
岩渕 麗楽(いわぶち れいら)選手は、女子で世界初の大技「トリプルアンダーフリップ」を成功させた、世界屈指のエアの先駆者です。過去二度の国際大会で4位という悔しさを味わいながらも、飽くなき挑戦を続け、2026年ミラノ大会ではスノーボード女子日本勢初となる「金メダル」の獲得に大きな期待がかかっています。
■プロフィールと基本情報
| 項目 | 内容 |
| 氏名 | 岩渕 麗楽(いわぶち れいら) |
| 生年月日 | 2001年12月14日 |
| 出身地 | 岩手県一関市 |
| 身長 | 150cm |
| 所属 | BURTON / INPEX |
| 出身校 | 一関学院高等学校 → 法政大学卒 |
| 主な種目 | スノーボード・ビッグエア / スロープスタイル |
| 使用ボード | BURTON |
岩渕選手は、身長150cmと小柄ながら、その体からは想像もつかないダイナミックで力強いライディングが持ち味です。名前の「麗楽(れいら)」は、世界的に有名なギタリストのエリック・クラプトンの名曲「愛しのレイラ」に由来しており、「世界で活躍してほしい」という両親の願いを体現するように、今や世界中のスノーボードファンにその名を知られるトップライダーとなりました。
■来歴:岩手の雪山から「世界のレイラ」へ
岩渕麗楽の物語は、岩手県の厳しい冬の中で育まれました。
- 4歳でのスタート: 両親の影響で4歳からスノーボードを始めました。幼少期から岩手県内のスキー場を遊び場とし、物怖じしない性格でジャンプやキッカーに挑んでいきました。
- 「流鏑馬」の精神: 彼女の出身地である岩手県一関市は、伝統行事「流鏑馬(やぶさめ)」でも知られます。岩渕選手自身、過去のインタビューで「一点を集中して射抜く集中力」の重要性を語っており、その精神的な強さは、故郷の風土によって養われたものと言えるかもしれません。
- 中学でプロ転向: 中学1年生でプロ資格を取得。早くから大人たちに混じって大人顔負けの技を繰り出し、「岩手の天才少女」として全国にその名が知れ渡りました。高校時代にはすでにワールドカップ(W杯)の表彰台に登るなど、その成長スピードは驚異的でした。
■主要大会での実績:頂点を知る王者の歩み
彼女のキャリアは、常に「史上初」や「最高難度」への挑戦と共にありました。
- 2018年 平昌での国際大会(4位): 16歳で初出場。ビッグエアで4位に入賞し、メダルまであと一歩のところまで迫りました。この時の悔しさが、彼女を「より高い難易度」へと突き動かす原動力となりました。
- 2022年 北京での国際大会(4位): 二度目の大舞台。決勝の最終3本目、メダルを確実にする安全な技ではなく、勝つために当時女子では未踏だった「トリプルアンダーフリップ」に挑戦。結果は転倒で4位となりましたが、その挑戦を讃えてライバルたちが彼女のもとへ駆け寄り、全員で抱き合ったシーンは、同大会で最も感動的な場面の一つとして世界中で語り継がれています。
- 2023年 X Games(金メダル): ついに悲願の瞬間が訪れます。世界最高峰の賞金大会「X Games」のビッグエアで、女子史上初となる「フロントサイド・トリプルアンダーフリップ1260」を完璧に成功させ、金メダルを獲得。名実ともに世界ナンバーワンの称号を手にしました。
- 2025-26シーズン W杯: ミラノを控えた今シーズンも、ビッグエアやスロープスタイルで安定して表彰台に登り続けており、万全のコンディションで本番を迎えます。
■技術とパフォーマンスの分析:重力を切り裂く「3回転」の美学
岩渕選手の滑りは、高い技術力と「絶対に守りに入らない」攻撃的な姿勢に集約されます。
1. 女子唯一の「トリプル」ライダー
現在の女子スノーボード界において、縦3回転(トリプル)を実戦のルーティンに組み込める選手は極めて限られています。岩渕選手の「フロントサイド・トリプルアンダーフリップ1260」は、その高さ、回転の軸、そして着氷の力強さにおいて他を圧倒しています。
2. 卓越した「空中察知能力」
彼女の最大の武器は、空中での「目」です。激しく回転しながらも、自分が今どこにいて、いつ着地すべきかを正確に把握する能力に長けています。これにより、多少軸がズレても空中で修正し、クリーンな着地(ストンプ)へと繋げることができます。
3. スタイルと難易度の融合
単に回転数を増やすだけでなく、板を掴む「グラブ」の美しさにもこだわります。インディグラブやミュートグラブを正確にホールドし続けることで、ジャッジに対して「技をコントロールしている」という強い印象を与え、高い構成点を引き出します。
■出場種目の詳細と強力なライバルたち
【種目:女子ビッグエア / 女子スロープスタイル】
ビッグエアは巨大なキッカーから一発の技の完成度を競い、スロープスタイルは複数の障害物(レールなど)とジャンプを組み合わせたコース全体を滑ります。
【主要ライバル】
- アンナ・ガッサー(オーストリア): 前回大会の金メダリストであり、女子スノーボード界のレジェンド。30歳を超えてもなお進化を続ける彼女の経験値は、岩渕選手にとって最大の壁となります。
- ゾイ・サドウスキー・シノット(ニュージーランド): スロープスタイルの絶対女王。圧倒的な滑走スピードと安定感を持ち、ミスをしない滑りは脅威です。
- 村瀬心椛(日本): 同じ日本代表であり、最大のライバル。2025年のW杯でも優勝を争う二人の「日本人対決」は、世界中が注目するミラノのハイライトになるでしょう。
- ミア・ブルックス(イギリス): 10代の若さで世界選手権を制した新星。クリエイティブなライン取りと高い身体能力を武器に、表彰台を狙います。
■メダル獲得の可能性と期待の注目ポイント
2026年ミラノ国際大会において、岩渕麗楽選手が表彰台に登る可能性は高いと言わざるを得ません。
過去二大会での「4位」という結果。それは彼女にとって、呪縛ではなく「最強のモチベーション」へと昇華されています。今回のミラノ大会では、かつての北京で見せた「挑戦して散る」姿ではなく、「挑戦して勝ち切る」姿が期待されています。
特に注目ポイントとなるビッグエアでは、1本目・2本目で確実に高得点を揃え、3本目に満を持して「トリプル」を投入するという戦略が予想されます。北京の時に世界を感動させたあの技が、今回は「歓喜の着地」へと変わる瞬間。その時、彼女の首には最も輝かしい色のメダルがかけられているはずです。
「結果よりも、自分が納得できる滑りをしたい。その先に、メダルがあれば最高です」
そう語る彼女の瞳には、かつてないほどの自信と静かな闘志が宿っています。小柄な体で世界の巨大なキッカーに挑み続ける岩渕麗楽。彼女が描く放物線は、日本の、そして世界のスノーボードの歴史を再び大きく塗り替えることでしょう。
岩手の雪山が育んだ「星」が、ミラノの夜空で一番の輝きを放つその瞬間に期待しましょう!



