2017年に桐生祥秀選手が100mで10秒の壁を破ってから、サニブラウン・A・ハキーム選手、小池祐貴選手、山縣亮太選手もそれに続きました。
少し前は日本人選手が、短距離の世界の舞台で上位に食い込むなんて考え難かった時代。今は選手層も厚くなり、大きな期待を集める種目に変わりましたね。
世界レベルで活躍している選手が増えると、その競技や選手に注目が集まり、それを見た子どもたちがその選手に憧れて同じ道を目指し、じわじわと競技人口が増えるもの。今後、短距離選手を目指す子どもたちが増えていくと信じて、本稿では足が速くなる方法をお伝えします!
まずは小学校の体力測定で毎年測定される50m。これを速く走るためのコツを紹介します。50m走を速く走れるようになって、運動会でかっこいい姿を見せましょう!
走るフォームのポイント
まずは走る時のフォームをよくするために意識すべき点を確認していきましょう。
反射を味方に!踵は地面につかない!
走っている時、足裏のどの部分が地面についているかを確認しましょう。つま先だけか、踵を含めた足裏全体がついているか。
縄跳びをしている時の足の状態を想像してみて欲しいのですが、縄を跳んでいる時に踵は地面につきますか?うまく跳べている方は、踵が地面についていないのではないかと思います。
短距離の感覚もそれに似ています。そして、実はその方が「伸張反射」というものを使えるのです。
「伸張反射」とは、簡単に言うと、筋肉が急激に引き伸ばされた時、筋肉がちぎれないように勝手に筋肉を反対方向、つまり縮める方向に力を発揮することです。反射は脳で判断して行っている反応ではなく、脳で判断するよりも前に、身体が勝手に動く仕組み。私たちが普段行っている、脳で判断して脳から指令を出して身体を動かすという反応より速いのです!これが、「瞬発力」に繋がります。
この「伸張反射」を利用するために、踵はつかず、つま先だけで走ることを意識してみてください!
素早く足を振り下ろす!
動画の中では「太腿を上げる」という表現をしています。もちろんこの意識で足が速くなれば、その意識で問題ありません!しかし、意識しづらいという方は、反対の意識をしてみてください!
反対の意識とは、例えば、歩いている時、足を大きく前に“出したい”と思ったら、同側の腕を大きく後ろに“引く”ことを意識します。腕を大きく後ろに引くと自然と足が大きく前に出ます。
短距離走だと、右の太腿を速く高く上げようと思ったら、左の足を速く振り下ろします。ただ、地面との接地時間が長いとうまく足が回らないので、速く振り下ろしたら、すぐに反対の足を振り下ろすようにしましょう。
地面を足で押すという意識がある方は、一度その考えを頭の隅に追いやりましょう。うまく振り下ろせると、地面からの反発で勝手に足を跳ね返されるような感覚になるので、自然と接地時間は短くなっていくと思います。
感覚をつかむまでは少し難しいかもしれないので、「腿上げ」の動作を「腿下げ」の意識でやってみるのも有効です!是非試してみて下さい!
姿勢よく!胸を張って!
姿勢はやはり大切!前述した「伸張反射」を最大限活用するには、地面からの反発を無駄なく利用したいところ。そのためには、身体はまっすぐである必要があります。膝関節や股関節が曲がっていると、そこで力が逃げてしまいます。それを防ぐために、接地している足から頭までが一直線になっているか確認しながら練習しましょう!
それでは動画をご覧下さい!
参照元:【運動会で必ず1位】”確実に”足が速くなる3つの方法!!(足が速くなる方法)
50m走のタイムを縮めるポイントは「加速」
ここまでは走るフォームについての練習法でした。ではフォームがきれいになれば速く走れるかというと、これだけでは不十分なんです。タイムを縮めるために忘れてはいけないのが「加速」。ここからは加速について解説します。
加速の重要性
50m走はスタート直後の加速が非常に重要になります。100m走では50〜60m付近で最高速度に到達します。つまり、50m走は距離が短いため、加速して最高速度に到達するかどうかのところでゴールを迎えてしまうんです。
主に100m走では4つの局面に分けられます。
- スタート
- 加速疾走:スタート直後から最大速度に到達するまで
- 中間疾走:最大速度に達してからフィニッシュ動作直前まで
- フィニッシュ:フィニッシュ動作
それぞれ走り方のポイントが異なります。
50m走では「スタート」と「加速疾走」の2つの走り方を高めることがタイムを縮めるポイントになります。
はじめの10歩を前傾姿勢で
ではどのようにして加速力を高めればよいのでしょうか?
