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怪我を乗り越え、表現者として覚醒した「世界の宝」 ― 鍵山優真、ミラノで証明した真の4回転時代

怪我を乗り越え、表現者として覚醒した「世界の宝」 ― 鍵山優真、ミラノで証明した真の4回転時代

ミラノの氷上にあったのは、単なる「競技」を超えた、一篇の美しい物語。前回大会での衝撃的なデビューから4年。苦難の時を越え、表現者として覚醒した鍵山優真選手が、自己ベストを更新する圧巻の演技を披露し、2大会連続の銀メダルに輝きました。


■プロフィールと基本情報

項目内容
氏名鍵山 優真(かぎやま ゆうま)
生年月日2003年5月5日(22歳 ※2026年大会時)
出身地神奈川県横浜市(長野県軽井沢町生まれ)
所属オリエンタルバイオ / 中京大学
コーチ鍵山 正和、カロリーナ・コストナー
主な武器世界一と評されるスケーティング、極上の膝の使い方

鍵山選手は、元国際大会代表の父・正和氏をコーチに持ち、幼少期から「スケーティングの神髄」を叩き込まれてきました。その技術は、今や世界中のジャッジや専門家から「教科書」と称賛されています。


■来歴:幼少期から注目される直前まで

鍵山選手のスケート人生は、物心つく前、父がコーチを務めていた富山や軽井沢のリンクで始まりました。

  • 父の背中を追って: 父・正和氏は1992年、1994年の国際大会に出場した名選手。優真選手は、父の現役時代の映像を繰り返し見て育ちました。「父のような滑りがしたい」という純粋な憧れが、彼の原点です。
  • 横浜での研鑽: 小学校高学年からは横浜に拠点を移し、本格的に競技に打ち込みます。当時はまだ無名でしたが、関係者の間では「スケーティングが桁違いに上手い子がいる」と噂になっていました。
  • ジュニア時代の衝撃: 2019-2020シーズン、ユース国際大会での優勝、そして世界ジュニア選手権での銀メダル獲得。彗星のごとく現れた「鍵山優真」の名は、瞬く間に世界を駆け巡りました。踊りながら跳ぶ、その天性のリズム感は、すでにシニアをも脅かす存在となっていました。

■これまでの主要大会での実績

鍵山選手のキャリアは、驚異的なスピードでの躍進と、それを阻む試練との戦いでした。

  1. 2021年 世界選手権: 初出場でいきなり銀メダル。羽生結弦選手やネイサン・チェン選手と並んで表彰台に登り、次世代のエースとしての地位を確立しました。
  2. 2022年 北京での国際大会: 18歳で挑んだ初の大舞台。団体戦での貢献、そして個人戦での銀メダル獲得。その物怖じしない滑りと太陽のような笑顔は、世界中にファンを作りました。
  3. 苦難の2022-23シーズン: 左足首の怪我により、シーズンの大半を欠場。一時は「以前のようなジャンプは跳べないのではないか」という不安に襲われましたが、この時間が、彼に「滑れる喜び」と「表現することの大切さ」を再確認させることになります。
  4. 2024-25シーズン 復帰と進化: カロリーナ・コストナー氏をコーチに迎え、表現面で劇的な進化を遂げます。グランプリファイナルでの活躍を経て、万全の状態でミラノへと乗り込みました。

■技術とパフォーマンスの分析:なぜ「唯一無二」なのか

鍵山選手のスケートには、他の選手には真似できない「3つの魔法」があります。

1. シルクのようなスケーティング

鍵山選手の滑りは、氷の上を「滑っている」というより、氷の上を「浮いている」かのような滑らかさを持っています。一蹴りで加速する伸び、深いエッジワーク。これこそが、高い演技構成点(PCS)を叩き出す最大の要因です。

2. 「魔法の膝」が生む着氷

ジャンプの着氷時、彼の膝は極めて深く、柔らかく衝撃を吸収します。着氷後に流れるようなスピードが維持されるため、GOE(出来栄え点)で高い加点を引き出します。

3. 芸術性の覚醒(コストナー・エフェクト)

2026年大会の鍵山選手は、単なる「上手いスケーター」から「偉大なアーティスト」へと変貌しました。指先の動き一つ、視線の配り方一つに物語を宿すその表現力は、コーチであるカロリーナ・コストナー氏との厳しいトレーニングの賜物です。


■出場種目と今大会のライバル

【種目:フィギュアスケート 男子シングル】

ミラノ大会のメイン会場は、張り詰めた緊張感と、熱狂的な大声援に包まれていました。

宿命のライバルたち

  • イリア・マリニン(アメリカ): 8位「4回転の神」の異名を持ち、クワッドアクセル(4回転半)を含む超高難度構成を誇るも、今大会ではまさかの不調に終わりました。
  • ミハイル・シャイドロフ(カザフスタン):金メダル
    母国の英雄デニス・テン選手の遺志を継ぐ存在として期待される存在。今大会では、冒頭の4回転ルッツを完璧に着氷させると、そこから4回転フリップを含む計5本の4回転ジャンプをすべてクリーンに成功させ、SP5位から驚異の追い上げで、自己ベストの更新と共に見事金メダルに輝きました。
  • 佐藤 駿(日本): 銅メダル
    共に切磋琢磨してきた同い年のライバル。圧倒的なジャンプ力を武器に、今大会でも表彰台を激しく争いました。

決戦のゆくえ

ショートプログラム(SP)で、鍵山選手は完璧な演技を披露し、100点を超えるスコアで首位のマリニン選手を猛追します。

迎えたフリースケーティング。鍵山選手は「トゥーランドット」の調べに乗せ、冒頭の4回転サルコウでは軸が若干ズレ、4回転フリップでは転倒するも、驚異の粘りで持ち直し、ステップシークエンスで滑らかなエッジワークを華麗に決めて、観客を魅了しました。

フリーの得点は、176.99点にとどまったものの、SPとの合計で280.06点の高スコアで、見事銀メダルをつかみ取りました。


表彰台で、銅メダルの佐藤選手と健闘を称え合い、銀メダルを誇らしげに掲げた鍵山選手。その姿は、4年前の「期待の若手」ではなく、世界を牽引する「王者の風格」に満ちていました。

鍵山優真選手、銀メダル獲得、本当におめでとうございます!

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