2023年の夏に北海道で行われたインターハイ。陸上競技1500m女子で、ケニア人留学生 カリバ・カロライン選手が高校国内国際新記録で優勝。第3位に日本人トップで入ったのは、1年生のドルーリー朱瑛理選手。見事、高校歴代5位の記録を叩き出しました。
ハイレベルな闘いを見せたこの2人の選手のフォームには大きな違いがあります。それは骨盤の角度。
外国人選手に多く見られるのは、骨盤が前傾している走り方。カロライン選手のフォームがまさにそうです。一方、ドルーリー選手は骨盤が前傾も後傾もしていないニュートラルなポジションにあります。
骨盤の角度で走り方にどのような違いが生まれるのでしょうか?今回はこの2人の選手のフォームを比較し、骨盤前傾する走り方のメリット・デメリットを解説します。
骨盤前傾フォームのメリット
骨盤を前傾したフォームでは以下のようなメリットがあります。
少ないエネルギーで重心を移動できる
骨盤を前傾することで、上半身の角度がかわります。そのため、接地場所が頭部の真下ではなく、少しだけ後ろになります。(動画3:12~)
重心を前に押し出すうえで、頭部よりも後ろに接地している方が、上体が前に倒れる力を利用しやすく、より少ない力で前への重心移動が可能となります。この点では骨盤前傾フォームの方が有利です。
地面に大きな力を加えることができる
足が離地する際の膝の角度を比較すると、骨盤前傾をしているカロライン選手の方が曲がっている角度が大きくなっています。(動画3:31~)その分、地面に大きな力を加えることが可能です。
この2点より、接地から離地の間に進む距離は骨盤がニュートラルな走り方よりも、骨盤が前傾している方が大きくなります。
ここまで聞くと、骨盤前傾の方が有利のように感じますが、デメリットもあります。
骨盤前傾フォームのデメリット
デメリットは大きく以下2つあります。
足が流れやすくなる
カロライン選手の走り方を見ると、離地の後すぐではなく、少し足が後方に流れてから膝を折りたたんで前方で運んでいます。カロライン選手のように、足を強く引き戻せる力がある選手であれば問題ありませんが、強く引き戻す力が弱いと足が流れてしまい、前への引き戻しが遅れてしまう可能性があります。
腰痛になる可能性
無理に骨盤前傾をしようとすると、背面の筋肉が過度な緊張状態になり腰痛を引き起こす可能性があります。
自身の体型や筋力に見合わない場合、骨盤前傾のフォームはタイムを縮めるどころか怪我のリスクを伴います。骨盤を前傾するかニュートラルなポジションで走るか、自身の体に合う方を選択しましょう。
それでは動画をご覧ください。