きのこ、食べてますか?炒め物やみそ汁など、どんな料理にも合わせることのできる万能食材です。なおかつ、ここ最近では腸活に良い食材としても注目されています。そんなきのこですが、種類も豊富で各々に違った栄養の特徴があるようなので詳しく説明していきます。
きのこの栄養
きのこの一番の特徴は低カロリーであり、食物繊維が豊富なことです。
きのこに含まれる食物繊維は「不溶性食物繊維」という、水に溶けにくい食物繊維です。不溶性食物繊維はよく噛んで食べないと飲み込むことができないので、料理に加えると良く噛むようになります。良く噛んで食べることで、満腹中枢が刺激され食べ過ぎ防止に役立ちますので、ダイエットにとてもおすすめな食品です。
また、不溶性食物繊維は腸内で膨らみ腸を刺激し、腸の蠕動運動が促進され、便の流れが良くなります。そんなきのこの不溶性食物繊維の中には、βグルカンという食物繊維があり、これはきのこや酵母の細胞壁を作り出している食物繊維できのこの歯ごたえを作っています。
さらに、マクロファージなどの免疫細胞の細胞膜に結合して活性化されるので、免疫力が上がります。そして、きのこにはビタミンDが豊富に含まれており、ビタミンDの働きはリンやカルシウムの吸収率を上げたり、免疫力を高めてくれます。
ビタミンDは、
- マクロファージを活性化
- ウイルスや細菌を破壊する物質であるカテリシジン、ディフェンシンを作り出すのを助ける
- 皮膚や腸に存在する上皮細胞であるタイトジャンクションを制御することで異物や病原体の侵入を防ぐ
- 病原体などに攻撃指令を出すタンパク質であるサイトカインを調節する働きがある
といった身体に欠かせない働きをしてくれます。
ここからは種類別でみていきます。
シイタケ
シイタケにはエリタデニンという成分があり、これはマッシュルームにも含まれています。
エリタデニンには以下の効果があります。
- 活性酸素の働きを良くする
- 血圧や血中コレステロール値を下げる
- 血流を良くする
これらは、血管に良い効果が期待できます。
そして、シイタケにはレンチナンという、βグルカンの一種も含まれています。レンチナンは免疫細胞を活性化させ、抗がん作用もあります。レンチナンは食物繊維ということで、身体に吸収されず胃や大腸などの消化器官で効果を発揮します。
また、エルゴチオネインというアミノ酸が含まれており、きのこ類などの菌類や一部の細菌のみが合成でき、シイタケの他にヒラタケにも含まれています。
エルゴチオネインの働きには、抗酸化作用がありシミやそばかす予防、神経細胞を活性酸素から守ることによる脳の病気予防などがあります。そしてシイタケにはグアニル酸という旨味成分があります。
ブナシメジ
ブナシメジにはオルニチンというアミノ酸が多く含まれており、オルニチンの効果は、肝臓の働きを高め、回復を早めてくれ、肝臓の解毒機能を高めてアルコールの分解を助けてくれます。
また、アンモニアを代謝する尿素回路の働きも高めてくれます。アンモニアは、タンパク質などを代謝した時に発生する老廃物で身体に有害であるため一度無害な要素に変えて体外へ排出します。ブナシメジはシジミの味噌汁との相性が良いのでおすすめです。
シジミにはオルニチン、タウリン、アラニン、メチオニン、グルタミンといった肝臓に良い成分が含まれており、味噌に含まれているレシチンの構成要素の一つであるコリンには肝機能を保護する作用があります。
マイタケ
マイタケは非常に栄養が豊富に含まれています。主にビタミン・ミネラルが豊富で、ビタミンD、B1、B2、ナイアシン、パントテン酸、ビオチン、カリウム、銅があります。特に体内でエネルギーを作り出すのを助けるビタミンB群が多いので、マイタケを食べると元気に活動できます。
また、マイタケに含まれるMDフランクションには、ヘルパーT細胞の増加やNK細胞を活性化させる働きが報告されています。つまり、がん予防になります。
