2017年に行われた「バトルオブザイヤー」のU-15部門で小学6年生の時に優勝して以来、数々の大会で優勝し、ブレイクダンス界で注目を集める菱川一心選手(ダンサーネーム・ISSIN)。2024年2月のブレイキン・全日本選手権では、パリでの夏の国際大会に内定している「絶対王者」半井重幸選手をくだして優勝し、2024パリ代表の切符に一歩近づきました。
夏の国際大会に向けて、「気持ちはどんどん、どんどん強くなっている」と新技も披露して弾みをつけています。今回は、益々活躍に期待が高まる菱川一心選手について解説していきます。
菱川選手のバックグラウンド
菱川選手の原体験は小学2年生のとき。お姉さんが通うジャズダンス教室の体験会で踊ることに興味を持ち、お父さんと行ったブレイクダンス教室で「見た瞬間に、もうこれだ」と衝撃を覚えたそうです。
「人間が日常的にはしない動きばかり。『こんなことができるのか』の連続で、目が釘付けになった」と語っています。そこから、ブレイクダンスにのめり込んでいきます。
アゲインストの環境からの2017初優勝
練習環境も充実していなければ、大会もない、地方のブレイクダンスシーンの実情はかなり厳しい状態です。まだ実力も伴わない状態で、予選のわずか数分のパフォーマンスのために都市圏での大会に足を運ぶ。そんな逆境の中で、ひたむきに本気で練習をつづけてきました。
ときには、周囲から両親に「たかがダンスのために」と言われることもあったようですが、そんな中でも一生懸命に前へ進んでいきます。
そしてついに転機が訪れます。それが小学6年生のときの「バトルオブザイヤー」。15歳以下部門で初優勝を果たしました。この経験をきっかけに観客のひきつけ方をつかみ、モチベーション、練習の質も大きく変化したそうです。そしてそこから快進撃がはじまります!
初優勝からの大会成果
初優勝からのISSIN選手の快進撃はすさまじいです。以下の履歴をご覧ください。
- 2017年
- Battle Of The Year U-15 BREAKING SOLO BATTLE 2017 優勝
- 2018年
- Street Fighter 2018 1vs1 優勝
- 2019年
- FULL THROTTLE FINAL U15 1vs1 準優勝
- Bto2 2019 U18 1vs1 優勝
- NOTHING2LOOZ Japan 2019 1vs1 準優勝
- Be.b-boy U18 2019 CREW BATTLE 優勝
- 2022年
- THE JAM NARUTO 2022 1vs1 優勝
- Red Bull BC One Japan Cypher 2022 優勝
- Red Bull BC One World Final 2022(米国) TOP4
- 2023年
- 杭州アジア大会/WDSF ASIAN GAMES(中国)男子ブレイキン TOP4
- Red Bull BC One World Final 2023(フランス) TOP4
- BfG World Series in Hong Kong 2023(香港) 優勝
凄いですよね!
厳しい状況の中から結果を出してきた菱川選手の国際的な活躍は、今後、都市部のみならず地方でのブレイクダンスシーンにも大きな影響がありそうです!
持ち味は「爆発力」
菱川選手の持ち味はなんといっても、原体験に由来する「誰にも真似できない自分だけの動き」を追い求めるオリジナリティです!
以下の動画での「5:13~ パワームーブでのつかみ」「6:13~ フットワークのコンボ」なんかは、高い難易度を保ちつつ、世界の舞台で戦えるオリジナリティや内容の濃さ、組み合わせの妙で自分だけの動きを作っています。
フィジカルを見直しさらなる高みへ
爆発力を武器に、世界大会で結果をだしてきた菱川選手ですが、2023年9月の世界選手権でまさかの二回戦敗退をしてしまいます。2024年パリへのプレッシャーと同時に、世界トップ選手と戦ううえで、フィジカル面とスタミナ面での課題を痛感したそうです。
持ち味であるダイナミックな動きは、実は普通の選手より多くの体力を消費していたため、
- ・ダイナミックな動きを終盤まで出すためのスタミナ作りと強い体作り
- ・負担のかからない体の使い方を憶える
の2点を課題として、サッカー日本代表の堂安律選手などと同じトレーナーのもとでフィジカルトレーニングに取り組みました。そしてなんと2023年12月香港での大会で優勝します!
「やればやるほどどんどんと胸が開くようになって、背中が動くようになる。そうなるだけで実際に体が動くようになっている。すごく効果が出ているんだなというのは感じた」と、本人が語る程、トレーニングでのレベルアップを感じているそうです。
新技「足持ち肩キャッチ」で全日本選手権初優勝
そしてついに、待望の瞬間が訪れます。
準決勝で、大会3連覇中でパリに内定しているShigekix選手に対し、独創的な新技の「足持ち肩キャッチ」で見事決勝進出。この大舞台で成功率が低く、「怖い」と語っていた技をくりだし、夏のパリで勝つために「ここで勝たないといけない」と成功させるメンタル!凄すぎます。
さらに決勝でも、独創性での高い評価を得てHiro10選手を破り、念願の全日本選手権で初優勝!パリでの国際大会に向けてリードしました!
どんなパフォーマンスで優勝したのか早速決勝戦を見てみましょう。
いかがでしょうか?
スピードと正確性に独創的な部分が十分に発揮された素晴らしいダンスでしたね。これからのさらなる活躍に期待するとともに、夏が楽しみにもなってきます。
今後にさらに期待
ISSIN選手の斬新なムーブを産み出す「改革」と、それを支える磨き上げたテクニックが、競技の限界を押し広げていくのが楽しみです。また、活躍にともなって多くの若いダンサーが生まれ、素晴らしいプレイヤーがでてくることも期待できます。これからの活躍に益々注目の選手です!