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絶対女王への挑戦状 ― 小野光希がリヴィーニョの空に刻んだ史上最高の高さと歓喜のメダル

絶対女王への挑戦状 ― 小野光希がリヴィーニョの空に刻んだ史上最高の高さと歓喜のメダル

小野光希選手が氷の壁を舞い、見事銅メダルを獲得しました。

イタリアの青く澄み渡った空に、彼女が描いた軌跡は誰よりも高く、そして美しく輝いていました。2026年ミラノ・コルティナ国際大会

予選11位通過からの鮮やか過ぎる逆転劇。スノーボード女子ハーフパイプにおいて、日本中が待ち望んだ瞬間がついに訪れました。


■の軌跡と成果

小野光希(おの みつき)選手は、埼玉県出身の日本女子ハーフパイプのエースです。ユース世代から世界を席巻し、2年連続ワールドカップ年間王者の実績を掲げて挑んだ2026年ミラノ国際大会。女子では異次元の「高さ」を武器に、ハイレベルな決勝を勝ち抜き、見事に銅メダルを獲得。日本の女子ハーフパイプに新たな歴史を刻みました。


■プロフィールと基本情報

項目内容
氏名小野 光希(おの みつき)
生年月日2004年3月5日(21歳 ※2026年大会時)
出身地埼玉県吉川市
所属バートン
出身校早稲田大学(在学中)
スタンスグーフィー(右足前)
主な武器圧倒的なエアの高さ、フロントサイド1080

小野選手は、物腰の柔らかい笑顔が印象的な大学生ライダーですが、一度パイプに入れば、男子顔負けのダイナミックな試技を見せる「氷上のアスリート」へと変貌します。


■来歴:幼少期から注目される直前まで

小野光希選手とスノーボードの出会いは、わずか3歳の頃でした。スノーボード好きの両親に連れられ、雪山に親しむ中で、自然と板に乗る楽しさを覚えていきました。

  • 「怖い」から「もっと高く」へ:
    本格的にハーフパイプを始めたのは小学校に入ってから。当初は巨大な壁に恐怖心を感じることもあったそうですが、一度浮遊感を味わうと、その虜になりました。平日は埼玉の自宅から室内練習場(カムイみさかなど)へ通い、週末は雪山へ向かうという、スノーボード漬けの生活が始まりました。
  • 早すぎた才能の開花:
    中学時代にはすでに国内に敵なしの状態となり、2018年、2019年には世界ジュニア選手権を連覇。この頃から「次世代のメダル候補」として世界中からマークされる存在となりました。
  • 挫折から学んだ「自分らしさ」:
    17歳で出場した2022年の北京国際大会。メダル候補と目されながらも、結果は9位。「自分の滑りができなかった」という悔しさが、彼女をさらに強く、そして思慮深いライダーへと成長させるきっかけとなったのです。

■これまでの主要大会での実績

北京での悔しさを晴らすべく、小野選手のこの4年間はまさに「無双状態」でした。

  1. 2022-23 / 2023-24シーズン ワールドカップ:
    2シーズン連続で種目別年間総合優勝(クリスタルトロフィー)を獲得。世界ランキング1位として、名実ともに世界のトップに君臨しました。
  2. 2024年 X Games Aspen:
    世界最高峰の招待制大会において、悲願のメダルを獲得。高難度のルーティンを安定して成功させる「ミスのない強さ」を世界に見せつけました。
  3. 2025年 世界選手権:
    表彰台に登り、今大会のミラノへ向けて「金メダルへの最短距離」にいることを証明しました。

■技術とパフォーマンスの分析:なぜ彼女のエアは「高い」のか

小野選手の最大の武器は、何と言っても「圧倒的な振幅(アンプリチュード)」です。

  • ボトムでの加速技術:
    ハーフパイプの底(ボトム)で板をフラットにし、最短距離で駆け上がる技術。これにより、リップ(壁の縁)を飛び出す瞬間のスピードを最大化しています。
  • 「空中での静止画」のような安定感:
    高く飛び出した後、頂点付近でのグラブ(板を掴む動作)が非常に長く、ジャッジに対して「余裕」を印象付けます。
  • フロントサイド1080(3回転):
    今大会でも決め手となったこの大技。女子でこれほど高い位置から回転を始め、完璧な姿勢で着地できる選手は世界でも指で数えるほどしかいません。
  • スイッチ(逆スタンス)の精度:
    グーフィーからレギュラーに切り替えてのジャンプも、高さが一切落ちない。ルーティン全体の「平均的な高さ」が、彼女の得点を押し上げる要因となっています。

■出場種目と今大会のライバル

【種目:女子ハーフパイプ】

会場となったリヴィーニョのパイプは、気温の低さから非常に硬く、スピードが出やすい一方で、一度のミスが命取りになる過酷なコンディションでした。

宿命のライバルたち

  • チェ・ガオン(韓国):金メダル
    1回目の試技で転倒するというアクシデントに見舞われたものの競技を継続し、3回目の試技で「90.25点」という圧巻のパフォーマンスを披露し、若干17歳という同種目史上最年少記録を更新するとともに、スノーボード競技では初となる金メダルを母国にもたらしました。
  • クロエ・キム(アメリカ):銀メダル
    この種目の「絶対女王」と称される彼女。驚異的な回転数とカリスマ性を持ち、今大会でも前人未踏の3連覇を目指しましたが、大会6週間前に肩を脱臼するも、不屈の最終滑走で超高難度のルーティン「スイッチフロントサイド・ダブルコーク1080」を繰り出すものの着地がわずかに乱れ、僅差でチェ選手に頂点を譲りました。

決勝の激闘

決勝1本目、小野選手は安全圏の滑りで暫定2位につけます。勝負に出たのは2本目でした。冒頭でフロントサイド1080を完璧にメイク。続くキャブ900、フロントサイド900と繋ぎ、すべてのヒットで他を圧倒する高さを維持しました。

最終ランでクロエ・キム選手が圧巻の滑りを見せて逆転されたものの、小野選手は最後まで自身のスタイルを崩さず、銅メダルを獲得しました。


■メダル獲得の最大の要因:精神の解放と「大学での学び」

今回、小野選手がメダルを掴み取った最大の要因。それは、「心技体の完全な調和」にあります。

4年前、プレッシャーに押しつぶされそうになった経験から、彼女はメンタル面でのアプローチを大きく変えました。早稲田大学での学びを通じて、客観的に自分を見つめる術を身につけ、「結果」ではなく「自分の最高のパフォーマンスを表現すること」に集中するマインドセットを確立したのです。

また、日本チームの盤石なサポート体制も欠かせません。ワックスマンやコーチ陣と連携し、イタリアの硬い雪質に合わせた最適な板の調整を行ったことが、あの異次元のスピードと高さを生み出す土台となりました。

「滑っていて、本当に楽しかった。空中にいる時間が、今までで一番長く感じました」

レース後のインタビューで語ったその言葉通り、楽しむ心が彼女に翼を与え、ミラノの空高くへと押し上げたのです。


小野光希選手、銅メダル獲得、本当におめでとうございます!あなたのその笑顔と高いエアは、日本中の、そして世界中の子供たちに「空を飛ぶ夢」を与えてくれました。

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