全日本選手権ジュニアの部2連覇、世界ランキング8位(2024年5月時点)2024世界卓球釜山団体銀メダル、数々の実績を作っている現役高校生の張本美和選手。兄 智和選手は、名実ともに日本の卓球界を背負う人材ですが、妹の美和選手もここ数年で身長も伸び、卓球の力強さとともに存在感を増している急成長の逸材です。
この勢いのまま、今年8月に行われるパリ国際大会に向けてさらに成長するために、日々練習を重ねています。今回は、張本美和選手の強さの秘密についてみていきます。
幼い頃から両親の卓球クラブで技を磨く
宮城県仙台市出身、2008年生まれの16歳の張本美和選手は、2歳の時に卓球を始めました。両親は中国の卓球選手で、母は中国のナショナルチームに所属していた実績の持ち主です。そんな卓球界のサラブレッドとして生まれ育ちました。
幼いころから両親とともに練習に励んでいた美和選手ですが、兄 智和選手が先に表舞台に立ち、世間から注目を集めました。5歳上の兄の方がデビューは早かったのですが、父の宇さんは、「実は妹が、兄よりもスゴいかもしれない」というお話を周りにしていたそうです。
友達と一緒に外で遊んだ記憶は少なく、一日の多くの時間を卓球にあてた張本美和選手は、2023年からWTTコンテンダーチュニス女子シングルス優勝を筆頭に、大きな大会でベスト4以上の成績を数多く残しました。
この成績について、張本美和選手は次のように語っています。
「(この成績が出た)大きな理由はないですが、日々の積み重ねが今の成績に繋がっていると感じる。2023年から父がベンチコーチに入り、また母やチームの監督など支えて下さったみなさまのおかげで成長に繋がっている」
卓球が強いことを決して驕る訳でもなく、とても謙虚な発言をされている張本美和選手。それが結果的に周りの人から応援されて強くなった理由でもあるかもしれません。
正確性が強み 張本美和の1球の集中力
若干16歳にしてパリ団体3人目に選出された張本美和選手。選考会が始まった当初から上位にランクインしていたわけではなく、2023年の1年間でものすごい勢いで成長し、世界ランクをあげていきました。
学生など若い選手の卓球は、失敗を恐れない「勢い」で勝ちにくる卓球が多い中で、張本美和選手は、戦術から返球の仕方までしっかりとした卓球の組み立てを行ってくる、よりレベルの高い緻密な卓球を展開します。
中高生での卓球スタイルは、多くの場合ベンチコーチに色々と指示を仰ぎますが、張本美和選手は自分の頭で考えて卓球を組み立てる力がずば抜けており、それが急成長の一因となっていることは間違いありません。
また、張本美和選手は球のコントロールの良さが強みです。相手サーブを返す時のツッツキもネットギリギリに返球し、かつ回転量も多いボールを打ち分けます。以前、張本兄弟がフォアハンドとバックハンドの打ち方についてのインタビューを受けた際に、智和選手の打ち方に比べて、よりコントロールを意識したコメントが多くありました。
解説の平野早矢香さんも「あまり張本美和選手はミスをしない」と語るように、とても正確な卓球をしてくる印象があり、その1球1球が相手にプレッシャーを与える戦い方になっていると評価しています。
ダンシングクイーン!?試合前のダンスが話題に
現役女子高生で流行に敏感な年頃の張本美和選手は、K-POPが好きと公言しています。そんな張本選手をインターネットで検索すると、ダンスを踊っている動画が多く出てきます。試合前のストレッチや緊張する場面で、K-POPを聴きながら踊ることを習慣にしてます。
何を聴いて踊っているのか気になっている方も多かったかもしれません。張本選手のお気に入りはITZYやTWICEのようで、その音楽を聴いて口ずさみながら踊っている姿を会場でも見かけます。
試合前のダンスの効果とは?
アスリートは大事な試合になればなるほどプレッシャーは大きくなります。そのプレッシャーを跳ね除けて、普段通りの心境を保ち練習通りのプレーを出すために、独自のルーティンを設けている選手は多くいます。
例えば、野球のイチロー選手。バッターボックスに入った時に、バットを立てて投手の方向に出して構えるルーティンを持っています。イチロー選手は、このルーティンにはバットで境界線を引いて、投手の左方向に意識を向ける意味があると言っています。
最後のやる気スイッチをどこで入れるか、その目安となるものをルーティンによって獲得する目的があるとイチロー選手は語っていますが、張本美和選手にとってダンスを踊ることが試合への心の準備に当たる大事なルーティンであると考えられます。
身体の末端まで意識するダンスは非常に効果的
昨今では、リズムステップなど競技と異なる動きを取り入れる練習も出てきました。いつもの競技とは違う動きで、頭と身体を刺激し、感覚を研ぎ澄ませる効果があります。
特にダンスは、体の末端である手の指先や足がどこにあるのか?に自ずと意識を向けることになり、上手に踊るためには体の位置情報を正確に掴むこと必要があります。この位置情報のことをボディマッピングと言いますが、卓球の繊細なタッチや感覚を掴む上で役立っている可能性があります。
張本美和選手の踊りをみていると、とても柔らかく手指や体を使っていることがわかります。このダンスルーティンは、試合で力が入って硬くなってしまう心と体を柔らかく使うことに、効果があるのかもしれません。
いかがでしょうか?これからの活躍が楽しみな現役女子高生の張本美和選手。ぜひ皆さんも応援しましょう!