今回ご紹介する動画は、「球速が遅い投手の武器になる、速球スライダーの投げ方」についてです。
小柄な選手だと投げる球に角度がつきにくく、身体の使い方が上手な選手でないと球速も伸びづらいと思います。
そこで、小柄な選手でも数々のプロの打者を抑えてきた、元千葉ロッテマリーンズでドラフト1位の左腕、服部泰卓投手が紹介する、キャッチボールの極意とスライダーの投げ方についてご紹介いたします。
スライダーの特徴
まず、スライダーは打者のタイミングを狂わせるのに効果的な変化球であるということを理解しましょう。
スライダーは速球と同じような速度で投げられるため、速球とのコンビネーションで打者を混乱させることができるのです。
スライダーの変化は打者から見て予測しがたいものなので、習得することができれば空振りを誘うことができます。
ただ制御が難しく、コントロールを失いやすい傾向にもあります。また、スライダーがうまく変化しない場合、逆に打者にとって打ちやすい球となってしまいます。そのため握りや腕の振り方、イメージがスライダーを活かすポイントになってきます。
服部選手がスライダーを投げるときのイメージ
スポーツをするときに必要なもの。それはイメージです。服部選手のスライダーに近づくためには、まず服部選手がスライダーを投げる時のイメージを知る必要があります。
服部選手のスライダーはただ横に変化するのではありません。真っ直ぐな軌道から急に曲がっているのです。これは服部選手の「奥に曲がっていく」イメージから生まれたものだと考えられます。ポイントは奥側に強く押し込むこと。
これをイメージすることによって、打たれにくく、力強い球が真っ直ぐと軌道に乗っていきます。そしてギリギリまで軌道に乗せた後に曲げることで打たれにくいスライダーになっていくのです。
また、服部選手は左投手のため、左打者の顔面を狙って投げるそうです。それを意識することによって相手に差し迫るような怖いボールが打者に向かっていくのであると考えられます。
服部選手のスライダーはこのイメージから生まれたものと言っても過言ではありません。
服部選手のスライダーの特徴
服部選手のスライダーに隠されている秘密は一体何なのかを探っていきましょう。服部選手の投げるスライダーは、他の選手と比べても非常に優れた特徴を持っています。
まず、キレの良さ。
服部選手のスライダーは他の選手のスライダーよりも、鋭く、そして強く曲がるのです。そのため、打者にとっては非常に打ちにくい球となります。
次に特徴的なのが、スピードの変化です。
これもまた服部選手の武器なのですが、服部選手はスライダーの速度を自在に変えて打者のタイミングを狂わせることができるのです。キレの良さに加えて、スピードまで変化するため、打者は相当困惑するに違いありません。
そして服部選手はコントロールの良さも他の選手より際立っていました。スライダーを狙った場所に正確に投げることができるため、ストライクゾーンの隅を突くピッチングが可能になります。
これらの特徴により、服部選手のスライダーは他の選手と比べても非常に効果的であり、多くの打者を抑え、さまざまな場面で活躍してきました。
服部選手の投球フォーム
服部選手の投球フォームに重点を置いて、あの優れたスライダーを学んでいきましょう。
変化球を投げたとして、どんな球が来るか見抜かれてしまっては元も子もありません。打たれないようにするためには、打者に投げる球種を見分けさせない必要があります。
実は服部選手の投球フォームにコツが隠れているのです。
服部選手は、ボールから指先が離れる位置、いわゆるリリースポイントが安定しているのです。常に同じリリースポイントから投げることで球種を見抜きにくくさせています。
また、無駄のないスムーズな動きで肩や肘に負担を掛けずに力強い投球を実現しており、投球時のバランスが非常に良いのです。
これらを踏まえたうえで、服部選手の投球時の動画を以下からご覧ください。
服部選手流 キャッチボール
アップ:山なりキャッチボール
【目的】
スピン・コントロールを効かせる
【ポイント】
〇下半身の土台をしっかり作ってから、体重移動を意識して投げる
✕フォームを緩めて投げる
体重移動:地面(下)から上に上がってくるイメージ
距離が十分に離れ、力を入れた投球が必要になったら、徐々に投球の軌道を下げるように意識してください。(球威を上げていく際、相手の胸がボールの到着点ではなく、突き破るイメージ)
空振りを取れるスライダーの投げ方
【ボールの投げ方】
- フォーシームの握りのまま、指をかける縫い目を「C」の形にする
- 人差し指を中指につける
- ストレートより深く握る
- ストレートと同じ腕の振り方、リリースで投げる←1番スピンがかかる
緩い山なりの変化球は、空振りが取れない上に、投げた瞬間に変化球と分かってしまいます。ストレートに近いフォームで変化球を投げることで、空振りをとることが可能になります。
小柄で球速が出ない中で、打者を抑えられた理由
ボールがバットに当たる位置、タイミングを”何“でズラすのかという点に着目
- 緩急(←一般的に多い考え方)
- フォーム
- 球種
- その他
小柄で球速が伸びなかった服部選手は、タイミングを変化球でズラすことを選択。
以上が服部選手の武器であるスライダーの投げ方と、不利な中で戦っていく際の考え方についてです。
小柄=不利という概念を覆した服部選手の投球は、体型をマイナスに捉えるのではなく、個性の一つとしてオンリーワンの武器にしていることがわかりました。自分に合った最高の武器を見つけ、その武器を伸ばすことで打者を翻弄していきましょう。
それでは動画をご覧ください。
スライダーの練習方法
服部選手、前田選手のスライダーの秘密を踏まえた上で、スライダーの練習方法をご紹介します。
まずは握り方を入念にチェックしましょう。上記でご紹介した握り方を参考にして自らの握りをご確認ください。
次にリリースポイントのチェックもしてください。腕が肩の高さに達した瞬間にボールをリリースします。
ボールをリリースする際には手首を軽くひねるようにしましょう。それによってスピンがかかるので、手首の動きは重要です。
その後、実際に壁に向かってスライダーを投げる壁投げ練習を行い、リリースポイントとスピンを確認しましょう。また、上記で紹介した服部選手流の山なりキャッチボールを参考に、スライダーのコントロールを磨いてください。
そして実際に投げる練習をするときには、上記にもあった服部選手がスライダーを投げる時にイメージしている「奥に曲がっていく」ことを意識して奥側に強く押し込むように投げてください。
どんなスポーツでも言えることですが、体を動かすだけでは上達しません。自分の投球フォームをビデオで撮影し、リリースポイントや手首の動きを確認して自分の改善点を分析しましょう。
さらに、コーチやチームメイトからのフィードバックを受け、客観的に見た改善点も明らかにすると、より質の高い練習になるでしょう。
人差し指で切る
スライダーを得意とする選手と言えば、大阪府出身の前田健太選手。前田選手はMLBのデトロイト・タイガースに所属する右投手です。前田選手のスライダーのポイントも紹介しますので、右投げの人は参考にしてみてください。
多くの人が握った際には人差し指より中指に力を入れてリリースすることが多いと思いますが、前田選手はスライダーを投げる際、中指でなく人差し指で切るように意識しています。
リリースする際に、中指で切ってしまうと球から指が滑ってしまい、上手く力が伝わりません。しかし、人差し指に力を入れることによって、縫い目にかけた指が最後まで残るので、リリースしたときに球が手から右に出なくなります。
そうすることで投げた瞬間はストレートに見えるようなスライダーになります。そのため、打者に球種がバレることなく、打たれにくくなります。中指を意識して上手くいかなかった場合は、人差し指に力を入れる方法を試してみてください。