FMVスポーツ

9回2死から同点、初の延長タイブレーク、そしてサヨナラ!― 鳴門渦潮 vs 八王子実践、甲子園が揺れた野球の醍醐味が集約した名勝負

9回2死から同点、初の延長タイブレーク、そしてサヨナラ!― 鳴門渦潮 vs 八王子実践、甲子園が揺れた野球の醍醐味が集約した名勝負

大会5日目 一回戦
鳴門渦潮(徳島) 2x-1 八王子実践(西東京)

2026年8月9日、第108回全国高校野球選手権大会1回戦で、徳島代表・鳴門渦潮西東京代表・八王子実践が激突した。1点を巡る投手戦は9回2死から劇的に動き、今大会初の延長タイブレークへ。最後は鳴門渦潮の2年生・山本飛佑雅がサヨナラ打を放ち、2-1で観衆を大いに沸かせた熱戦に終止符が打たれた。

鳴門渦潮は2回裏、西岡大誠の二塁打などから好機をつくり、荒井健太郎の二塁へのファウルフライで三塁走者が生還して先制。その後は両エースが得点を許さず1-0のまま終盤へ。八王子実践は9回表2死一、二塁、代打・金子侑樹がフルカウントから右前適時打を放って土壇場で1-1とした。しかし延長10回裏2死二、三塁、山本飛佑雅が左前へサヨナラ打。鳴門渦潮が2-1で勝利した。

両校の地方大会の勝ち上がり

八王子実践(西東京)

2回戦は桐朋を8-1の7回コールド。櫻泰成の適時打、適時三塁打など13安打で圧倒した。3回戦は多摩大聖ケ丘を12-0、5回コールド。4回戦の日大鶴ケ丘戦では3-7で迎えた9回に一挙6得点を奪う驚異の逆転劇で9-8。準々決勝は佼成学園に5-2、準決勝は明大八王子に4-2で勝利した。決勝は創価との投手戦を、7回の荒木孝介の中犠飛による1点だけで制し、春夏通じて初の甲子園出場をつかんだ。

特に象徴的だったのが日大鶴ケ丘戦。4点差で最終回を迎えながら6点を奪った粘りは、甲子園で9回2死から同点に追いついた勝負強さにもつながったといえる。決勝では奥山慎太郎から塚原翔太へつなぐ完封リレーで創価を1-0。接戦をものにする力を磨いて聖地へ乗り込んだ。

鳴門渦潮(徳島)

1回戦は徳島市立に4-1で逆転勝ち。2回戦は阿波の反撃を振り切って5-3。準々決勝では同じ鳴門市のライバル・鳴門を2-1のサヨナラで破った。準決勝の生光学園戦は3点差を追い付き、5-4で逆転勝ち。決勝では春のセンバツ出場校・阿南光を7-4で退け、2年ぶり9回目の夏の甲子園切符を獲得した。エース西村大輝を中心に、競り合いをことごとく制して徳島を勝ち抜いた。

地方大会では鳴門戦のサヨナラ、生光学園戦の3点差逆転など「終盤でも崩れない」強さが際立った。甲子園でも、その粘りが延長10回タイブレークのサヨナラ勝ちという形で再現された。

勝負を決めたシチュエーション

主役は鳴門渦潮の2年生・山本飛佑雅。延長10回裏、タイブレークで迎えた2死二、三塁。1ボールから塚原翔太の球を左前へ運び、甲子園初安打をそのままサヨナラ決勝打とした。八王子実践が10回表を無得点で終えた直後という重圧のかかる場面で、上級生主体のチームを2年生が救った一打だった。

最大のハイライト ― 今大会初延長タイブレークの死闘

最大の見どころは「9回2死から延長サヨナラまで」の濃密な攻防だ。八王子実践はあと1アウトで敗退という場面から金子の代打同点打。さらに9回裏には一度セーフとされた鳴門渦潮・林蒼太の一塁へのヘッドスライディングが、八王子実践のリプレー検証要求でアウトへ覆った。そこから塚原が無失点でしのいで延長へ。それでも最後は鳴門渦潮が再び流れをつかみ、山本の一打で決着した。

鳴門渦潮で光った3選手

西村 大輝(にしむら だいき)投手

3年・背番号1

179センチの右腕で、エースながら打線では3番を任される投打の中心。この日は10回を一人で投げ抜き、128球、被安打5、5奪三振、4四球で1失点。9回に同点打こそ許したが、それまで八王子実践打線を無得点に封じ、タイブレークの10回表も得点を与えなかったことがサヨナラ勝ちを呼び込んだ。一方、打撃では3打数無安打。二刀流の「打」の持ち味は封じられたものの、「投」で十分すぎる貢献を果たした。

