダブル表彰台という歴史を作りました。


■メダル獲得の最大の要因:迷いなき「自分への信頼」

坂本選手がこの大舞台で銀メダルを掴めた最大の要因。それは、「自分を信じ、スケートを愛し抜く心」でした。

今大会の女子シングルは、若手による高難度ジャンプ(3回転アクセル)の競演となりました。坂本選手はその中にあって、あえて大技を入れず、自分の強みである「スケーティングの質」と「ジャンプの完成度」で勝負する道を選びました。

「大技がないから勝てない」という雑音を一切遮断し、中野コーチと共に磨き上げた「日本品質」の滑りにすべてを懸けたのです。

「本当に最後決めたかったけれど、これだけ悔しい中でも銀メダルを獲得できた自分を誇りたい」

キス・アンド・クライではあまりの悔しさに、一目をはばからずに悔し涙にくれた坂本選手。ですが、金メダルに負けない輝きを放つ銀メダルを胸に美しく、誇り高く、その競技人生の幕を閉じました。


坂本花織選手、感動的な銀メダル獲得、本当におめでとうございます!

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