高い加速力を発揮するためには、どれだけ前方向に力を伝えられているかがポイントです。まずスタートしてから10歩目までをしっかり前傾姿勢で走れるようにしましょう!
100m走では10歩でだいたい20〜30mに達し、この区間が一次加速と言われています。50m走は前述した通り加速が非常に重要です。走る距離が短いからと言って、加速区間を短くすると急激な加速が必要となり、逆に加速の難易度が上がってしまったり、加速しきれずにゴールしてしまう可能性が高いため、100m走と同じように10歩の加速区間を確保しましょう。
それでは、はじめの10歩で前傾姿勢を保つための練習法を紹介します。
ウォールドリル(動画4:30~)
まずは直立した状態で前傾姿勢を保つ練習です。
<やり方>
- おへその高さくらいの段差の前に立つ
- 頭から足まで一直線の状態のまま前に倒れる
- 段差に両手をつき、身体を一直線にした状態が崩れないよう身体を支える
<ポイント>
③の手をついたタイミングでも身体を一直線に保つことで、コアを使って身体を支える練習になります。両脇をしめた状態で手をつくようにし、腕ではなく、お腹で身体を支える感覚が持てるようになるまで、繰り返し行いましょう!
姿勢を保つことができるようになったら、③の体勢のまま片脚ずつ持ち上げます。脚を動かしても身体がブレることなく、一直線をキープできるようにしましょう。片脚を持ち上げた際に、横から見て腰・お尻が後ろに引けてしまう方が多いです。腰が逃げないよう注意しましょう。
片脚持ち上げても体勢がキープできる方は、次にすばやく脚の入れ替えを行う練習をしましょう。この時、上に弾むのではなく、前へ力を保ったまま脚を入れ替えられるようにします。ポイントはつま先が下がらないようにすることです。
前への力を保てていれば、お腹と背中にグッと力が入っている感覚を得られると思います。この感覚がとても大切です。習得できるまで繰り返し行ってみてください!
片膝スタート(動画6:05~)
前傾姿勢から下半身の力を使って進む練習です。
<やり方>
- 脚を前後に開いて、後ろ脚の膝を地面につき、片膝立ちになる
※このとき後ろ脚の踵は上げておく - 背筋を伸ばして股関節をたたむようにして上半身を前に倒していく
- 姿勢を保つことができなくなる一歩手前でスタートをきる
- そのまま10~15歩程度走る
<ポイント>
スタートの時、前の膝が左右にブレないよう、膝は真っすぐ前を向いた状態で地面に力を伝えられるようにしましょう。
倒れながらスタート(動画7:00~)
最後は立った状態からのスタートです。
<やり方>
- 直立した状態から、足首はかためたまま身体を前に倒していく
※倒れる時もお尻が後ろに出たりせず頭から踵までは一直線をキープ - 転ぶ一歩手前で自然と脚が前に出たら、前傾姿勢のまま10~15歩走る
<ポイント>
ここでのポイントは足首です。足首を固定せずつま先が下がってしまうと、地面をひっかくような走り方になるため、脚を前に出すことが間に合わず転んでしまう可能性があります。足首を固めるという感覚にも注目しましょう。
流し
ここまでできたら、最後は流しを行います。前傾姿勢が自然ととれるようになっていればOKです!感覚が掴めるまで、数日間繰り返しこの練習法を試してみてください。
これで前傾姿勢での加速力がアップします。加速力がアップすれば50m走のタイムが縮むこと間違いなし!体力測定や運動会を楽しむために、ここで紹介した練習法を是非試してみてください。