
2025年3月18・19日、東京ドームで25年ぶりとなるMLB日本開幕戦が開催されました。対戦カードは、2年連続MVPの大谷翔平選手や注目の山本由伸投手、さらに話題の佐々木朗希投手を擁するワールドシリーズ覇者・ロサンゼルス・ドジャースと、日本のスラッガー鈴木誠也選手が所属するシカゴ・カブス。日米を代表するスターが集結したこの試合は、多くのファンが注目する夢の対戦となりました。
そんな中、静かに強烈な存在感を放ったのが、カブスの左腕・今永昇太投手でした。世界最強のチームを相手に6回無失点の快投。今回はその投球術に迫ります!
「投げる哲学者」今永昇太投手とは?
今永投手は、2015年のドラフトで横浜DeNAベイスターズに入団。日本プロ野球時代から冷静で知的な投球スタイルに定評があり、「投げる哲学者」の異名で親しまれてきました。2024年からはMLB・シカゴ・カブスに移籍し、その独自の投球術でメジャーの舞台でも着実に結果を残しています。
特にフォーシーム(ストレート)を軸にしたスタイルは、球速に頼らずとも打者を封じる“技巧派”として注目されています。
なぜ今永投手のストレートは打たれないのか?
メジャーで活躍する山本由伸投手と比較してみると、両者の特徴の違いが見えてきます。山本投手は常時150キロ中盤、最速は157~158キロを計測する剛速球の持ち主。一方の今永投手は、最速で150キロを超えるものの、平均球速では150キロを下回ることもあります。
しかし、ストレートの被打率では、山本投手が.316なのに対し、今永投手は.115。数字だけを見ると、今永投手の方が明らかに打たれていないことがわかります。
この理由には、2つの要素があります。
① スピン量の多さが生む“伸び”
今永投手のフォーシームはスピン量が非常に多いのが特徴です。MLB平均が2,200回転前後と言われる中、山本投手が2,159回転に対し、今永投手は2,412回転という高数値を記録。
この高スピンのストレートは“浮き上がるような錯覚”を与え、打者のバットの下をくぐらせるような打ちづらさを生み出します。球速以上に伸びを感じさせる投球が、メジャーでも通用する要因の一つです。
② コースを突く技術の高さ
もう一つの特徴は投球コースの選び方です。山本投手が外角低めを中心に攻める一方で、今永投手はインハイ(打者の内角高め)に強気で投げ込むスタイル。ヒートマップからも、今永投手の方がコースを厳しく突けていることが分かります。
特にインハイは現代のアッパースイング主流の打者にとって“バットが出にくい”コース。そこを丁寧に突くことで、打者を凡打に抑えることができているのです。
常識を覆す「高めに投げる」スタイル
今永投手は「ファーストボールは高め。低めには絶対に投げない」と明言しています。野球界では、投手は低めを突くべきという“常識”が長らく信じられてきましたが、今永投手はそれを覆しました。「ファーストボール(ストレート)は高め」が持論で、高スピンの球質を最大限に活かすことで、今のMLB打者の特徴であるアッパースイングへの対策としています。
山本由伸投手との対比が面白い
山本投手は球威と制球力に加えて、落差の大きいフォークボールを武器にしたタイプ。対して今永投手は、キレのあるストレートを高めに集め、打者のタイミングを外して打ち取るタイプです。同じ日本人投手でありながら、それぞれ異なるアプローチでMLBに挑んでいる姿は、非常に興味深く、今後の両選手の成績にも注目していきましょう!