
「バットではなく、模造刀を振る」遠目から見れば少し変わった練習に思えるかもしれません。しかし、横浜DeNAベイスターズの牧秀悟選手が自身初の30本塁打を達成した背景には、選手の身体操作への熱心なこだわりがありました。指導の現場ですぐに応用できる「再現性」の考え方を中心に、牧選手が取り入れるトレーニングを解説します!
故障離脱を乗り越え、自身初の30本塁打へ
2026年9月22日、横浜DeNAベイスターズの牧秀悟選手が中日戦で自身初となるシーズン30号本塁打を放ちました。この一発でDeNAは5年連続のCS進出を決めており、チームにとっても大きな節目となりました。
今季は右太もも裏の肉離れで約1カ月の長期離脱を体験しましたが、2026年9月24日時点での成績は以下のとおりです。
- 打率.286
- 本塁打30本(キャリアハイ)
- 打点75
- 長打率.580
30本塁打はこれまでの自己最多だった2023年の29本を上回る本数です。約1カ月の離脱期間がありましたが、キャリアハイを更新しクライマックスシリーズ出場に大きく貢献しました!
2023年WBCで侍ジャパンの世界一を経験し、その後も日本代表に継続的に選出されてきた牧選手。身長178cmの体格で日本を代表するスラッガーへ成長した背景には、地道な身体作りへのこだわりがありました。
長打力だけじゃない——攻守に共通する「再現性」とは
2026年は30本塁打に26二塁打も記録。単に遠くへ飛ばすのではなく、強い打球をコンスタントに生み出せることが成績にも表れています。
本職は二塁手。打球への反応だけでなく、併殺時の素早い捕球・送球やベースカバーなど、状況判断が求められるポジションです。2023年は全143試合で二塁を守り、打撃だけではなく守備でもチームの中心を担ってきました。
そんな攻守両面で高いレベルを維持するために牧選手が追い求めてきたのが、同じ動きを繰り返せる「再現性」です。そしてこの再現性を磨くために2026年の自主トレで取り入れたのが、今回紹介する「刀トレ」です!
バットではなく模造刀を振る!「刀トレ」の狙いと効果
「刀トレ」とは、蹲踞(そんきょ)の姿勢から模造刀を一気に振り下ろす種目です。トレーナーの発案によるもので、使用する模造刀はバットに近い重さでありながら細いため、身体の軸や軌道が乱れると左右にブレやすいのが特徴です。
バットでなく刀を使うことには、どんな狙いがあるのか。大きく2つのポイントを見ていきましょう。
ポイント①「違う動作だからこそ、悪いクセが出る」
「打てないときに素振りの回数だけ増やしても、同じクセが定着している」ということはありませんか。模造刀という前例のない道具を使うことで、それまでのバット操作のクセが一時リセットされ、動作をフラットな目で見直すことができます。
ポイント②「ブレが小さいとすぐ気づく」
バットは多少軌道がずれても球に当たることがあります。しかし細い刀は身体の軸がわずかに偏っただけでもブレてしまうため、「自分の身体が正しく動いているか」を即座に確認することができます。結果として、以下のポイントをチェックできます。
- ・身体の軸がブレていないか
- ・重心をスムーズに移動できているか
- ・手先だけで振っていないか
- ・毎回同じ動作を再現できているか
バットを何度も振るだけでは正しい動きが定着しにくいケースがあります。刀という「別の道具」で身体の動きを確認する発想は、指導の考え方にも応用できます。
応用できる「動作を整える」の考え方
牧選手の刀トレから学びたいのは、「刀を振れば打てるようになる」ということではありません。大切なのは、自分の身体が正しく動いているかを確認することです。
バッティングでは下半身で生み出した力を体幹、上半身、腕、そしてバットへと伝えていきます。どこかで軸が崩れれば、バットの軌道も安定しにくくなります。今打てない選手は素振りの回数を増やすよりも、まず動作の質を確認する視点が役立つでしょう。
ツールは刀でなくても構いません。牧選手は過去にもキックボクシングや木刀、琉球古武術の「サイ」などをトレーニングに取り入れてきました。これらに共通するのは、「野球とは違う動作を通じて、身体の使い方を客観的に見直す」という発想です。
以下のポイントを練習にも取り入れることがおすすめです!
- ・打てないとき、素振りの回数を増やす前に「軸はブレていないか」を確認する
- ・「重心移動はスムーズか」「同じ動きを繰り返せているか」を指導の言葉で細かく確認する
- ・必要な場面では、別の道具や動作を使って動きをリセットする
いよいよクライマックスシリーズも始まります。牧選手の活躍に注目したいです!
牧選手が刀トレーニングを行っている動画はこちらをチェックしてみてください。





