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蒼天を舞う「下川の誇り」、伊藤有希 ― 結実の時を迎えるミラノへの跳躍

蒼天を舞う「下川の誇り」、伊藤有希 ― 結実の時を迎えるミラノへの跳躍

伊藤有希(いとう ゆき)選手は、世界屈指の空中感覚と勝負強さを兼ね備えた、日本女子ジャンプ界の精神的支柱です。四度目の挑戦となる今回の国際大会では、ノーマルヒル個人戦および混合団体での金メダル獲得を目指します。ベテランとしての円熟味と、若手を凌駕する爆発力を武器に、世界の頂点へと羽ばたく姿に熱い期待が寄せられています。


■プロフィールと基本情報

項目内容
氏名伊藤 有希(いとう ゆき)
生年月日1994年5月10日
出身地北海道上川郡下川町
身長161cm
所属土屋ホームスキー部
師匠葛西 紀明(レジェンド)
主な実績ワールドカップ通算複数回優勝、世界選手権金メダル(団体)

伊藤選手は、名ジャンパーを数多く輩出してきた「ジャンプの聖地」北海道下川町の出身です。レジェンド・葛西紀明選手率いる土屋ホームスキー部に所属し、そのストイックな練習姿勢と、逆境でも崩れないメンタルの強さは、世界のジャンパーたちからも高く評価されています。


■来歴:ジャンプの聖地が育んだ「純血のジャンパー」

伊藤有希選手の歩みは、日本の女子スキージャンプの歴史そのものと言っても過言ではありません。

  • 運命的な環境: スキージャンプが生活の一部である下川町に生まれ、父もジャンプ選手、母もスキー選手という恵まれた環境で育ちました。4歳で初めてスキーを履き、物心つく前にはジャンプ台のスタートゲートに座っていたといいます。
  • 「天才少女」の出現: 小・中学生時代からその才能は際立っており、男子選手と対等に渡り合うほどの飛距離をマークしていました。当時から「下川に凄い女の子がいる」と噂され、早くから将来のメダル候補として嘱望されてきました。
  • 葛西紀明との出会い: 高校卒業後、葛西紀明選手が選手兼監督を務める土屋ホームに入社。ここで「世界で勝つための哲学」を叩き込まれました。葛西選手から受け継いだ「V字飛行」の極意と、飽くなき探究心が、彼女を世界のトップへと押し上げる決定的な要因となりました。

■主要大会での実績:世界の頂を争い続ける「実力者の証明」

彼女がこれまでの国際舞台で残してきた足跡は、常に世界の最前線にありました。

  • 2014年 ソチでの国際大会: 女子ジャンプが初めて採用されたこの大会で、日本代表として出場。7位入賞を果たし、世界にその実力を示しました。
  • 2017年 世界選手権(ラハティ): 個人ノーマルヒルで銀メダルを獲得。さらに混合団体では金メダル獲得に大きく貢献し、「世界のイトウ」としての地位を不動のものにしました。
  • 2022年 北京での国際大会: 個人戦では無念の結果に終わりましたが、その後も決して腐ることなく、自身のフォームをゼロから見直す勇気を持って競技を続けました。
  • 2024-25シーズン ワールドカップ: 札幌大会や蔵王大会といった国内戦、そして欧州遠征でも安定して表彰台に登壇。2025年末のW杯では、圧倒的な飛距離で優勝を飾り、ミラノに向けた調整が完璧であることを世界に知らしめました。

■技術とパフォーマンスの分析:重力を味方につける「究極の飛行曲線」

伊藤有希選手のジャンプには、他の選手にはない独自の強みがあります。

1. 鋭い「踏み切り」のタイミング

サッツ(踏み切り台)から飛び出す瞬間の瞬発力と、スキー板に風を乗せるスピードが非常に速いのが特徴です。コンマ数秒のズレが命取りになるスキージャンプにおいて、彼女の踏み切り精度は「精密機械」と称されるほど安定しています。

2. 深く鋭い「前傾姿勢」

空中へ飛び出した直後、上半身を深く折り曲げ、スキー板と体がほぼ平行になるまでのスピードが驚異的です。これにより空気抵抗を極限まで減らし、後半まで高度を落とさずに距離を伸ばす「後半の伸び」を実現しています。

3. 圧倒的な「空中感覚」

強風や追い風といった不安定な気象条件下でも、空中で瞬時に体のバランスを修正し、最も効率の良い飛行ラインを見つけ出す能力に長けています。この「風を読む力」こそが、ベテランならではの武器と言えるでしょう。

4. 王者のテレマーク

飛距離だけでなく、美しさも追求するのが伊藤流。着地時にしっかりと膝を入れ、背筋を伸ばして決める「テレマーク姿勢」は、常に高い飛型点を引き出し、僅差の勝負を制する決定打となります。


■出場種目の詳細とライバル:ミラノで激突する「世界の強豪」

【種目:女子ノーマルヒル / 混合団体】

ヒルサイズ(K点)が100メートル前後のジャンプ台で行われます。技術の繊細さと、空中での姿勢制御が勝敗を分ける種目です。

【主要ライバル】

  • エバ・ピンケルニッヒ(オーストリア): 驚異的なメンタルを持ち、伊藤選手と同様にベテランの域に達しながら進化を続ける最強のライバルです。
  • ニカ・クリジュナル(スロベニア): 空中での力強い飛行が持ち味。高い飛距離を叩き出す能力があり、常に表彰台を争う存在です。
  • アレクサンドリア・ラウティット(カナダ): 急成長を遂げた若き才能。勢いに乗ると手がつけられない爆発力を持っています。
  • 高梨沙羅(日本): 長年、共に切磋琢磨してきた最大の戦友。二人が最高の状態で競い合う姿は、日本チームにとって最大の武器となります。

■メダル獲得の可能性と期待の注目ポイント

2026年ミラノ国際大会において、伊藤有希選手が悲願の金メダルを手にするチャンスは今、最大に高まっています。

かつての伊藤選手は、完璧主義ゆえに自分を追い込みすぎる側面もありました。しかし、多くの挫折と成功を繰り返した今の彼女には、良い意味での「余裕」と「しなやかさ」が備わっています。

注目ポイントは、「2本目のジャンプ」です。彼女は1本目の結果にかかわらず、2本目に集中力を一段階引き上げ、驚異的な逆転劇を見せることが多々あります。その集中力は、まさに「ゾーン」に入ったと言える神々しささえ感じさせます。

「これまで支えてくれたすべての人に、結果で恩返しをしたい。下川の風を感じて、思い切り飛びたい」

その言葉通り、故郷の期待、師匠の教え、そして自身の情熱をすべて翼に乗せて、ミラノの夜空を舞う ― 彼女が着地した瞬間、会場に響き渡る歓喜の声と、彼女の最高の笑顔が見られることを信じて疑いません!

参照元:Home sweet home for Yuki Ito | FIS Ski Jumping World Cup 23-24

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