胸のトレーニングでダンベルフライを普段から取り入れている方は多いですよね。でもそれ、本当に胸に効いていますか?
ダンベルはバーベルよりもさらに自由度が増す道具です。自由度が増せば増すほど、動きの軌道が安定しにくくなります。そうすると怪我をするリスクが膨らむんです。一歩間違えると怪我をしてトレーニングを休まなくてはいけないという事態になりかねません。
安全に効率よくトレーニングを行うために、今回は絶対にやって欲しくないダンベルフライのやり方をお伝えします!
ダンベルフライの注意点
ダンベルフライで高重量を扱うのは本当にハイレベルな一部の人に限ります!
この種目はダンベルを下ろした時に胸にストレッチをしっかり感じることでより効果を発揮しますが、負荷が重すぎるとこのストレッチを十分に感じることができません。仮にストレッチを感じるところまでいったとしても戻せなくなり、変に耐えてしまったり、負荷に肩をもっていかれたりなどで怪我に繋がるリスクがかなり高いです。
軽い負荷から試すようにして、重量よりもフォームや胸に効いているかどうかを重視しましょう!
ダンベルを下ろした時、肘の上にダンベルがきていますか?
肘の上からダンベルが外にずれると肩の前の部分にかなり大きな負担がかかります。まれに肘を伸ばした状態でダンベルフライをしている人を見かけることがありますが、完全にアウトです!
肘の上にダンベルがあれば怪我しませんので、まずはダンベルプレスと同じような軌道で問題ありません。ダンベルの向きだけ変えるところからスタートしましょう。
そこから経験を重ねて、かなり慣れてきたら、ほんの少しだけ肘より外側に倒すようにしてみてください。さらに胸にストレッチがかかり強度が上がります!もう1度いいますが、これは”経験を積んで慣れてから”です!
肩がすくんだ状態でのダンベルフライもNGです!こうなるとどこに効いているのか不明、且つ肩に負担がかかりますので危険です!
背中側で肩甲骨を寄せる必要はありません。肩が自然と落ちた状態のまま行うようにしましょう。
ダンベルフライはダンベルを下ろしていく時にしっかり重さを感じる必要があります。筋が伸びていく状態で力を入れながら耐えるような動きを「ネガティブ動作」と言いますが、ダンベルフライはこのネガティブ動作を大切にして欲しいんです!
ですので、ダンベルを下ろす時は4〜5秒かけてゆっくり行いましょう。素早く下ろすと効果が薄れてしまいますので、トレーニングのスピードも意識してください!
いかがでしょうか?あてはまるものはありませんでしたか?筋トレはどれだけ重たい負荷を扱えるかの勝負ではありません。いかに効率よく効かせられるかが大切です。1つ1つ丁寧に確実に効かせるために参考にしてください!
腕がツラくないダンベルフライ
ダンベルフライをやっていると、大胸筋よりも先に肩が痛くなったり、前腕が疲れてしまう、大胸筋は元気なのに他が疲れてしまいトレーニングの狙いと違ってしまうというパターンが多いです。基本的な機能解剖を理解し、イメージを持つことでしっかりと大胸筋に効かせることができるのでやってみましょう。
まずは、機能解剖から。
●大胸筋
・起始(筋肉と骨との付着部 体幹側)
鎖骨部:鎖骨の内側½
胸肋部:胸骨及び第2~7肋軟骨の前面
腹部:腹直筋鞘前葉
・停止(筋肉と骨との付着部 末端側)
上腕骨の大結節稜
・作用(その筋肉が縮んだ時にどのように動くか)
鎖骨部:肩関節屈曲、水平屈曲、(内転、内旋)
胸肋部及び腹部:内転・水平屈曲、(内旋)
これらのすべてを覚えるのではなく、「どこからどこに筋肉がついているのか」をまずイメージしてみましょう。
次に、立った状態で大胸筋に収縮をかけます。そのまま収縮が抜けない位置まで腕を上に挙げていきましょう。その腕の高さが大胸筋に効かせることのできるダンベルフライの腕の位置です。その腕の高さにシートの高さを合わせると、腕のラインと床が垂直になっているはずです。
ポイントは、
- インクラインのポジションは三角筋にテンションがかからない位置にする
- 肩関節を外転させて肩フロントに入るか胸に入るかでシートの位置を調整する
これで、大胸筋に負荷がのり、肩フロントに負荷がのりにくい位置をみつけました。
次にフライの動作について。
ダンベルは手を離すと重力があるので必ず真下に落ちていきます。フライの動作をし、下からあげる場合、垂直方向に重力がかかるので腕や肩に負荷がのってしまいます。これが内側から負荷がかかると大胸筋に負荷がのり動作しやすいはずです。
このことから、フライの動作は重力の方向がおかしいのでダンベルフライは難易度が高いです。大胸筋に効かせるためには、最小限の肩フロントの負荷と重力に対して一番合っている方向で押していく必要があります。
ここで機能解剖を振り返ると、停止は「上腕骨の大結節稜」です。大胸筋と上腕骨の距離を離す、動作でいうと上腕骨が後ろに行くと大胸筋にストレッチをかけることができます。フライ動作は腕を広げがちになりますが、解剖の面からみると手幅を狭くし、身体の近くに落とすようにしてあげる方が大胸筋に効くことがわかります。
実践ポイント
- 手のひらにダンベルをのせるイメージ
- トップで腕の力を抜き、大胸筋の内側に力を入れる
- 大胸筋の収縮をかけてからブリッジを組む
- 適切なブリッジをつくるには「鼻呼吸」
- 身体の近くにダンベルを降ろす
- 動作的にはプレスと変わらないので、ストレッチ局面をゆっくりと行う
プレスはテンポよく、フライは丁寧にゆっくりと、を意識して行ってみましょう。
インクラインダンベルフライ
大胸筋は万遍なく鍛えるほどかっこよくなります。大胸筋上部を鍛えるにはインクラインの種目は必須です。ここまで、フラットのダンベルフライを中心に説明してきたので、インクラインダンベルフライを説明していきます。
まず、皆さん気になるベンチの角度から。30°にするか45°にするかで意見がわかれると思いますが、初心者の方には30°をオススメします。胸椎の柔軟性がある人は45°でもいいかもしれませんが、基本的にトレーニングをはじめたての人は身体の硬い人が8割です。30°の方が肩の負担も少なくできると思いますので30°で行うようにしましょう。
次に肩甲骨の使い方です。肩甲骨を寄せて、胸を突き出すようにしましょう。イメージは背中のトレーニング、特に上から引くラットプルダウンをしている時の肩甲骨の使い方です。その肩甲骨の位置でセットしていきます。
ダンベルフライはストレッチを優先する種目です。ストレッチをさせて筋繊維を伸ばすことで筋肥大に繋がります。デスクワーカーや身体が丸まっている人が行うことで、この動きで胸が開き姿勢の改善にも繋がります。
降ろす位置は大胸筋上部を鍛えるので、上部の筋繊維に沿った軌道にします。ダンベル→肘→手首→ダンベルが一直線上で筋繊維の延長線上にくるように動作していきましょう。
ダンベルを挙げる時は、肘から胸に寄せるイメージで挙げていきましょう。少し中級者向けになりますが、ストレッチを意識するので辛くなり挙げられなくなってきたら、プレスのようにように挙げてフライでストレッチさせるというようなテクニックもあります。
ダンベルフライは難易度が高いですが、正しくできるようになるととても良い種目です。
ストレッチをしっかり感じ取れる重量で、大胸筋が引きちぎれる感覚を味わってください。