FMVスポーツ

健大高崎・石田雄星、逆転2ランもあと一歩 ― 智辯和歌山が8回に再逆転、5年ぶり4度目の頂点へ

健大高崎・石田雄星、逆転2ランもあと一歩 ― 智辯和歌山が8回に再逆転、5年ぶり4度目の頂点へ

決勝戦
智辯和歌山(和歌山) 4-3 健大高崎(群馬)

2026年8月22日、第108回全国高校野球選手権大会決勝。健大高崎は2点を追う展開から5回に1点を返し、なおも8回には主将・石田 雄星(いしだ ゆうせい)が右翼席へ逆転2ランで試合をひっくり返す。だが智辯和歌山はその裏、川原 一将(かわはら しょう)のスクイズと暴投で再逆転し、4-3で逃げ切った智辯和歌山が5年ぶり4度目の夏の甲子園制覇を果たした。健大高崎は夏初優勝まで、あと1点届かなかった。

智辯和歌山は2回、川原の二塁打を起点に山下 晃平(やました こうへい)が適時三塁打。さらに長友 悠成(ながとも ゆうせい)の適時二塁打で2-0とした。健大高崎は5回、1年生・狩野 蓮義(かのう れんぎ)の適時二塁打で1点差。迎えた8回表、1死二塁から石田雄星が右翼席へ2ランを叩き込み3-2。健大高崎がついに逆転し、夏初優勝が一気に現実味を帯びた。

しかし8回裏、智辯和歌山は1死二、三塁から川原がスクイズ。投手・北田莉玖(きただ りく)のフィルダースチョイスも絡み3-3とすると、続く山下の打席で投手・石田 翔大(いしだ しょうた)が暴投。三塁走者が生還して4-3と再逆転した。9回は久葉 亮太(くば りょうた)が健大高崎の反撃を抑え、智辯和歌山が5年ぶり4度目の優勝を決めた。

健大高崎 ― 「1点を守り切る」強さで初の夏決勝へ

甲子園は八幡商に7-1東海大甲府に1-0佐野日大に4-1。準々決勝では有明との延長10回を石田雄星のサヨナラ内野安打で1-0、準決勝も天理を1-0で破った。決勝までの5試合でわずか2失点、自責点は1。石田は準決勝終了時点で打率.421、19打数8安打と攻撃でもチームを支えた。

智辯和歌山 ― 接戦から打撃戦まで制し、5年ぶりとなる決勝進出

甲子園では社を2-1敦賀気比を延長11回7-3、準々決勝では仙台育英を11-3、準決勝は横浜を7-1で撃破した。敦賀気比戦では川原一将が同点打と決勝打。横浜戦では楠本 龍生(くすもと ゆうせい)らが強力打線をけん引し、大会が進むにつれて攻撃力も上昇。接戦と打撃戦の双方に対応できる状態で決勝へ進んだ。

最大のハイライト ― 石田雄星の逆転弾から、わずか数分後の再逆転

決勝最大のハイライトは8回の攻防だ。健大高崎は1死二塁で石田雄星がカーブを捉え、右翼ポール際へ逆転2ラン。主将の一振りで3-2とし、学校史上初の夏制覇まであと6アウトとした。

ところが、最終的な勝敗を大きく動かしたのは、智辯和歌山・川原一将だった。3-2と逆転された直後の8回裏、1死二、三塁。川原は強振せずスクイズを選択し、三塁走者を生還させた。さらに健大高崎・北田のフィルダースチョイスで自身も出塁。この一打によって流れを完全に引き戻し、直後の暴投による決勝点へつなげた。歓喜から再逆転までが同じイニングに凝縮された、決勝戦を象徴する攻防となった。

健大高崎で光った3選手

石田 雄星(いしだ ゆうせい)

3年/背番号8/中堅手・主将

171センチ76キロ、右投げ左打ち。俊足、巧打、守備力を兼ね備え、2番打者として状況に応じた打撃ができる主将だ。準決勝まで打率.421、8安打。この決勝では8回1死二塁、カーブを右翼席へ運ぶ逆転2ラン。大会初本塁打を最も重要な場面で放ち、2-1から3-2へ試合をひっくり返した。

それでも、その一発を優勝の決定打にはできなかった。直後の守備で智辯和歌山に2点を奪い返され、9回の攻撃でも再々逆転には至らなかった。ただ、準々決勝・有明戦のサヨナラ打に続き、決勝でも土壇場で試合を動かした勝負強さは圧巻。健大高崎の夏初の決勝進出を象徴する主将だった。

狩野 蓮義(かのう れんぎ)

1年/背番号9/右翼手

166センチ78キロ、右投げ左打ちの1年生。大会を通じて下位打線を担い、積極的なスイングが持ち味。決勝では2点を追う5回1死三塁、初球を捉えて右翼へ適時二塁打。1-2とし、それまで智辯和歌山に傾いていた試合を接戦へ戻した。この一打があったからこそ、8回の石田の2ランが「逆転弾」になった。

