たんぱく質には動物性たんぱく質と植物性たんぱく質の2種類に分けられます。
良質な植物性たんぱく質の摂取で筋肉・内臓機能を高めることができると言われています。
一方、普段の生活ではどうしても摂取しやすい主に肉や魚、卵、牛乳などの動物性たんぱく質に頼りがちです。動物性たんぱく質の摂り過ぎは、腎機能、肝機能を低下させ、骨の弱体化を起こす可能性があります。
これを防ぐために植物性たんぱく質の摂取がとても重要視されています。ただし植物性たんぱく質にも欠点があり、個々の食材では必須アミノ酸の含有量が少ないので、適当な植物性たんぱく質を摂取したとしても筋肥大には結びつきません。
本稿ではバランスよく植物性たんぱく質が摂取できるよう説明していきます。
植物性たんぱく質の重要性
なぜ、動物性たんぱく質だけでなく植物性たんぱく質の摂取が必要なのかというと3つポイントがあるので説明します。
1.骨の弱体化
冒頭で軽く説明していますが、動物性たんぱく質の過剰摂取により、カルシウムを骨形成に使うメカニズムが狂うことがわかっています。動物性たんぱく質を摂取することで、体内のPHが酸性に傾くため、この影響で体内のカルシウムが外に大量に排出されます。特に40歳以降の骨が減少していく年代の方は注意が必要です。
2.腎臓と肝臓への負担
体内のPHが酸性に傾くとカルシウムが体外へ大量に排出されるとわかりました。
このカルシウムが排出される過程として、腎臓を経由し尿として出されますため、ろ過される過程でカルシウムが腎臓で固まり、腎結石ができてしまうというメカニズムになっています。
また、たんぱく質は大部分が胃で消化され、その後小腸で吸収された後にアミノ酸となり筋肉に取り込まれます。この摂取量が多すぎると小腸で吸収されずに体内で窒素に変換されます。窒素は体内で毒性が強いアンモニアに変換され、その後は肝臓で毒素を中和し尿素に変えてこの尿素が腎臓に集められて最終的には尿として外に排出されるという過程をたどります。この過程で肝臓と腎臓に負担がかかります。
動物性たんぱく質のみの過剰摂取によって死亡リスクが上がるというデータが出ています。一方では、植物性たんぱく質に関しては、ガンや心疾患の発症リスクを下げるというデータがあり、腎臓、肝臓の健康を考えるのであれば、動物性たんぱく質を中心とした摂取ではなく、植物性たんぱく質も合わせた摂取プランが重要になります。
3.腸の負担
動物性たんぱく質と腸内環境の関係性について調査が行われ、動物性たんぱく質の過剰摂取というのは腸内細菌が減少し腸内環境が悪化することが明らかになっています。
腸はアミノ酸の吸収に関与しているとても重要な臓器であり、その他にも免疫システムの調整や脳機能との関連など筋肉を大きくするため、脳を正常に働かせるため、病気にかかりにくくするためにとても重要な臓器です。
筋肉を大きくする目的で摂取した動物性たんぱく質が、逆にたんぱく質の吸収を阻害していては元も子もありません。植物性たんぱく質も摂取することで骨の弱体化、腎臓肝臓、腸機能の低下を予防することができます。
次に良質な植物性たんぱく質と植物性プロテインパウダーについて説明していきます。
良質な植物性たんぱく質
1.大豆
大豆は茹でた場合、たんぱく質量が100gあたり14.8gと、植物性たんぱく質の中でも最もタンパク質量が多い食材になります。また、アミノ酸スコア吸収率などもお肉や魚よりも高く、唯一植物性たんぱく質の中で吸収率が高い食材でバリン、ロイシン、イソロイシンといった筋肉にとって必須のBCAAの含有量が高いのも大きな特徴です。
大豆たんぱく質と乳製たんぱく質の効果を比較した研究では、どちらも除脂肪体重、体脂肪量の変化は変わらないという結果が出ています。大豆は良質なたんぱく質であり血管のアンチエイジング作用が強いので、身体を健康に保ちながら筋肉をデカくするためには必ず必要になります。
2.枝豆
枝豆は一応野菜に分類されますが、枝豆は熟す前に収穫した大豆になります。100gあたり135kcalでたんぱく質量は11.7gと十分なたんぱく質量を有しています。