免疫力を上げ、さらに糖尿病の予防にもなります。マイタケの成分の中にはα‐グルコシダーゼを阻害する働きがあり、これは糖質を分解してブドウ糖を生成する酵素です。そのおかげで血糖値の上昇を緩やかにする効果があり、糖尿病予防になります。
シミ・そばかすの原因であるメラニン色素はアミノ酸のチロシンがチロシナーゼという酵素によって反応することにより発生しますが、マイタケに含まれるチロシナーゼ阻害物質によりメラニン色素の発生を抑制する効果があるので、シミ・そばかす予防になります。
マイタケにも旨味成分であるグアニル酸は豊富に含まれています。
なめこ
なめこはぬるぬるしているのが特徴ですが、これはペクチンという水溶性食物繊維でできています。きのこの多くは不溶性食物繊維が多く、水溶性食物繊維が少ないのですがなめこは他のきのこと違い水溶性食物繊維が豊富です。
ペクチンにはお腹の中でゲル状になり糖を包み込む働きがあります。糖が包まれると糖の吸収がゆっくりになるので血糖値の上昇を抑えてくれます。
また、コレステロールを吸収してくれる働きもあり、血中コレステロールを低下させてくれます。さらに善玉菌の餌にもなるので、腸内環境を良くしてくれます。
エリンギ
エリンギには中性脂肪の吸収を制御する働きがあります。中性脂肪は最終的にリパーゼという分解酵素によって分解され吸収されますが、エリンギはリパーゼの働きを阻害することで脂質の吸収を制御してくれます。ラットを使った動物実験では肝臓の脂肪沈着が抑制されたという結果もわかっています。
えのき
えのきにはGABAが含まれています。GABAはアミノ酸の一種で正式にはγ‐アミノ酢酸といいます。
GABAにはリラックス効果があり、夜間やリラックスしている時に働く副交感神経を活発にしてくれます。そして血圧も低下させる効果もあります。
さらに、パントテン酸が含まれており、ストレスを和らげる副腎皮質ホルモンの材料になります。
ヒラタケ
ヒラタケにはシイタケと同じエルゴチオネインが含まれています。
キクラゲ
キクラゲの特徴は、食物繊維が豊富に含まれていることです。100gあたり5.2gで今回のきのこの中で一番多いです。
マツタケ
マツタケはマツタケオールという香り成分があり、食欲増進効果や消化促進効果があります。
マッシュルーム
マッシュルームにはグルタミン酸とグアニル酸が含まれており旨味成分があります。グルタミン酸はトマトよりも多く、グアニル酸はシイタケよりも多いです。旨味成分は2種類が合わさると相乗効果を発揮してくれるので、さらに美味しくなります。
グルタミン酸は身体に良い効果があります。
- アンモニアの解毒作用
- 利尿作用
- 脳の機能を活性化させる
- 脂肪の蓄積を抑える
- 血圧を下げる
- 天然保湿成分として、肌を綺麗に保ちます。
きのこの生食は危険!?
アメリカで韓国産のエノキダケに付着していたリステリア菌感染が原因で4人が死亡、30人が入院するということがありました。メーカーが自主回収を発表していたエノキダケを食べたことが原因と予測されています。感染者は17州で36件確認されており、妊婦の症例6件のうち2件は流産しています。
このリステリア菌は食中毒の中では非常にポピュラーな菌です。河川や土壌だけでなく、野生動物や家畜の糞尿など自然界に広く分布していて、工場の生産ラインに定着する事もある厄介な食中毒菌です。
実はきのこは人の手で育てられた工場産と自然産では姿形が異なるものが多いです。きのこは工場産でも自然産でも食中毒菌が付着している可能性がありますが、しっかりと加熱調理すれば問題ありません。
きのこは食中毒菌以外にも人間が食べると毒になるヤバい物質が含まれています。例えば生のエノキダケにはフラムトキシンというタンパク毒が含まれています。このフラムトキシンは人体に入るとO型赤血球の細胞膜を破壊して、全身に酸素を運ぶ役割を持つヘモグロビンを流出させてしまう溶血作用を持っています。これにより酸素をうまく供給することができず、心拍数の増加や重い貧血症状が引き起こされてしまいます。最悪、死亡する可能性もあります。