一方、2回の守備では長友の適時二塁打の処理で悪送球も記録。打撃では貴重な1点を奪ったが、守備面では智辯和歌山に先制の流れを広げさせた形となった。それでも1年生で決勝のスタメンを任され、得点を生み出した経験は今後につながる大きな財産だろう。

石垣 聡志(いしはら そうし)

2年/背番号1/投手

182センチ83キロの右腕。準決勝まで20回1/3を投げ、自責点0、防御率0.00。準々決勝・有明戦では延長10回を完封するなど、健大高崎の強力投手陣を代表する存在だった。決勝でも先発を任されたが、2回に山下の三塁打、長友の二塁打を浴びて2失点。今大会初めて序盤から追う展開を強いられた。

最大の持ち味だった「先に点を与えない投球」を智辯和歌山に崩された点が痛かった。一方、その後は大量失点せず、北田らへつなげたことで石田雄星の逆転弾が生まれる展開まで試合を保った。敗戦の責任を一人で負う内容ではなく、最後まで1点差勝負に持ち込んだ投手陣の一角として存在感を示した。

智辯和歌山で光った3選手

川原 一将(かわはら しょう)

3年/背番号6/遊撃手

174センチ74キロ、右投げ両打ち。状況判断に優れ、強攻だけでなく小技でも得点に関われる遊撃手だ。2回には二塁打を放って先制点の走者となり、8回には1点を追う1死二、三塁でスクイズを成功。北田のフィルダースチョイスも誘い、一、三塁と好機を継続させた。打って走って小技を決め、決勝の重要局面に二度絡んだ。

敦賀気比戦でも8回の同点打、延長11回の勝ち越し打を放っており、大会を通じて終盤の勝負強さを発揮した。決勝では長打ではなくスクイズという形でチームに貢献。「自分が目立つ」より「1点を奪う」プレーを選択したことが、5年ぶりの日本一につながった。

山下 晃平(やました こうへい)

3年/背番号7/左翼手

180センチ85キロ、右投げ右打ち。下位打線ながら長打を期待できるパワーが魅力。2回1死二塁で高めの直球を捉え、中堅右への適時三塁打を放って先制点を奪った。8回には三振したものの、その投球が暴投となり三塁走者が生還。自身の打席中に決勝点が入り、得点場面に二度関与した。

8回の打席そのものは空振り三振で、打者として走者を返すことはできなかった。しかしその前の先制三塁打が試合の土台となり、終盤も相手バッテリーにプレッシャーをかける状況を作った。決勝という舞台で最初の1点を奪った価値は大きい。

長井 心海(ながい しんかい)

2年/背番号18/投手

決勝で大会初先発を任された2年生右腕。智辯和歌山はエース和気匠太ではなく長井を先発に起用する大胆な采配に出た。長井は5回を1失点にまとめ、健大高崎打線に試合序盤の主導権を渡さなかった。狩野に適時二塁打を許したものの、大崩れせずエースの和気 匠太(わき しょうた)へつなぎ、優勝への道筋を明確に引いてみせた。

石田の一発を「勝利」に変えられなかった健大高崎

健大高崎は石田雄星の逆転弾で理想的な展開を作ったが、その直後の守備を締め切れなかった。8回裏、スクイズへの対応でフィルダースチョイスとなり、さらに投手交代後には暴投で決勝点を献上。準々決勝・準決勝と1-0を守り切ってきた「ミスを出さない守備」が最後の最後で乱れた。逆に智辯和歌山は、長打だけに頼らずスクイズで同点を奪うなど、ここ一番での柔軟な戦術が結果的に勝利をもたらした。

戦評 ― 石田雄星の一振りは、“健大高崎の夏”を象徴した一打だった

8回表、石田雄星の打球が右翼席へ消えた瞬間、健大高崎は3-2。夏の全国制覇まで、あと6アウトだった。

準々決勝・有明戦では延長10回のサヨナラ内野安打。決勝では逆転2ラン。同じ主将が、大会の最も苦しい場面で二度もチームに勇気をもたらした。準決勝まで打率.421を記録していた巧打者が、最後の大舞台で大会初本塁打という最高の形の答えを叩きだした。

だが、試合はその一振りだけでは終わらなかった。あと一歩まで手繰り寄せた優勝の夢が、無常にも健大高崎の手からこぼれおちた。

健大高崎は夏初優勝を逃した ― それでも、1点差ゲームを何度も勝ち抜き、学校史上初の夏の決勝まで進み、最後は主将が逆転本塁打を放った。

敗戦という結果だけでは語れない。

石田雄星の一振りは、2026年夏の健大高崎が最後の最後まで「勝つ可能性」を手放さなかったことを象徴する、鮮烈な一発だった。

Return Top