2009年世界陸上ベルリン大会で、ジャマイカのウサイン・ボルト選手が9秒58の世界新記録を樹立しました。その後10年以上、9秒60の壁を破るものは未だに現れておらず、驚異的な記録だということが分かります。
そして、ウサイン・ボルト選手の前に世界記録を保持していたのは、これまたジャマイカのアサファ・パウエル選手。この2人の選手が世界記録を更新した回数は10回以上!
なぜこんなにジャマイカの選手は速いのか?今回はウサイン・ボルト選手、アサファ・パウエル選手を生み出したチームジャマイカの練習メニューについて紹介します。
100mは走らない
100mの選手であっても練習で走るのは300m。400mは「究極の無酸素運動」と言われることもありますが、300mも400mに比べると100m短いとは言えかなりきつい距離です。これを8本行うというのですから、かなりハードな練習であることが伺えます。
ちなみに、100m、200mで世界歴代2位の記録をもつヨハン・ブレーク選手は、2011年200m世界歴代2位となる19秒26で走った直前の練習では、300mを30秒台で走ったという逸話があるそうです。これは世界記録レベル。
このことからも、300mをトレーニングに取り入れるということは大きな意味を持つということですね。
ウエイトトレーニングは全て片足
チームジャマイカではウエイトトレーニングが積極的に取り入れられています。そして、ウエイトトレーニングで行っている種目は全て「片足」。スクワットなど両足で同時に身体を支える種目は行われておらず、片足スクワットや片足デッドリフトなどが取り入れられています。
これは、走りの運動に似せたトレーニングをすることで、走る動作に繋がりやすくするため。トレーニングの原理原則のうちの「特異性の原理」を意識した選択ということですね。
タイヤ引き
タイヤ引きはレース前半の加速を鍛えるために最も重要なトレーニングで、その効果は複数の論文でも報告されており、ジャマイカチームはこのタイヤ引きを男性は20kg、女性は10kgで20〜30m走るトレーニングを行っています。
前世界記録保持者のアサファ・パウエル選手は、20kgのそりをひいて20mを2.86秒で走ったことがあるそう。3秒を切るとかなり速い前半型の選手であると言えます。
1週間のトレーニングメニュー
・月曜日
AM:40m坂ダッシュ(45度のかなり急な角度の坂) × 5~8本・コアトレーニング
PM:プライオメトリックトレーニング(主にボックスジャンプ)・ウエイトトレーニング
・火曜日
AM:400m or 350m or 300m × 8本・コアトレーニング・メディシンボール投げ
PM:スプリントドリル
・水曜日
AM:150~250m坂ダッシュ(45度のかなり急な角度の坂) × 最大8本
PM:ウエイトトレーニング
・木曜日
AM:サーキットトレーニング・メディシンボール投げ
PM:スプリントドリル
・金曜日
AM:20~30mタイヤ引き・コアトレーニング
PM:プライオメトリックトレーニング・ウエイトトレーニング
・土曜日
AM:ウエイトトレーニング・200mテンポ走 × 最大12本
50〜100mの練習は基本的には行いません。この距離だとトップスピードに達してしまうためです。トップスピードに達するとハムストリングにかかる負荷が大きくなるため避けているのだそうです。
メニュー作りの参考にしてみてはいかがでしょうか?