枝豆に含まれているビタミンB1、B2はエネルギーを作り出す栄養素になりますので、疲労回復に特化した植物性たんぱく質であり、十分なβカロテンも含まれており、抗酸化作用や免疫機能の向上が期待できます。
また、メチオニンも含まれているのでアルコールの分解を促し、肝機能向上に役立つことがわかっています。アルコールによってたんぱく質は分解されやすいですが、枝豆を食べることでアルコールを分解してくれるので、筋分解を予防しながらたんぱく質が補給できるという一石二鳥の植物性たんぱく質です。
3.アスパラガス
アスパラガスも野菜類に分類されています。アスパラガスは100gあたり22kcalで2.6gのたんぱく質量を有しています。
大豆や枝豆と比較するとたんぱく質量は少ないですが、アスパラガスに大量に含まれているアスパラギン酸というアミノ酸は新陳代謝を促したんぱく質の合成を高めることや疲労回復効果がありますので筋トレをしている方は必ず摂取したい食材です。
また、2011年の研究ではT細胞という免疫システムの要になる細胞の働きが強くなるというデータが出ており、花粉症やアレルギー症状のある人にとっては有効な食材と言えるでしょう。特にアスパラギン酸の影響はたんぱく質の合成を促し直接的に筋肥大を起こしやすくするので、アスパラギン酸の摂取目的でアスパラガスを意識して食べましょう。
4.アボカド
アボカドは森のバターと呼ばれるほど脂質が多い果物類に分類されます。100gあたり187kcalでたんぱく質量は2.5gとやはり総カロリーは高い傾向にありますが、必須アミノ酸のバランスは植物性たんぱく質の中でもトップクラスで、まんべんなく必須アミノ酸が含まれています。
脂質が多いので減量やダイエットをしている人は食べるのを控えやすい食材ですが、実は減量期にこそおすすめしたい食材です。
アボカドに含まれるアボカチンBという脂肪酸は、血糖値や糖代謝インスリン感受性を改善する効果があり、インスリン感受性を良好にさせることはたんぱく質の吸収を促進させるだけではなく、余計な脂質の吸収も予防することができるので太りにくい体質に変えることができます。
また、食物繊維が豊富なアボカドを食べることで空腹感を抑えることができると立証されています。
そして、体質の改善だけでなく2020年の研究ではアボカドに含まれる食物繊維や一価不飽和脂肪酸には神経を保護する作用があることが明らかになっており、アボカドを食べることで脳の注意機能が向上し集中力が上がりやすくなることもわかっています。目安としては一週間に2個アボカドを食べるようにしましょう。
5.バナナ
バナナはアボカドと同様に果物類の植物性たんぱく質に分類されます。バナナは100gあたり86kcalで、たんぱく質は1.1g、脂質は0.2g、糖質22.5gで構成されています。GI値は55で白米やパンなど代表的な炭水化物と比べるとGI値が低いのも大きな特徴です。GI値が低いほど急激なインスリンレベルの上昇を抑えることができるので、たんぱく質合成を維持しながら余計な脂質の吸収を予防することができます。
また、電解質が豊富に含まれており筋肉を収縮させるのになくてはならない栄養素になるので、食事制限をしている人にとってバナナを食べることは筋力低下を予防する一つの手段になります。
バナナは果糖とブドウ糖の割合が他の果物と比べて格段に良く、筋グリコーゲンに変換されやすくトレーニング時のエネルギーとしても使用することができます。
さらに栄養素が豊富なだけでなく、疲労感を軽減する作用もあり、筋分解の原因となる慢性炎症も予防できます。
オススメはグリーンバナナで、レジスタントスターチという発酵性食物繊維が62%も含まれています。レジスタントスターチとは、血中コレステロール値を減少させるという作用や腸の上皮細胞を増殖させる作用があり腸機能を向上させるさせますので、たんぱく質の吸収効率をあげて筋肥大に直接的に関与することがわかっています。
