今回ご紹介する練習は、片腕だけを使った打撃練習です。バッティングでは両腕を使いますが、それぞれの腕には異なる役割があります。ただ両腕でバットを振るのではなく、この役割を意識することでより強いスイングができるようになるでしょう。
まず、打席に立った時に投手側を向いている腕、すなわち右打者の左腕、左打者の右腕は「引き手」と言われます。この腕は、文字通りバットを自分の身体に「引き寄せる」ことが主な役割です。つまり、トップからインパクトまでが管轄となります。
続いて、もう一方の腕を「押し手」と言います。この腕は、身体から離れる方向へ「押し出す」ことが役割です。つまり、インパクトからフォロースルーで力を発揮します。このように、常に両腕で握って振っているバットでも、段階によって主導権を持つべき腕が異なるのです。
ところで、「右手リード」「左手リード」という言葉を聞いたことはありますか。どんな選手も利き腕などが関係してどちらかの腕の力が強い状態でスイングするため、片腕が主導することになります。一般的には引き手側が強い場合が多いのですが、動画に登場する鳥谷選手は押し手が強い、つまり左手リードの選手の例です。では、どちらの腕が強い方が良いのでしょうか。
実は、人それぞれ適性が異なるため明確な答えはありません。
しかし、どちらかの腕に偏りすぎない、できるだけバランスがとれている方が良いということは言えるでしょう。さらに、先ほど説明したそれぞれの腕の役割を全うするためには、スイングの中でもリード腕を変える、つまりインパクトまでは引き手リード、フォロースルーでは押し手リードであることが理想です。
先述の元プロ野球選手である鳥谷選手もスイングの最後に左腕で押し込む力がとても強いものの、常に左腕が卓越しているわけではなく、全体としてバランスのとれたスイングをしています。
ちょうど50パーセントずつ力を入れるということは不可能ですが、できるだけバランスのとれたスイングができるように、また、それぞれの腕に力を入れるポイントを切り替えられるようになりたいものです。その練習として、動画のようにバットを片手で持ってスイングすることやティーバッティングをすることは効果的でしょう。それぞれどこで力を入れるのか、両手で持ったときと同じ軌道で振れているかを意識すれば有意義な練習になります。
ぜひ鳥谷選手のティーバッティングを参考に実施してみてください。