ただし、加熱さえすれば毒性が消えるので食べる時はしっかり加熱しましょう。
危険なきのこ
エノキダケ以外にも生食すると健康被害が起こるきのこがあります。
シイタケは生食すると椎茸皮膚炎という発疹がでる危険があります。BBQを行う機会の多い夏場に発症例が多いのでしっかり加熱されているか確認しましょう。
また、乾燥シイタケの戻し汁でも同様の症状がでるため火を入れていないシイタケを扱う時は注意が必要です。火が通っているかの判断方法は、傘の部分を下にして焼くときは、裏側に肉汁が出るまで焼けば、基本的に火が通っていると考えて問題ありません。
マイタケやエリンギには、青酸カリに代表される青酸化合物が含まれています。青酸化合物は一定量体内に取り込まれると中毒症状を起こし嘔吐やめまいを発症、重症化すると呼吸麻痺や昏睡に発展し最悪の場合、命を落とす危険もある成分です。
他にも加熱していないナメコやマツタケ、ヒラタケなど、食中毒やアレルギー症状が出たケースもあるから基本的にきのこは生食してはいけない食材です。
きのこ類の中で唯一生食できるのがマッシュルームです。マッシュルームは収穫から3~4日以内の新鮮なのもであれば生食可能で、触った時にしっかり固く、水気が滲んだり黒くなっていない物、傘が開いて亀裂が入っていない物を選びましょう。
きのこの食べ過ぎに注意
きのこは食物繊維が豊富に含まれていることは、先ほど説明しました。
食物繊維は過剰摂取すると胃腸や消化機能に負担をかけやすく、ひどい時は下痢や腹痛を引き起こすことがあります。特にお腹が弱い人がきのこや海藻類をドカ食いするのは絶対にNGです。
食物繊維の目安量は1日あたり男性20g以上、女性18g以上で、なかなかの量なので意識しないと摂取することができない量だと思います。適切な量を守りましょう。
シイタケに含まれるエリタデニンは過剰摂取すると血圧が下がりすぎてしまい最悪の場合、低血糖を起こします。基礎疾患のある人、高齢者は注意が必要です。
きのこ類にはチロシン、レナシンが含まれていて、ドーパミンやノルアドレナリンを生成する時に必要な物質で人間のやる気やモチベーションを上げてくれる大切な栄養素ですが、過剰摂取すると副作用として吐き気を引き起こします。体質によって許容量が異なります。
きのこに関するNG事項
実はきのこは水洗いしてはいけません。きのこは約90%が水でできているので、きのこを水で洗うと栄養素や風味まで流れていってしまいます。きのこに汚れがついていたらキッチンペーパーやハケで軽くはたくように掃除すれば十分です。
シイタケの軸を捨ててしまう人はいませんか?軸の部分にも傘と同じくらいの量の栄養素が含まれています。捨ててしまうと栄養素の半分を無駄にしてしまうので、捨てずに食べるようにしましょう。
きのこは調理の際、低い温度からゆっくり加熱することで旨味成分が倍増するので、美味しいだしが出ます。鍋などで食べる時は最初から入れるようにしましょう。
きのこの種類の栄養価の説明と、きのこを食べる時の注意点等を説明してきました。それぞれ身体に良い栄養が豊富に含まれており、かつ値段も比較的安価なものが多いです。非常に栄養価の高く手軽な万能食材なので、身体つくりをする人に欠かせない食材だと思います。
私も毎日いろいろな種類のきのこを食べるようにしていて、保存方法としては数種類のきのこを同じ袋に入れて冷凍保存しておき、その日に食べる分だけ使用しています。冷凍保存すると旨味成分が増しさらに美味しく食べることができるようです。
冷蔵庫で冷蔵保存するよりも、使わない物はすぐに冷凍保存しましょう。主に味噌汁に入れたり、鶏胸肉と一緒に炒めて食べることが多いです。
この記事を読んだあなたは、きのこの栄養を知り、注意点をしっかりと理解することができたと思います。これであなたの健康は守られるので、適度な運動と食生活を意識してより健康的に生活できるよう、是非きのこを有効活用してください。