卓球で活躍している選手は、両親が卓球を経験している環境が多い中で、早田ひな選手は両親ともに卓球とは無縁の環境で育ちました。元々右利きでしたが、4歳の時に加入した地元の卓球クラブで左手でラケットを握るようになり、今のスタイルになりました。
同年代には平野美宇、伊藤美誠選手がおり、女子卓球の黄金世代を支える一人となった早田ひな選手。2024年全日本選手権も優勝し、パリ選考も堂々の1位通過と強さを見せつけました。
本記事では、早田ひな選手の強さと人柄について迫ります。
58年ぶり中国人を倒しての世界卓球のメダル
1時間14分25秒。2023年南アフリカで行われた世界卓球シングルス準々決勝にて、早田ひな選手は中国の王芸迪選手をセットカウント4-3で破り、58年ぶりに中国選手を倒してのメダル獲得を決めました。
最終セットは、10-10以降2点差をつけた時点で終了するセットで最終ポイント21-19、みている観客も息をすることを忘れるくらいの熱戦を繰り広げました。早ければ30分で試合が終わることもある事を考えると、どれだけ白熱した闘いが続いたのかわかります。
打倒中国がパリ選考ポイントに影響
2年ごとにシングルスの世界卓球は開催されますが、女子シングルスは1995年以降優勝、準優勝は全て中国選手と圧倒的な力で世界のトップに君臨しています。
五輪で上位に食い込むためには、必ず立ちはだかる壁となる中国を倒さなければいけません。日本卓球協会は、五輪の選考基準に中国選手トップ3を倒した場合の加点項目を入れ、打倒中国に向けて選手と協会一丸となって闘うことを決めました。
世界卓球において中国選手を倒して見事3位になった早田選手は、五輪選考でも一つ抜け出す形となりました。
「中国を倒すためにやってきた」その想いが形に
世界大会において、個人戦で中国選手を破ることは歴史的快挙といわれるほど衝撃的でした。特に王芸迪選手は、これまでに中国の主力選手として外国の選手に敗れたことがなく、試合が始まるまでは、会場の誰もが中国が勝つものと思ってみていたでしょう。
早田ひな選手は、試合後のインタビューでこのように答えています。
「中国選手に勝つまで本当に長い道のりで、苦しいことが多かった。自分が中国を超えるために、チームひなの皆さんに支えてもらいながら、頑張ってきた。この大舞台で勝つことが出来て、本当に嬉しい」
同年代の平野美宇選手や伊藤美誠選手が活躍する中で、悔しい気持ちになったことも多かったと想像できますが、それでも「最後は私が勝つ」と言い続けてきた早田選手は、今卓球日本女子のエースとして活躍しています。
まさに有言実行、言葉と態度はすでにパリでのメダル獲得を見据えて練習に励んでいます。
強烈なフォアハンドが武器
女子日本卓球界の日本代表の中で、一番高身長を誇る早田ひな選手。その体格を生かしたフォアドライブは、男子顔負けの回転量と勢いのある球で他選手を圧倒します。
身長に加えて、ラケットを持つ手のリーチが長いことを生かして、ボールの外側を捉えたカーブ系のフォアドライブを打てるのも早田選手の特徴です。なぜ、そのような力強いボールを打てるのでしょうか?その要因の一つには体幹の強さがあります。
力強いフォアドライブは体幹から
早田選手の長い手足から繰り出されるフォアハンドの威力に、相手が圧倒されるシーンを試合で何度も目にした方も多いかと思います。
フォアドライブで重要な要素の一つとして、「体幹の強さ」があります。体幹とは、全身から頭部と四肢を除いた胴体部分のことを指し、そこが安定していることで、足が地面から受けた力を無駄なく上半身、そしてラケットへ伝えることができます。
2023年南アフリカ大会の合間でトレーニングしている姿が公開されていますが、そこでは主に回旋系で安定感を高める体幹トレーニングを行っています。
アンチラテラルトレーニングで体幹を強化
卓球では前後左右の動きに加えて体勢が崩れた中でも打ち返すことが求められます。体勢が崩れた中でも、しっかりと球に力を伝えるためには体幹の力が必要です。
早田ひな選手のトレーニングの一つに、サイドプランクから腕を前後に動かすものがあります。腕を振っても、体幹を回旋せず安定した状態を保つようにするトレーニングです。
これはアンチラテラルトレーニングの一種で、動的な動きを加えながらも身体が側屈して力が逃げないように固定することを意識します。そうすることで、ケガのリスクを抑え、下半身から上半身への力の伝達力を高めることに繋がります。
動画内では、それ以外のトレーニングも行っていますが、動きを見る限り「体幹」の意識を強く持ちながら、それぞれの種目を行っていることが見てわかります。これが、早田選手が強烈なフォアドライブを打てる理由の一つです。
世界卓球2024でも強さを見せた早田ひな
日本卓球女子黄金世代が参加した世界卓球2024。その決勝戦の相手は絶対王者の中国でした。相手は世界ランク順のオーダーで組んできた中で、仮想パリの決勝戦として日本チームは試合に挑みました。
第1試合は張本選手が落とすも、第2試合で登場した早田選手は、陳夢選手に3-1のセットカウントで勝利、続く平野選手も王芸迪をストレートで下し、日本の実力を見せつけました。団体戦としては、最終的には負けてしまいましたが、日本が中国を超えられる姿を観客に想像させる試合となりました。
打倒中国と名言し、それに見合う行動を続けてきた早田ひな選手。これからの大舞台でも、中国を倒してメダルを獲得する姿が見られるはずです。ぜひ、期待をこめて応援しましょう!