Shigekixって誰?
シゲキックス。刺激の強いグミのことではありません。今最も注目されているブレイキンダンサーの1人「Shigekix」(B-Boy Shigekix)のことです。
2024年にパリで行われる夏の国際大会に、初めて正式種目として採用されることになったブレイキン。ダイナミックでアクロバティックな技が魅力なストリートカルチャーで、今熱い視線が注がれるダンスであり、「スポーツ」です。
ヒップホップカルチャーのひとつとして発展してきたブレイキン
誕生の地は1970年代のニューヨーク・ブロンクス地区。ヒップホップカルチャー黎明期のことです。
貧困に苦しみ、闘争に明け暮れていたアフリカ系・ラテン系米国人が、暴力の代わりに音楽でバトルすることを決め、「踊るバトル」としてブレイキンが生まれました。そこから世界的な広がりを見せ、「ブレイクダンス」とも呼ばれながら、人気を集めてきました。映画「フラッシュダンス」などは見たことがあるという人も多いのでは?
日本代表に内定している若き覇者 Shigekix
そんなブレイキンで50回近くの優勝経験を持つB-Boy Shigekix。すでに日本代表に内定し、パリへの切符を手に入れています。
人懐こい笑顔が印象的な彼の本名は、半井 重幸(なからい しげゆき)。2002年大阪生まれ、弱冠22歳にして全日本選手権三連覇を成し遂げた、まさに王者です。
ブレイキンを始めたのは7歳の時。その才能は子どものころから突出していました。初の国際大会出場は11歳。始めたきっかけは、4歳年上の姉(Ayane)が習っていたからだそうです。親に連れられてレッスンについて行くうちに、自らも見よう見まねで踊り始めたのだとか。
もともとは器械体操をやっていた素地が追い風となったのか、その後、キッズダンサーとして大会に出場し、2013年 Unvsti 2013(Saint-Bruic,France)のKids 1vs1 カテゴリで、人生初の優勝。以後、幾度となく優勝してきました。2020年のRed Bull BC One World Finalでは、世界最年少記録での優勝を果たすなど、Shigekixはブレイキンの歴史に、次々と名を刻み続けています。
インスタグラムのフォロワーは10万人を超え、様々な国のファンがコメントを残しています。
2024年現在、第一生命保険株式会社に所属。既に、G-SHOCK(カシオ)、NIKE、コーセー、メルセデスベンツなど、そうそうたるグローバルブランドがスポンサーとなっています。
ブレイキンバトルの特徴とは?
現在のブレイキンでも、踊りを見せ合い戦う試合のことを「バトル」と呼びます。ダンサー(通称:B-BoyとB-Girl)が音楽に合わせ交互にダンス。様々なテクニックを披露し観客を沸かせています。
大会、コンテストが開催されるに伴い、フォーマットが作られるようになりました。
1対1で行う「ソロバトル」と、チーム戦とも呼べる数人で行う「クルーバトル」があります。2対2から、8対8の比較的大人数でバトルすることもあるようです。
大きな特徴はDJが音楽を担当し、司会進行役がいること。ジャッジは審査員が別途行います。ジャッジ基準は世界大会では「ボディ」「ソウル」「マインド」の3観点から判断。日本の大会では技術、表現、総合性のカテゴリ分類で審査基準を設けています。
ブレイキンバトルの主な要素
バトルは、いくつかの要素で構成されます。
- ・立って行う「TOPROCK」(トップロック)
- ・しゃがんだ状態で手をついて行う「FOOTWORK」(フットワーク)
- ・アクロバティックな動きが特徴「POWER MOVE」(パワームーブ)
- ・ポーズを決める「FREEZE」(フリーズ)
他にもゴーダウン、トランジション、フリップ、トリックが基礎的な要素としてあり、試合を見ていくごとに面白さがどんどん深まっていくでしょう。
なお、ブレイキンと聞いて思い浮かべる人も多いであろう頭でくるくる回るヘッドスピンは、パワームーブに分類されますよ。
Shigekixのバトルは高いテクニックと際立つ音楽性が魅力
Shigekixのブレイキンは、世界トップクラスと称されるフリーズ、全体的なスキルの高さが特徴です。さらに、音楽に合わせてムーブを決める「ミュージカリティ」を当人は重視しているとのこと。いわゆる「音ハメ」。音楽に合わせて動きを次々と決めているのがわかるでしょうか?技を繰り出すスピードや、決勝までクオリティを保つタフネスも強みとして挙げられます。
もちろん、技術は大切ですが、ブレイキンはただ技を決めれば良いというわけではありません。観客を盛り上げ、DJとコミュニケーションを取り、何より対戦相手と向き合いながら、会場全体を盛り上げていく、エンターテインメント性も重要になります。
ブレイキンは、そもそもがコミュニケーションとして発展してきた、カルチャーとしての側面を持つ競技。観客席がバトルを丸く取り囲むように設けられることが多いのも、ストリートでB-BoyとB-Girlが作ってきた「サイファー」(円)が基となっているからです。
自分が道を切り開くことで後進を育てたい、人々の続く道筋となりたいと折に触れて語っているShigekix。優勝経験が多いダンサーは孤高というイメージを持ちがちですが、日々、実姉も含め、仲間と切磋琢磨しているそうです。
精緻なテクニックと、比較的小柄だが鍛え抜かれた身体から繰り出される息もつかせぬ連続技は、見ているものの目を捉えて離しません。
自己表現としてのブレイキン
そんなShigekix選手ですが、実は絵をかくことなどアートがとても好きなんだとか。本人が語るには、「ブレイキンはスポーツよりアートに近く、自由に自己表現できる。何にも押さえつけられず、自分の感じたことをダンスでアウトプットできる。」「これまでの経験や思い、その瞬間に感じるものを表現して、何かが生まれると思う」と語っています。
ダンスはスポーツであり、アート。
持ち時間を一秒も無駄にせず、そこに自分の表現を残さずぶつけていくスタイル。そしてまさにそれが前述のテクニックやフィジカルをもって繰り出されることが、実は彼の魅力の秘密なのかもしれませんね!
世界をとった姿が見れるかもしれない
2023年のアジア大会で優勝したことで、代表内定を勝ち取ったShigekix。今回初採用となった種目であるから、当然トップになれば、初代の王者になります。
表彰台をに揚揚とのぼるShigekixの姿が、夏のパリで見られるかもしれません。