ジムで筋トレ常連の男性を見ていると、やはり上半身の種目が好きな人が多いように感じます。胸や背中、そして肩回りや腕などが人気ですね。特に上腕二頭筋、力こぶを鍛えるトレーニングである、バーベルカールやダンベルカールは定番中の定番!
しかし!上腕二頭筋よりも、二の腕に位置する上腕三頭筋の方が、筋肉の体積が大きく、上腕二頭筋と比較すると約2倍にもなるって知ってましたか?つまり、上腕二頭筋を鍛えるよりも、上腕三頭筋を鍛えた方が腕が太くなる!
さらに、動画の中で非常に興味深い研究結果が紹介されています。全身をトレーニングした場合と、全身のトレーニングにプラスして腕のトレーニングをした場合を比較すると、上腕二頭筋の発達具合は変わらず、上腕三頭筋は筋肉が大きくなったそう!
これはどういうことかと言うと、腕の筋肉は胸や背中のトレーニングをする際に補助筋として動くので、胸や背中のトレーニングでもいっしょに鍛えられています。上腕二頭筋はそれだけでも十分だったということ。それに対し、上腕三頭筋は、胸や背中のトレーニングに加えて、上腕三頭筋メインのトレーニングを追加した方が大きくなる。つまり胸や背中のトレーニングだけでは効かせきれていないということです。
今回は、逞しい腕を手に入れるために、上腕三頭筋の解剖学の説明とトレーニングについてご紹介します!
上腕三頭筋が発達しない人の共通点
まずは、上腕三頭筋が発達しない人の共通点をおさえておきましょう!
1.負荷が関節にかかっている
当たり前ですが、筋肉ではなく関節に負荷がかかっていれば怪我をしますし、筋肉は成長しません。何が原因で負荷が関節にかかってしまうかというと、フォームが悪いからです。
関節に負担の少ない良いフォームと関節に負担がかかる悪いフォームを見比べるとすぐにわかります。ポイントとしては上腕が床と垂直になる状態を作り、肘を前方に動かすことなく動作しましょう。ちょっとした意識ですぐに改善できるので、上腕三頭筋を成長させるためにも怪我を防ぐためにも実践してみてください。
2.収縮しきれていない
意外と完全収縮しきれている人は少ないです。上腕三頭筋に限らず筋肉を成長させるために大切なことは、広い可動域で動作することです。ほんの数センチの違いですが侮らないようにしましょう。この数センチにかだわるかこだわらないかで刺激の入り方は全く違うレベルに変わります。しっかり収縮しきれているかを確認してみてください。
3.コンパウンド種目を行っていない
コンパウンド種目とは2つ以上の関節が関与する種目のことで、多関節種目とも呼びます。なぜコンパウンド種目を行っていないと上腕三頭筋が成長しないかというと高重量による
強い負荷を与えることができないからです。
一部種目を比較してみると以下になります。
- コンパウンド種目:ナローベンチプレス、デップス、オーバーヘッドプレス、プルオーバー
- アイソレーション種目:プレスダウン、キックバック
ナローベンチプレスは高重量を比較的安全に扱える種目なのでオススメです。もちろんプレスダウンやキックバックといったアイソレーション種目も大事ですが、これらは重量を扱うことが難しい種目なのでナローベンチプレスと比べると筋肉に強い刺激を与えにくいです。
4.高重量で鍛えていない
上腕三頭筋に限らずいえることですが、筋肥大をさせることにおいて高重量で鍛えることは避けては通れません。
勘違いしてしまいがちなのは、100㎏でナローベンチプレスをやっているから高重量というわけではなく、高重量とは正しいフォームで動作して6回以下しか行えないような重さのことです。
低重量でのトレーニングは難易度が高く、筋力向上効果も低いですが、高重量は筋力向上効果も高いし筋肥大もします。コンパウンド種目では高重量で行うようにするのがオススメです。
5.長頭を鍛えていない
上腕三頭筋が小さい、腕が太くならない人の原因は長頭の成長不足が大きいです。長頭をしっかりと成長させることができれば、男性であれば上腕40㎝はすぐに到達するでしょう。長頭の解剖学や鍛え方についてはのちほど詳しく説明します。
上腕三頭筋を発達させたいのであれば、長頭を優先的にしっかりと鍛えましょう。
