
34年ぶりに東京で開催された世界陸上。9日間にわたり熱い闘いが繰り広げられました。これまで陸上競技を見たことがなかった人も、これを機に興味を持ったのではないでしょうか。
その中で注目したいのは、男子400m走で、日本人過去最高の6位に入賞し、日本記録を更新した中島佑気ジョセフ選手。ラスト100mの追い上げは、陸上ファンのみならず多くの人が声を出し、手に力が入った瞬間だったと思います。
本稿では、400mという種目の特徴、さらに練習のポイントについて解説します。
中島佑気ジョセフ選手とは?
まずは男子400m走 予選で中島選手が日本新記録を出した時のレースをご覧ください。
45秒前後かけて争う400m走。「短距離」と「中距離」の特性を併せ持つ種目で、100mや200mのような純粋なスプリント力に加え、最後までスピードを維持する持久力や効率的な走り方が求められます。
ナイジェリア人と日本人のハーフとして生まれ、東京で育った中島選手は、東洋大学から富士通へ進み、2022年に4×400リレーで世界選手権に出場、個人種目では2023年に初めて世界選手権に出場しています。2023年の世界陸上ではあと一歩のところで決勝進出を逃し、かなり悔しい思いをしたそうです。
その時に見えた課題は前半200mのスピード。前半のスピードをもっとあげないと他の選手についていけないと話しています。また、個人種目で初めて出た世界陸上は他の大会とは感覚が違ったそう。この2023年の経験が、今回の日本新記録、6位入賞に繋がっています。
当時のインタビュー動画もあわせてご覧ください。
400m走の練習 ウェーブ走
では、400m走を速く走るためにはどういう練習をしたらいいのでしょうか。
400mでは「スピード」と「効率的なエネルギー配分」が重要になります。スピードという点では、100mで速く走れる選手は大きな武器を持っているとされますが、その速さを400mで活かすためには「力を抜いて走る感覚」を身につけることが欠かせません。力が入りすぎると後半で疲労が一気に押し寄せ、ペースが落ちてしまいます。
そこで有効なのが「ウェーブ走」という練習法です。
たとえば120mを区切って、最初の40mを全力でダッシュ、次の40mでリラックス、最後の40mでもう一度加速するという流れです。これを繰り返すことで「力を入れる時」と「力を抜いて走る時」の感覚が養われます。
「力を抜いて走る時」もスピードをゆるめるのではなく、スピードをできるだけ保てるよう意識しましょう。余計なエネルギーロスを防ぎながらスピードを維持する技術が鍛えられます。
世界陸上で日本記録を更新した中島選手の走りは、多くのランナーに刺激を与えました。400mはスピードとスタミナ、さらに力を抜きながら効率的に走る技術が求められる奥深い種目です。400m走に興味を持つ人が増えること、そして今後も中島選手が活躍することを願っています!