山本 飛佑雅(やまもと ひゅうが)二塁手

2年・背番号4

160センチ、右投げ左打ちの2年生内野手。小柄ながらバットコントロールと状況対応力が持ち味で、2番として犠打もこなす。この日は3打数1安打1打点。最大の仕事は延長10回2死二、三塁からの左前サヨナラ打だった。序盤から8回までは無安打だったが、最後の一打でそれまでの苦戦を帳消しにした。勝負どころで持ち味を出した象徴的な活躍だった。

西岡 大誠(にしおか たいせい)捕手

3年・背番号2

正捕手で主将。強肩とエース西村を支えるリード、さらに中軸を担う打力が魅力。この試合では4打数1安打で、2回に二塁打を放ち先制点につながる走者となった。守っては西村の128球を受け、10回を1失点にまとめた。打撃ではその後追加安打を奪えなかったものの、投手戦を成立させた捕手としての貢献は大きかった。

八王子実践で光った3選手

塚原 翔太(つかはら しょうた)投手

3年・背番号1

178センチの右腕で、奥山慎太郎と並ぶ二枚看板。この日は9回2/3を130球、被安打6、2失点ながら自責点は1。2回の1点以降は鳴門渦潮を長く無得点に封じ、9回裏のリプレー検証後も踏ん張ってタイブレークへ持ち込んだ。本人も試合後に自身最高級の投球だったと振り返る内容。一方、最後は10回2死まで追い込みながら山本に決勝打を許し、あと1アウトを取り切れなかった。

金子 侑樹(かねこ ゆうき)

3年・背番号16

176センチ87キロの右打者。最大の武器である力強い打撃を「一打席」に凝縮した。1点を追う9回表2死一、二塁で代打として登場。フルカウントまで粘り、右前へ起死回生の同点適時打を放った。敗れれば高校野球が終わる場面で結果を残した勝負強さは、この試合の八王子実践を象徴するプレーだった。出場はこの1打席だけで、まさに一振りでチームを延長へ導いた。

櫻 泰成(さくら たいせい)中堅手

3年・背番号8

西東京大会から上位打線を担った右打者。甲子園では5打数1安打ながら、その1本が9回の反撃を生んだ。先頭で右前安打を放って出塁し、亀山翔汰の犠打などを経て金子の同点打で生還。序盤は2三振と西村に抑えられ、持ち味を十分に出せなかったが、最も必要な最終回に出塁したことが八王子実践の粘りを引き出した。

勝敗を分けた「出せた持ち味、出せなかった持ち味」

鳴門渦潮は西村の粘投とセンターラインの安定、終盤の勝負強さを発揮した一方、中軸の西丸皇槻は3打数無安打、3番西村も3打数無安打と主軸の打力は八王子実践・塚原に封じられた。それでも6安打で2点を絞り出した効率が勝因となった。

八王子実践は塚原がほぼ完璧に試合を作ったが、4番山本悠生が4打数無安打など31打数5安打。西東京大会で見せた集中打を西村相手には作れず、10回表のタイブレークを無得点で終えたことが致命傷となった。

ビデオ検証 ― 息詰まる攻防を好演出

9回裏、鳴門渦潮の先頭・林蒼太が一ゴロで一塁へヘッドスライディング。一度は「投手・塚原が一塁ベースを踏めていない」としてセーフになった。しかし八王子実践がリプレー検証を要求し、映像確認の結果、塚原のベースタッチが早かったとしてアウトへ変更された。

今大会2度目の判定変更で、八王子実践はこの回を無失点で切り抜け、今大会初の延長タイブレークに持ち込んだ。負傷による大きな選手交代は報じられていないが、このビデオ判定が試合の流れを大きく揺さぶった。

戦評

八王子実践は、西東京大会の日大鶴ケ丘戦で9回に6点を奪った粘りを甲子園でも再現し、9回2死から試合を振り出しに戻した。

しかし、鳴門渦潮も徳島大会で鳴門にサヨナラ勝ち、生光学園に逆転勝ちしてきた「最後まで勝負を捨てないチーム」。粘りと粘りが真正面からぶつかった一戦は、最後に2年生・山本飛佑雅のバットが勝敗を分けた。スコア以上に濃密な、2026年夏を象徴する接戦となった。

Return Top