上腕三頭筋の解剖学
上腕三頭筋は腕の後ろ側にある筋肉で、腕の筋肉の中でも大きな割合を占めます。上腕三頭筋とは、三つの頭の筋肉と書くので三つの筋に分かれており、長頭、外側頭、内側頭、それぞれに特徴があります。
上腕三頭筋:長頭
長頭は上腕三頭筋の中で一番長い筋肉です。
起始部は肩甲骨の関節窩結節から肘頭に付着しています。また、2つの関節が関わり、2つの関節を跨ぐので、2関節筋と呼びます。
長頭の作用は、前にある腕を後ろに引く動作の肩関節の伸展、曲がった肘を伸ばす動作の肘関節の伸展の2つです。
上腕三頭筋:外側頭
外側という名前から全体的に少し外側にあります。
起始部は上腕骨近位背側から肘頭に付着します。上腕骨近位というのは、身体の上、体幹部に近い部分のことを近位、背側は背中側のことを言います。
補足ですが、近位の反対は遠位で、体幹に遠い部位、背側の反対は腹側と言います。外側頭の作用は、長頭と同じく曲がった肘を伸ばす動作の肘関節の伸展です。
上腕三頭筋:内側頭
内側頭は少し内側にあります。
起始部は上腕骨背側中心部付近から肘頭に付着しています。内側頭は、長頭、外側頭が上から被さっているので、一番深い部分に存在しています。
内側頭の作用は、長頭、外側頭と同じく曲がったヒジを伸ばす動作の肘関節の伸展です。また、内側頭には肘のインピンジメントを防ぐ役割もあります。肘のインピンジメントは肘の後ろ側で起こりやすく、たまに肘を伸ばした時に肘の後ろに何か挟まったり噛んだような痛みが生じる方がいると思います。肘の後ろの部分には関節包と脂肪帯というのがあり、それ
らを上手く動かす役割を内側頭が担っています。
筋肉の形状
上腕三頭筋は羽状筋という性質の筋肉です。羽状筋は、高重量、低回数のトレーニングに反応しやすい筋肉と呼ばれています。上腕三頭筋は羽状筋で、上腕二頭筋は紡錘状筋なので、逆の性質を持っています。
長頭がポイント
先ほども説明しましたが、上腕三頭筋は、肘を伸ばすという作用があります。この作用はご存じの人も多いと思います。「キックバック」という種目は、この肘を伸ばすという動作に負荷をつけたトレーニングですね。
ただ、上腕三頭筋は文字通り、頭が3つに分かれており、内側頭・外側頭・長頭がありますが、肘を伸ばすという動作だけでは、長頭にあまり刺激が入らないんです。この長頭に刺激をどれだけ入れられるかがポイントになります!
長頭に刺激をいれようと思うと、肩関節の伸展という動きが必要になります。腕を肩より後ろに下げる動きで刺激を入れられますので、肘の伸展のトレーニングだけ行っていた人は後述する種目で新しい刺激を体験してください!
プレス系からプルオーバー系、エクステンション系へ
長頭に刺激をいれることがポイントというお話をしましたが、その前に1つ頭に入れておいて欲しい注意点があります。それは長頭を狙ったトレーニングは肘を痛めやすいという点。ちなみに私の周りには肩を痛めた人もいます。関節が不安定な状態で行うと危険ですので、実施方法をしっかり確認してから行いましょう。
トレーニングの順番としては、プレス系でしっかり上半身を温めたのちに、プルオーバー系・エクステンション系をいれると良いです!
ダンベルプルオーバーエクステンション
これは長頭に刺激を入れられる種目!(動画8:08~)
やり方は、
- ベンチに仰向けになり、肘を曲げてダンベルを顔の横までもってくる
- 肘を上へ移動させてプルオーバーの動き
- 肘を下ろしダンベルを顔の横まで戻す
- 肘の伸ばす
この①〜④をスムーズに行う種目です。
ダンベルが顔から遠のく方向に動くと、肘にも肩にも負担がかかりケガをするリスクが高くなります。肘と肩の動きは上下のみ。脇が開かないよう十分注意しましょう!
ダンベルプルオーバーを行うメリットとしては、肩関節屈曲から伸展の動きがあるので、屈曲時に上腕三頭筋長頭にストレッチがかかり、伸展の動作で上腕三頭筋長頭が収縮するという上腕三頭筋長頭を鍛えるにはぴったりの種目です。
また、ダンベルを操作する時に胸を張るという動作が必要になるので、胸椎進展という動きの練習にもなります。身体の硬い人は、胸郭周りの動きを出す練習としてもオススメです!
