
長谷川帝勝(はせがわ たいが)選手は、世界初となる4方向すべての1980を成功させた、現代スノーボード界屈指の「回転の貴公子」です。2023年世界選手権のビッグエアで史上最年少金メダルを獲得し、今回の冬の国際大会でもビッグエアとスロープスタイルの2種目で表彰台の頂点を狙う、日本男子の最有力候補です。
■プロフィールと基本情報
| 項目 | 内容 |
| 氏名 | 長谷川 帝勝(はせがわ たいが) |
| 生年月日 | 2005年10月23日 |
| 出身地 | 愛知県岩倉市 |
| 身長 / 体重 | 164cm / 58kg |
| スタンス | グーフィー(右足が前) |
| 所属 | TOKIOインカラミ |
| 主な使用ギア | BURTON, STANCER |
長谷川選手は、スノーボード大国・日本の中でも、特に層が厚い「スロープスタイル・ビッグエア」種目のエースとして君臨しています。端正なルックスとは裏腹に、氷上の格闘技とも言われる激しい回転技を淡々とこなす姿は、まさに新世代のスターと呼ぶにふさわしい存在感を放っています。
■来歴:遊びから始まった「空飛ぶ才能」
長谷川選手のスケート人生は、非常に早い段階でスタートしました。
- 4歳での出会い: スノーボード愛好家であった父・剛司さんの影響で、4歳の時に初めてボードに触れました。当初から恐怖心よりも「楽しい」という気持ちが勝っており、地元のゲレンデを遊び場として成長しました。
- 英才教育と「Kings」での研鑽: 愛知県という雪の少ない地域にありながら、彼が世界一の回転力を身につけた背景には、東海地方や周辺にある室内練習施設(オフピステ施設)での徹底した練習があります。雪上ではなく、マットに着地するジャンプ施設で、怪我のリスクを抑えつつ何万回もの反復練習を行い、超高難度技の基礎を叩き込みました。
- 13歳での「覚醒」: 中学生になる頃には、国内のトップジュニアとして頭角を現します。2021年には世界ジュニア選手権で優勝し、「世界のタイガ」としてその名を轟かせる準備が整いました。
■主要大会での実績:記録を塗り替え続ける10代
長谷川選手のキャリアは「史上初」の連続です。
- 2023年 世界選手権(金メダル): ジョージアで開催された大会のビッグエア種目において、17歳という若さで優勝。日本男子としてこの種目初の金メダルという快挙を達成しました。
- 2023年 世界ジュニア選手権: スロープスタイルとビッグエアの両種目で金メダルを獲得し、2冠を達成。ジュニアのカテゴリーではもはや敵なしの状態でした。
- 2023-24 / 2024-25 ワールドカップ: ビッグエア種目において2シーズン連続で種目別年間王者に輝くなど、一発の爆発力だけでなく、シーズンを通した圧倒的な安定感を見せつけています。
- 2025年 X Games(金メダル): 世界最高峰の招待制大会「X Games」のビッグエアで優勝。名実ともに世界ナンバーワンの称号を手に、今回の国際大会へと挑みます。
■技術とパフォーマンスの分析:なぜ彼は「勝てる」のか
長谷川選手の強さは、数学的な精密さと芸術的なスタイルが同居している点にあります。
1. 全4方向「1980(5回転半)」のコンプリート
スノーボードには、回転の入り方や向きにより「フロントサイド」「バックサイド」「キャブ」「スイッチバックサイド」の4つのアプローチがあります。長谷川選手は、これらすべての方向から5回転半(1980度)を成功させた世界初のライダーです。これにより、どのようなジャンプ台の状況でも最高難度の技を繰り出せる「死角なし」の構成を組むことが可能になりました。
2. 驚異の回転軸と「グラブ」の完成度
単に回るだけなら、他にも追随する選手はいます。しかし、長谷川選手は回転中にボードの端を掴む「グラブ」を、回転が止まって見えるほど長く、そして深く保持します。この「スタイルの良さ」がジャッジから高い評価(出来栄え点)を引き出し、同じ回転数の他選手を凌駕する要因となっています。
3. 2160(6回転)という究極のジョーカー
2026年ミラノ大会に向けた秘密兵器として、実戦での成功が待たれているのが「2160(6回転)」です。すでに練習では成功させているとの情報もあり、決勝の最終回、ここ一番の場面でこの「人類未踏の回転数」が解禁されるかどうかが、世界中のファンとジャッジの注目を集めています。
■出場種目の詳細とライバル
【ビッグエア】
巨大なキッカーから一発のジャンプを行い、その難易度、スタイル、飛距離、着地を競います。最もシンプルでありながら、最も「回転数」が問われるスリリングな種目です。
【スロープスタイル】
コース上に設置されたレールやボックスなどの障害物(ジブ)と、複数のキッカーを連続して攻略します。滑り全体の流れ(フロー)や、創造的なライン取りが重視されます。
【主要ライバル】
- 蘇翊鳴(スー・イーミン/中国): 前回大会の金メダリスト。圧倒的な勝負強さと、完璧なランを揃える力を持っています。
- マーカス・クリーブランド(ノルウェー): 「回転の魔術師」と呼ばれる、長谷川選手が最も尊敬し、最大の壁とするライダー。独創的な技を次々と生み出す天才です。
- 木俣椋真(日本): 同じ日本代表であり、2025年世界選手権の覇者。切磋琢磨し合う最大のライバルであり、共に表彰台を独占する可能性も十分にあります。
■メダル獲得の可能性と期待の注目ポイント
ミラノ・コルティナの国際大会において、長谷川帝勝選手が金メダルを獲得する可能性は「極めて高い」と言えます。特にビッグエア種目においては、現時点で世界最高難度の構成を持っており、ミスなく着地さえすれば頂点は確実視されています。
今回の注目点は、予選から決勝にかけて彼が見せる「構成の引き出し」です。無理に最初から最大難度の技を狙わず、まずは確実に着地を決めてポイントを稼ぎ、最後に「2160」やさらに進化した新技をぶつけてくるという、戦略的な滑りに期待がかかります。
また、20歳という若さで迎えるこの大舞台を「楽しむ」ことができる彼のメンタルも大きな武器です。プレッシャーがかかる場面ほど、彼の顔には少年のような笑みが浮かびます。
「自分のやりたい滑りをして、世界を驚かせたい」
そう語る長谷川選手が、ミラノの空に描く放物線。その先に待っているのは、日本スノーボード界の歴史を塗り替える黄金の輝きに違いありません。





