「ジョギング」という言葉の生みの親と言われている、アーサー・リディアードを知っていますか?
リディアードはニュージーランドのランナーでしたが、その名が知られたのは長距離の記録がスゴイといったことではなく、陸上のコーチとして独自に生み出したトレーニング理論がすごかったから。
リディアードの自宅から半径20km以内に住んでいた地元のランナー十数名を集めた小さなランニングクラブから、リディアードの指導でオリンピック選手をなんと5名も輩出し、うち2名が金メダル、1名が銅メダルを獲ったと言われています。
本稿では、そんなリディアードが10年以上かけて体系化したというトレーニング理論について解説します。
期分け(ピリオダイゼーション)
リディアードトレーニングは、「1週間で100マイル(160km)走れ」というとにかくたくさんの距離を踏むトレーニングとして有名になりました。しかし、リディアードトレーニングはただただ走るのではなく、その裏にある時系列が最も重要だとしています。
その時系列というのが、以下のような期分け(ピリオダイゼーション)のことです。
1.有酸素能力発達の走り込み、マラソン・コンディショニング:10週間
2.ヒル・トレーニング:4週間
3.無酸素インターバル・トレーニング:4週間
4.コーディネーション:4週間
5.テーパー(最終調整):2週間
それぞれについてポイントを説明します。
1.有酸素能力発達の走り込み、マラソン・コンディショニング:10週間
<ポイント>
・2時間以上走り続けることができる身体を作る
・週10時間以上走る、1回2時間以上のロングラン推奨
・自分のペースで走る
・大切なのは練習強度ではなく「継続時間」
ここはとにかく走り込んで2時間以上走り続けることができる身体を作る時期。走る距離ではなく継続時間が大切だとして「週に10時間走れ」と説いています。
特に2時間以上のロングランを推奨していて、その理由は、ミトコンドリアや毛細血管の発達が2時間継続した段階から急激に伸びる、2時間以上走るとスピードを担う「速筋」にも刺激が入るという研究結果があるためです。
2.ヒル・トレーニング:4週間
<ポイント>
・週に2回を4〜6週間行い、合計8〜12回行うのが理想
・速く駆け上がるのではなく大きなフォームで走る
これは坂道を使ったトレーニングです。これはスピード練習の下準備といった意味合いになります。坂道を速く駆け上がろうとせず、大きなフォームで走ることを意識します。
この時期も週のどこかで2時間のロングランは継続して入れていきます。
3.無酸素インターバル・トレーニング:4週間
<ポイント>
・少し息が上がるくらいのペースで走り、ジョギングで繋ぐ
・頑張り過ぎない
・大切なのはスピードではなくボリューム
・疾走区間は1分〜4分くらいで走れる200m〜1000m、ジョギングも含め45〜60分続ける、これを週に2〜3回、4〜5週間行う
・毎日連続して行わず、間48時間は空ける
リディアードが言う無酸素インターバル・トレーニングは、おそらく皆さんが考えているものと少し違います。リディアードが考えるここで大切なことは「頑張りすぎないこと」。
リディアードは、走るスピードは少し息が上がるくらいでよいとしています。大切なのはこれを「もう十分」と感じるまで続けること。つまり、スピードではなく、「ボリューム」を重視しています。
4.コーディネーション:4週間
<ポイント>
・レースに近い距離でタイムトライアルを行う+50mダッシュして50m流すということを繰り返すスピード強化のトレーニングも行う
・4〜8回を3~4週行う
ここではスピードを鍛えます。ただし、この期においても、有酸素能力維持のためロングジョグを取り入れます。
5.テーパー(最終調整):2週間
<ポイント>
・本番の3〜4日前まで2000mのタイムトライアルを行う
・どれだけ走れるのかを試すのではなく、気持ちよくリズムよく走ること
ここでは試合に向けて疲労を抜いていきながら、調子を上向きにするためのリズム練習を行います。
これら1〜5全て合わせると6か月間のピリオダイゼーションということになります。こういった期を分けてそれぞれに目的があると、焦りや迷いを生じることなく冷静にトレーニングを積んでいくことができます。是非このトレーニングサイクルを試してみてください!
動画内ではさらに詳しく説明されていますので、興味がある方は動画をご覧ください。