
戸塚優斗(とつか ゆうと)選手は、世界一と称されるエアーの高さと独創的なルーティンで、2021年世界選手権を制した日本を代表するプロスノーボーダーです。過去二度の国際大会での悔しさを糧に、高難度の大技トリプルコークを武器に進化を遂げた彼が、三度目の正直となるミラノの舞台で、悲願の頂点を目指します。
■プロフィールと基本情報
| 項目 | 内容 |
| 氏名 | 戸塚 優斗(とつか ゆうと) |
| 生年月日 | 2001年9月27日 |
| 出身地 | 神奈川県横浜市 |
| 身長 / 体重 | 169cm / 65kg |
| 所属 | ヨネックス |
| 使用ボード | YONEX REV |
| 主な武器 | フロントサイド・トリプルコーク1440、圧倒的なエアーの高さ |
横浜という大都市に生まれ育ちながら、雪山を主戦場とする戸塚選手。その都会的なセンスと、雪上での荒々しくも美しいライディングのギャップは、多くのファンを惹きつけて止みません。2026年1月現在、ワールドカップ(W杯)第4戦で優勝を飾るなど、心技体ともに絶好調の状態でミラノの地へと乗り込みます。
■来歴:横浜の少年が「世界一のパイプ」を夢見た日々
戸塚選手の原点は、雪国ではなく、神奈川県横浜市の街中にありました。
- 2歳での運命的な出会い: 両親、特に母親の影響で2歳の時に初めてスノーボードを履きました。物心つく前からの習慣だった雪山通いが、彼の野生的なバランス感覚を養いました。
- 室内施設「カムイみさか」での修練: 少年時代、雪のない季節も練習を継続するため、山梨県の室内施設「カムイみさか」へ足繁く通いました。限られた環境の中で、いかに高く飛び、いかに正確に板をコントロールするか。そのストイックな反復練習が、現在の「戸塚スタイル」の礎となりました。
- ヨネックスとの出会い: 小学校時代から頭角を現すと、ヨネックスのジュニア育成プログラムに参加。早くからプロ仕様の機材と専門的な指導を受ける環境に身を置いたことで、中学3年生にして全日本選手権を制覇するという「神童」ぶりを発揮しました。
■主要大会での実績:歓喜と挫折を繰り返した「成長の軌跡」
彼のキャリアは、輝かしい栄光と、目を背けたくなるような過酷な経験が表裏一体となっています。
- 2018年 平昌での国際大会: 16歳で初出場。しかし、決勝での大転倒により担架で運ばれるという、あまりに痛烈な幕切れを経験しました。この時の「恐怖」と「悔しさ」が、彼を怪物へと進化させることになります。
- 2021年 伝説の「全大会優勝」: 2020-21シーズン、戸塚選手は世界選手権、X Games、US Open、そしてワールドカップと、出場した主要大会すべてで優勝するという、男子ハーフパイプ史上でも稀に見る「完全制覇」を成し遂げました。
- 2022年 北京での国際大会: メダル最有力候補として臨んだものの、本来の滑りが出せず10位。世界一の実力を持ちながら、国際大会という魔物に阻まれた悔しさは、彼を再びどん底からの挑戦へと駆り立てました。
- 2025-26シーズン 完全復活: プロとして活動拠点を広げ、メンタル面も強化。2026年1月のアスペンW杯で優勝し、ミラノ大会の代表候補として文句なしの選出を果たしました。
■技術とパフォーマンスの分析:重力を否定する「YUTO AIR」
戸塚優斗というライダーを語る上で欠かせないのが、その圧倒的な「高さ」と「強靭な軸」です。
1. 唯一無二のアンプリチュード(高さ)
戸塚選手のエアーは、パイプの縁から6メートル以上に達することもあります。これは観客席から見れば、ビル2階分以上の高さから飛び出しているに等しい迫力です。単に高いだけでなく、その頂点での浮遊感と、そこから落差を活かして次の加速へとつなげる技術が、彼の高得点の秘訣です。
2. フロントサイド・トリプルコーク1440
縦3回転、横4回転という、物理の限界に挑む大技です。戸塚選手はこれを、圧倒的な高さから繰り出します。滞空時間に余裕があるため、回転の軸がブレにくく、着氷時の安定感も向上しています。最近ではこの技をルーティンのどこに組み込むかという「戦略性」にも磨きがかかっています。
3. 「自分との対話」で得た精神的余裕
かつては「勝ちたい」という焦りからミスが出ることもありましたが、現在の彼は「自分の滑りを表現する」ことに集中しています。最近のインタビューでも「相手の滑りを讃えられるようになった」と語っており、その心の余裕が、本番での勝負強さへと直結しています。
■出場種目の詳細とライバル:新旧の天才がひしめく極限の空域
【種目:スノーボード 男子ハーフパイプ】
雪壁で作られた半円筒状のコース内で、5〜6回のジャンプを行い、その難易度、完成度、高さを競います。
【主要ライバル】
- スコッティ・ジェームス(オーストラリア): スノーボード界の「絶対王者」。ミスをしない完璧な滑りと、緻密に計算された構成は戸塚選手にとって常に最大の障壁です。
- 平野歩夢(日本): 前回大会の覇者。トリプルコークを武器に伝説を作った彼との戦いは、日本人同士の意地がぶつかり合う今大会最大の注目カードです。
- 平野流佳(日本): ワールドカップ年間王者の常連。安定感と高さで戸塚選手と表彰台を争います。
- 山田琉聖(日本): 2025年末のW杯で初優勝を飾った19歳の新星。若さゆえの爆発力があり、先輩たちの牙城を脅かす存在です。
■メダル獲得の可能性と期待の注目ポイント
ミラノ・コルティナの国際大会において、戸塚優斗選手がメダルをかける可能性は高いでしょう。
今回の戸塚選手には、平昌での負傷、北京での敗北、そのすべてを飲み込み、力に変えてきた「強さ」があります。
そして注目ポイントは、決勝のラストヒット(最後のジャンプ)です。ここで彼が温めてきた「超大技」を完璧にメイク(成功)させることができれば、会場のボルテージは最高潮に達し、審査員への強烈なインパクトと共に悲願の頂点が見えてくるでしょう。
ミラノの夜空に、横浜で育った少年が世界一高い放物線を描く。その時、過去のすべての涙は黄金の輝きへと変わります。
「結果は後からついてくる。今はただ、自分の最高を見せたい」
寡黙な彼の胸の内に秘められた激しい情熱が、今、イタリアの地で爆発しようとしています。あとは私たちが、その歴史的瞬間を見届ける準備をするだけです!