6.蕎麦
蕎麦は穀類に分類されます。100gあたり361kcal、たんぱく質量は12gです。必須アミノ酸のスコアが良好で、穀類に不足しがちなリジンも豊富に含まれています。
ルチンという成分が含まれており、血管を強くし血圧を下げる働きがありますので、血圧が気になる人は蕎麦を選びましょう。
注意点は小麦粉の量です。商品によってはつなぎのために小麦粉を大量に使用している場合が多いので消費表示を確認しましょう。
7.オートミール
オートミールは全粒穀物に分類されます。100gあたり390kcalでたんぱく質量は16.9g、糖質66g、食物繊維11g、マグネシウム177㎎、亜鉛4㎎、鉄分4.7㎎、カルシウム47㎎と低GIで豊富な栄養素を含む健康食になります。特にたんぱく質の含有量が多くたんぱく質と糖質のバランスがいいのも良いポイントです。
オートミールに関する数々の研究の結果では、LDLコレステロール、総コレステロールが大幅に減少したり、糖尿病患者の急激なインスリン反応を減少させ脂質の吸収を予防させたり、心血管系の機能を向上させ、死亡リスクを減少させるというデータがあります。
オートミールに含まれるβグルカンという水溶性食物繊維が心血管系に良い影響をもたらすことがわかっています。良質なたんぱく質で健康増進作用があるので、トレーニングをしている人には必ず摂取してほしい食材です。
しかし、唯一のデメリットがリン酸化合物の一種であるフィチン酸が大量に含まれており、オートミールの大量摂取は腸での吸収が追い付かない可能性があるので、主食ではなくおやつ感覚で食べると良いでしょう。
安全で良質な植物性プロテインパウダー
1.ソイプロテインアイソレート
大豆たんぱく質は筋肥大効果が確認されているとても優秀な植物性たんぱく質です。ソイプロテインアイソレートとは、重金属類がかなり少なく安全で良質な製品だと思います。
2.有機エンドウ豆プロテイン
エンドウ豆のプロテインパウダーになります。ある研究によると体組成の改善や筋力、筋肥大率、パフォーマンス向上率はホエイプロテインと遜色がないという結果が出ています。
3.ライスプロテイン
ライスプロテインも数は少ないですが、ホエイプロテインと同様の筋肥大効果の報告があります。良い点としては必須アミノ酸がまんべんなく含有されている点です。
4.コラーゲンぺプチド
コラーゲンププチドも数は少ないですが、筋肥大率向上とのデータがあり試してみる価値はありそうです。商品によってはウシコラーゲンペプチドをパウダーにしたもので、グラスフェッドな牛を使用しているということであれば、筋肉だけでなく骨の健康、肌の健康を考えている人におすすめです。
植物性・動物性 バランスが大事!
植物性たんぱく質の重要性とどんな食材をとればよいのかある程度理解できたと思います。あくまでも、動物性たんぱく質の「過剰摂取」が良くないことなので、動物性たんぱく質を「全く摂取しない」ことが身体に筋肥大に良いということではありません。
筋肥大の効果としては動物性たんぱく質の方が効率的であると考えています。最近はビーガンと呼ばれる人々もいますし、否定するつもりもありませんが、自身の体調に合わせた必要な判断をするようにできるのが一番いいと思います。
私も一日の食事の中で、なるべく動物性たんぱく質と植物性たんぱく質を上手く摂取できるようにしています。その中でもあえてたんぱく質を「植物性たんぱく質のみ」で摂取する日も設けて身体に変化を与える工夫をしていますが、一日だけでも内臓疲労の感じが軽くなる感じがあるので、調子が悪いと感じる人は試してみてほしいです。
特に過食気味になる増量期こそおすすめです。減量期でもリカバリーやリフレッシュの意味を込めて取り組んでも効果的だと思いますし、実践しています。個人的にはソイプロテインの摂取が一番効率的かと思いますが、エンドウ豆プロテイン、ライスプロテイン、コラーゲンペプチドもとても興味が沸いたので実践してみようと思います。皆さんも飲んでみたら感想を教えてください。