それでは動画をご覧ください。
ケーブルプッシュダウン
ケーブルを使用する種目で、上から下におろしていく種目です。この種目は主に肘関節の伸展動作になります。肘関節の伸展は、上腕三頭筋の長頭、外側頭、内側頭全ての作用に関わってくるので非常に良い種目と言えます。
ケーブルの種目の性質上、上から下に引っ張るような動きは、肘を伸ばしていくときが一番負荷が大きく、曲げていくときに負荷が小さくなります。なので肘関節の負担が少なく怪我の可能性も低く安全にトレーニングをすることができます。
スカルクラッシャー
スカルクラッシャーはバーベルをおでこに向かって下ろして、そこから肘を伸ばすという動きを繰り返す種目です。
メリットとしては、高重量が扱える種目なので羽状筋である上腕三頭筋のトレーニングとしてはとても理に適っていると思いますが、肘関節の負担が大きすぎるので個人的にはオススメできない種目です。
理由としては、スカルクラッシャーは単関節運動になるので、単関節運動で高重量を扱ってしまうと負担が肘に集中してしまい、怪我のリスクが上がります。筋肉を鍛えるという意味では良いと思うかもしれませんが、筋肉の性質と関節の強さは別なので、種目の選定は慎重に行いましょう。
オーバーヘッドプレス、ナローベンチプレス
どちらも多関節種目(コンパウンド種目)なので、最低でも肩と肘、2つの関節が動きますので、ひとつの関節に負担が集中することなくしっかりと身体全体で分散させることができ、スカルクラッシャーのように肘だけに大きなダメージが出るというリスクは少ないです。
オーバーヘッドプレス、ナローベンチプレスも肘関節の伸展が重要なので、羽状筋の性質を考えても高重量を扱えて関節の負担が少ないので非常によい種目だと思います。
ナローベンチプレスは上腕三頭筋の強化とベンチプレスの重量アップに貢献してくれます。ただ、普通のベンチプレスをすればよいというわけではなく、ナローベンチプレス特有の意識するポイントやミスについて説明します。
やり方は、
- ラックの高さは普通のベンチプレスよりも1段上を目安に設定する
- 重量は普通のベンチプレスのメインセット×60%程度を目安で行う
- 手幅は、肩幅もしくは少し広め
- グリップは強く握りこまずに、手のひらの根元に乗せるイメージ
- 脇を閉じ過ぎずに、みぞおち付近に下ろす
- もとの位置までバーベルを挙上する
ある程度自然な形で開いていると動作がしやすいです。バーは胸まで付けないようにしましょう。胸まで付けると肩の前側に過剰にストレッチ刺激がかかり、怪我の原因となります。拳上は、肘が伸びた時点で動作は終了し、肩が前に出るまで押し切らないようにしましょう。
動作のポイントは、ボトムで少し止めることです。なので、少し余裕のある重量設定ができるようにしましょう。8から10回を目安にします。
前腕は真っ直ぐに保ちましょう。バーを押すという動作は前腕が真っ直ぐでないとしっかり力を発揮することができません。
脚はベンチプレスと違いなるべく力を使わないようにしましょう。脚を上げるか、もしくはおろした状態でも踏んばらないように意識しましょう。
ベンチプレスとの違いとしては、ナローベンチプレスはベンチプレスよりも手幅が狭いので下ろす動きでより深く曲がります。手幅で変わる上腕三頭筋の動きを見ると肘が大きく曲げれば曲がるほど伸ばす力が必要になるので、より上腕三頭筋の動きが大きくなるというわけです。
次にオーバーヘッドプレスの説明をしていきます。主に肩のトレーニングとして取り入れられますが、上腕三頭筋のトレーニングとしても効果的です。
やり方は、
- バーの高さは鎖骨の位置を目安にセットする
- 手幅は、肩幅で前ならえをしてそこから手のひら1枚分外に持つ。
肩幅より少し広めにする。 - グリップはてのひらの根元にバーを当てて、親指をバーにかけ、拳が正面に向くように握る。この時、脇は閉じずにしっかりと開いておく。
- バーの真下に両足を設定し、膝を曲げ真下に潜り込み、肘をバーの真下に持っていくように前に出し、そのタイミングと同時に手首はしっかり寝かせる
この状態が上手くできると正面から見るとバーと手首がTになり、横から見ると前腕は垂直になっています。 - ラックアップした後は、後ろに少し下がり拳上する
- お尻、太モモ、内モモに力を入れ身体を安定させる。踵の内側を近づけるようにお尻の穴を締める
- 鎖骨を上方向に向けるように軽く胸を張る
- 後頭部を後方へ引っ張られるイメージで頭を引く。オーバーヘッドプレスは頭の動きがすごく大事です!上を向く動きではないので注意してください。
- 最後は腹圧をしっかり入れる
バーの拳上は、顔にあたるギリギリの位置で拳上し、おでこの高さにバーがきたら頭を前に出しバーの下に潜り込むように拳上します。バーの軌道は一直線になるようにしてください。頭を前に動かす目安としては、万歳をした時に腕で耳が隠れる程度を目安にしてください。
動きの流れをまとめると、顔スレスレを通してバーを挙げていき、ヘディングするくらいのタイミングで頭を前に出し、バーの下に潜り込みます。挙げきった時に耳が腕で隠れる程度が目安です。
バーを降ろす時は、降ろしはじめと同時に頭を引いて垂直に降ろせる軌道を確保しましょう。降ろす時もバーと前腕は常に一直線になるように意識してください。喉付近まで降ろし動作を繰り返していきましょう。
上腕三頭筋の解剖学からトレーニングを紹介してきました。ただ闇雲にトレーニングをして追い込むというよりも、筋肉の構造、性質を理解することで効率的に筋肉を成長させることができると思います。
また、肘を一度痛めてしまうと肩と同様に日常生活に支障が出易い部位なので、まずは怪我をしないようなトレーニングメニューを選択したり、エルボースリーブを使用するのもオススメです。
是非、上腕40㎝を目指して上腕三頭筋のトレーニングに取り組んでください。