日本の卓球界で知らない人はいないほどの実力の持ち主である、張本智和選手。わずか14歳10ヶ月にして世界ランクトップ10入りを果たし、世界に名を轟かせました。パリ代表選考においても断トツの1位でパリ出場を決め、名実共に日本を代表する卓球選手です。
そんな張本選手は「五輪で金メダルを」と焦点を五輪にあてて日々練習に励んでいます。今回は、次大会で活躍必至の張本智和選手について解説していきます。
張本選手のチキータは世界レベル
攻撃的なバックハンドレシーブの技をチキータといいますが、張本選手が繰り出すチキータは世界レベルだと、金メダリストの水谷隼さんは解説しています。張本選手の代名詞であるチキータですが、ほかの選手と比べて何が優れているのでしょうか。
張本選手のチキータのシーンはこちら(動画0:10に最初のチキータ)
その点について、水谷隼さんはチキータの種類について次のように言及しています。
4種類のチキータを使いわける張本選手
張本選手のチキータには、大きく分けて4種類のチキータがあります。これらを巧みに使いこなすからこそ、世界レベルの卓球が出来ています。
- 速いチキータ
- 遅いチキータ
- 回転がかかったチキータ
- サイドスピンがかかったチキータ
チキータの緩急を使いこなすことによって、返球までの姿勢を整える役割を果たし、チェンジオブペースにより相手のミスを誘うことに繋がります。時速100km超といわれる卓球ボールを、瞬時に判断し打ち分けることが出来ることが、張本選手の強みです。
遅いボールを打つことに対して、打ち返される危険性を考えがちです。しかし張本選手の場合は打たれたとしても、そこから体勢を立て直しているので、次の展開でも点数が取れる二段構えの構成でチキータを打ち込んでいるのです。
世界最強の中国から2勝 頂点が見えた日
2022年10月8日に行われた世界卓球団体戦。日本のエース水谷隼さんが抜けて、代わりに日本を代表する選手となった張本智和選手。当時世界ランク4位に位置していた張本選手は、トップ3の中国選手と団体戦準決勝で対決しました。
苦手とする王楚欽を破る金星
まず、団体戦2人目で登場した張本選手は、過去の対戦成績を0勝4敗としている王楚欽と対戦しました。地元中国開催の世界卓球で、日本の圧倒的アウェイと不利な状況ながら、果敢に攻める姿勢をみせ、3-1のセットで苦手とする王楚欽との対決を制しました。
当時の試合の状況を張本選手は、このように語っています。
「中国の一人でも誰か崩せば、他の選手のメンタルにも影響が出るのではないか。いつも以上に思い切っていこうという気持ちで試合に入りました」
王者中国のエース世界ランク1位樊振東の底力
続いて張本選手が対戦したのは、世界ランク1位で2021年世界卓球シングルス金メダルを取った樊振東選手です。世界最強といわれるバックハンドを武器に、トップレベルの反射能力と予測で相手を翻弄する強敵でした。
「すでに1勝しており、体も温まってきていたのでラリーでも引けを取らないほど、出だしから良い状態だった」
このように張本選手が語るように、フォアとバックハンドでのラリーで樊振東選手を上回り、第一セットを11-7で取りました。黙ってやられる訳にはいかない中国は、2セット目から王者の意地を捨てて、ラリーからサーブで張本選手のチキータを封じる作戦に出ました。
33回のラリーから得たものは張本選手の「覚悟」だった
戦い方を変えてきた中国に対して、なかなか1セット目で打ち勝っていたラリーの展開に持ち込めない張本選手は、その後2セットを立て続けに落としてしまい、1-2のセットカウントで王手をかけられてしまいました。
迎えた第4セット、強烈なフォアハンドの打ち合いになりました。強烈なフォアハンドに対して、なんとか喰らいつく張本選手。トータル33回のラリーの末、最後はオーバーになり樊振東選手にポイントを取られることとなった場面を張本選手はこう振り返ります。
「取られてしまったけれど、あのプレーができたことに驚きがあった。自分からもう一回攻めなきゃ勝てない。」
この覚悟を持って、再びラリー戦に持ち込むと第4セットを取り返し、セットカウント2-2で最終ラウンドに持ち込みます。
「最後は死んでもチキータで行くしかない」
ベンチで監督や選手達と話しながら、張本選手は自身の得意技で攻めることを決めていました。
最終セット、得意のチキータレシーブで得点を重ね、11-9と見事世界ランク1位に勝利し、あの王者中国から一人で2勝するという快挙を成し遂げました。
この日、張本選手は中国の厚くそして高い壁を打ち破り、その先にある景色を見ることが出来ました。いずれ頂点決戦で闘う相手に対して、日本選手として手が届くことを示してくれた試合だったといえます。
卓球一家の張本選手 妹想いの一面も
張本選手は、宮城県仙台市に生まれ、両親ともに卓球選手の家庭に生まれ、幼いころから卓球に親しむ環境で育ちました。幼いころから頭角を表し、その象徴となったのが2018年に行われた全日本卓球選手権での優勝です。
当時14歳の張本選手は、全日本選手権シングルス・ジュニア部門では1セットも取られずに優勝、社会人までいる一般の部では、並みいる強豪を破り決勝に進出、最後は水谷隼選手を4-2で破り、史上最年少で優勝を果たしました。
幼少期から日本を代表選手として活躍し、現在は日本のエースとして闘う張本智和選手ですが、妹も卓球選手として活躍しており、2024年パリ団体代表にも選出されるほどの実力の持ち主です。
「自分が活躍するよりも妹が活躍する方が嬉しい」
そんなコメントを残している張本智和選手ですが、妹の張本美和選手のことをとても大切に想い、やさしいお兄ちゃんの側面を持っています。
ともに代表選手として活躍する二人なので、今後もインタビューやTVに一緒に出演する場面があると思いますが、試合とは違った智和選手が見れる場面があるかもしれませんね。
これからも活躍する張本選手にぜひ期待しましょう!
参考:あの時、実は。-世界最強軍団・中国から2点どり 張本智和-