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リンクに刻む「集大成」という名の軌跡 ― 坂本花織、三度目の国際大会で狙う真の女王の称号

リンクに刻む「集大成」という名の軌跡 ― 坂本花織、三度目の国際大会で狙う真の女王の称号

坂本花織(さかもと かおり)選手は、圧倒的なスピードと力強い跳躍を武器に世界を席巻し続ける、日本フィギュア界の絶対的エースです。世界選手権3連覇という歴史的偉業を経て、今シーズン限りでの引退を表明。自身3度目の冬季大会となるミラノの舞台で、悲願の個人戦金メダルと、有終の美を飾ることが期待されています。


■プロフィールと基本情報

項目内容
氏名坂本 花織(さかもと かおり)
生年月日2000年4月9日
出身地兵庫県神戸市
身長159cm
所属シスメックス
コーチ中野 園子、グレアム・ミツアキ、川原 星
振付師マリー=フランス・デュブレイユ、ブノワ・リショー

坂本選手は、その天真爛漫な明るさと、氷上でのダイナミックな演技のギャップが魅力の選手です。兵庫県神戸市を拠点に、長年「中野組」の一員として研鑽を積んできました。25歳で迎える今大会は、まさに円熟味を増した「完成形」の滑りを世界に示す場となります。


■来歴:神戸のリンクで磨かれた「スピード」と「負けず嫌い」

坂本選手のスケート人生は、4歳の時にNHK連続テレビ小説『てるてる家族』の主人公がスケートを滑るシーンに憧れたことから始まりました。

  • 中野園子コーチとの出会い: 地元の神戸市立ポートアイランドスポーツセンターで、厳格ながら愛情深い中野園子コーチに師事。当初から他の子を追い抜こうとする負けず嫌いな性格が際立っていました。
  • 「加速するジャンプ」の誕生: 中学1年生の頃、中野コーチから「全力ダッシュで跳びにいけ」という指導を受けます。スピードを落とさずに踏み切る恐怖心を克服し、着氷後も流れるように滑り続ける、坂本選手独自の「パワー・スケーティング」の基礎がここで確立されました。
  • 17歳での衝撃デビュー: 2017-18シーズン、シニア1年目にして頭角を現すと、全日本選手権で2位に入り、17歳で平昌での国際大会に出場。初の大舞台で6位入賞という快挙を成し遂げ、一躍日本の看板選手へと成長しました。

■主要大会での実績:世界を制した「3連覇」の偉業

坂本選手の足跡は、日本女子フィギュアの歴史そのものです。

  • 2021-22シーズン: 北京で開催された国際大会にて、女子シングルで銅メダルを獲得。団体戦では(後の裁定により)金メダル獲得に大きく貢献しました。同年の世界選手権で初優勝を果たします。
  • 2022-23 / 2023-24シーズン: 世界選手権にて、日本勢初となる3連覇を達成。ロシア勢が不在の中でも、圧倒的なスコアで「世界女王」の座を不動のものにしました。
  • 2024-25シーズン: ボストンでの世界選手権では、復帰したライバルとの激戦の末に銀メダル。連覇こそ途切れたものの、高い安定感を見せつけました。
  • 2025-26シーズン(現在): NHK杯で今季世界最高得点を記録して優勝。12月のグランプリファイナルでも表彰台に登り、集大成となる今回のミラノ大会に向けて万全の準備を整えています。

■技術とパフォーマンスの分析:唯一無二の「質」で勝負する

坂本選手の最大の武器は、トリプルアクセルや4回転といった超高難度技に頼らずとも、全ての要素の「質」を極めることで高得点を叩き出す「加点(GOE*)の女王」としての実力です。

1. 爆速の「ランディング」

多くの選手はジャンプの着氷時にスピードが落ちますが、坂本選手は着氷した瞬間、さらに加速するかのような滑らかな流れ(フロー)を持っています。これにより、出来栄え点(GOE)で満点に近い加点を引き出すことができます。

2. リンク全体を使い切るスケーティング

一蹴りで伸びるスケーティング技術は世界屈指。プログラムの後半になっても全くスピードが落ちないスタミナは、日々の過酷な練習の賜物です。2025年からは表現面でも進化を遂げ、大人の情感を湛えた「愛の讃歌」などは、演技構成点(PCS*)において世界最高評価を受け続けています。

3. 精神的なタフネス

自らを「寝たら忘れる性格」と称する通り、ミスを引きずらない切り替えの早さも強みです。4年に一度の国際大会という極限のプレッシャー下でも、自らを信じて突き進む「陽のエネルギー」が彼女を支えています。

*GOE = Grade of Execution /グレード・オブ・エグゼキューションの略

*PCS = Program Components Score/プログラム・コンポーネンツ・スコアの略


■出場種目の詳細とライバル

【種目:女子シングル】

ショートプログラム(SP)とフリースケーティング(FS)の合計点で競われます。表現力の比重が高まっている昨今のルール改正は、スケーティングスキルの高い坂本選手にとって追い風となっています。

【主要ライバル】

  • アリサ・リュウ(アメリカ): 2025年世界選手権の覇者。一度引退した後に復帰し、卓越した技術と若々しい感性でトップに返り咲いた最大の強敵です。
  • 千葉百音 & 中井亜美(日本): 同じ日本代表の二人。特に千葉選手は2025年世界選手権で銅メダルを獲得しており、坂本選手を追う若き筆頭株です。中井選手は高難度ジャンプを武器に表彰台を狙います。
  • アンバー・グレン(アメリカ): トリプルアクセルを武器にする攻撃的なスケーター。勢いに乗ると手が付けられない爆発力を持っています。

■メダル獲得の可能性と期待の注目ポイント

今回のミラノ・コルティナ大会において、坂本花織選手のメダル獲得の可能性は非常に高いです。

最大の注目ポイントは、彼女が「現役最後の演技」としてどのようなラン(滑走)を見せるかです。引退を公言して臨む今大会、彼女の心にあるのは「勝ち負け」を超えた、20年間のスケート人生への感謝とプライドです。

特にフリープログラムの終盤、力強いコレオシークエンスで見せる彼女の弾けるような笑顔は、ジャッジや観客の心を動かす決定的な瞬間となるでしょう。

北京での銅メダルから4年。より円熟し、より力強くなった坂本花織が、表彰台の頂点で君が代を聴く準備は整いました。日本フィギュア界の太陽が、ミラノの氷上で最後の、そして最も眩しい輝きを放つのを、全力で応援しましょう。

参照元:【世界フィギュアスケート選手権2025】女子・フリースケーティング 坂本花織選手<ノーカット>
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