
三回戦
智弁和歌山(和歌山) 7-2 敦賀気比(福井)
2026年8月15日、第108回全国高校野球選手権大会3回戦。智弁和歌山は敦賀気比に2点を先行されながら、8回に川原一将(かわはら しょう)が同点の2点適時二塁打。延長11回にも川原が勝ち越し打を放ち、一挙5得点の猛攻につなげた。7-3で勝利した智弁和歌山は、2021年以来5年ぶりとなる夏のベスト8進出を決めた。
序盤は両先発が粘り、4回まで0-0。敦賀気比は5回、川原成翔(かわはら せいしょう)、五十子李壱(いがっこ りいち)の安打などで一、三塁とし、宮本颯(みやもと りゅうが)の二ゴロで先制。さらに鵜飼新馬(うかい しんば)が中前適時打を放って2-0とした。智弁和歌山は7回まで無得点だったが、8回2死二、三塁で川原一将が左中間へ2点二塁打。試合を2-2の振り出しへ戻した。
9回でも決着せず、試合はタイブレークへ。10回は両校無得点。11回表、智弁和歌山は1死二、三塁から川原が左前へ勝ち越し適時打。続く山下晃平(やました こうへい)、黒川梨大郎(くろかわ りんたろう)も適時打を放ち、相手失策と長友悠成(ながとも ゆうせい)の犠飛も絡め一挙5点を奪った。敦賀気比はその裏に1点を返したが及ばず、智弁和歌山が7-3で勝利した。
両校のこれまでの勝ち上がり
智弁和歌山―苦しい接戦を勝ち抜いて3年連続の甲子園へ
和歌山大会は2回戦で那賀を6-0、3回戦は田辺との乱打戦を7-6で制した。準々決勝では市和歌山を2-0、準決勝は和歌山工に8-1。決勝は耐久に一度3-3へ追いつかれたものの、8回に勝ち越して4-3。大勝だけでなく1点差ゲームをものにする勝負強さを見せ、3年連続29回目の甲子園出場を決めた。
甲子園初戦の2回戦では兵庫代表・社と対戦。2回、3回に1点ずつを奪い、エース和気匠太(わき しょうた)が6回無失点の好投。長井心海(ながい しんかい)との継投で反撃を1点に抑え、2-1で勝利した。川原は背番号6、7番遊撃で出場。地方大会から続く「接戦を粘って取る」野球で3回戦へ進んできた。
敦賀気比―2年生・辻琉成を軸に福井を突破
敦賀気比は福井大会2回戦で北陸との接戦を4-3で突破。準々決勝は福井農林・奥越明成に11-1、準決勝も敦賀に10-2と打線が爆発した。決勝では福井工大福井を4-1で撃破。2年生左腕・辻琉成(つじ りゅうせい)が8回1失点10奪三振の力投を見せ、2年連続13回目となる夏の甲子園出場を決めた。
甲子園2回戦では秋田代表・横手を10-0で圧倒した。初回に後藤駿平(ごとう しゅんぺい)が先制打を放ち、3回には辻、五十子李壱らの攻撃で一挙5得点。13安打10得点を奪う一方、辻、鶴田啓人(つるた けいと)、辻勇紗生(つじ いさみ)、佐々木晴正(ささき はるまさ)の継投で完封した。投打とも充実した内容で智弁和歌山戦を迎えていた。
勝負を決めた選手―川原一将、2度目の大仕事
決勝点を叩き出したのは3年生・川原一将だ。2-2で迎えた延長11回表、タイブレークの1死二、三塁。川原は辻琉成との勝負で左前へ適時打を放ち、3-2とこの試合初めて智弁和歌山をリードさせた。この一打をきっかけに山下、黒川、長友まで攻撃がつながり5得点。8回に追いつき、11回には勝ち越す。試合の最重要場面を2度とも川原が動かした。
ハイライト―「あとアウト4つ」から川原が救った8回の一打
最大のハイライトは、2点を追う8回表2死二、三塁だった。7回まで無得点に封じ込まれていた智弁和歌山は、凡退すれば敦賀気比に逃げ切られる可能性が一気に高まる場面。7番・川原が左中間へ打球を運び、走者2人が生還した。2-2。延長戦そのものを生み出した一打であり、11回の決勝打以上に「敗戦寸前のチームを救った」という意味では価値の大きい一打だった。
智弁和歌山で光った3選手
川原 一将(かわはら しょう)
3年/背番号6/遊撃手
右投げ両打ちの遊撃手で、7番ながら勝負どころで結果を出す打撃が最大の魅力。この日は8回2死二、三塁で同点の2点適時二塁打、さらに延長11回1死二、三塁で勝ち越し適時打。打線が沈黙する中、必要な2本を最も重要な場面で放った。守備でも遊撃を任されるチームの中心選手で、攻守の要として5年ぶりの8強入りに貢献した。
ただし序盤は辻の前に攻撃の形を作れず、智弁和歌山自身も7回まで無得点。川原も2回には相手失策で出塁したものの二塁上でタッチアウトとなるなど、試合前半は持ち味を得点につなげられなかった。それでも終盤の2打席で帳尻を合わせるどころか、試合そのものをひっくり返したところに勝負強さが表れた。
久葉 亮太(くば りょうた)
3年/背番号11/投手
右投げ左打ちの救援右腕。智弁和歌山では地方大会から終盤の重要局面を任され、田辺戦では9回に登板してアウトをすべて三振で奪った実績も持つ。この試合でも米原佑真を救援し、敦賀気比打線を終盤に封じた。2-2へ追いついた後に追加点を許さず、延長11回の大量得点まで試合をつないだ働きは、川原の決勝打を生む土台となった。
一方で敦賀気比は5回までに7安打のうち複数の好機を作っており、久葉登板以前には相手打線の勢いを完全には止め切れなかった。智弁和歌山にとっては、先発・米原から久葉への継投が成功し、敦賀気比の追加点を抑えたことが逆転につながった。
山下 晃平(やました こうへい)
3年/背番号7/左翼手
右打ちの外野手で、下位打線から長打や適時打を生み出せる打撃が持ち味。延長11回、川原が勝ち越し打を放った直後の1死一、三塁で適時打。3-2で終わらせず4-2へリードを広げ、敦賀気比に重圧をかけた。川原の決勝打を「単発」で終わらせず、5得点のビッグイニングへ発展させた点で大きな貢献だった。
敦賀気比で光った3選手
辻 琉成(つじ りゅうせい)
2年/背番号8/投手・野手
左投げ左打ちの2年生で、投打の中心を担う敦賀気比のキーマン。福井大会決勝では8回1失点10奪三振、甲子園初戦でも投打で活躍した。この日も智弁和歌山を7回まで無得点に封じる力投。優勝経験もある強打線を相手に2点のリードを守り続け、試合の主導権を握った。
だが、最大の誤算は川原を仕留め切れなかったこと。8回2死から同点二塁打を許し、延長11回にも勝ち越し打を浴びた。7回までほぼ完璧だっただけに、川原との勝負がそのまま勝敗を分けた格好だ。さらに11回は守備の乱れも重なり、好投を勝利へ結びつけられなかった。
鵜飼 新馬(うかい しんば)
3年/背番号6/遊撃手
右打ちの1番打者。出塁して攻撃の起点となるだけでなく、勝負どころで走者を返せる打撃が持ち味だ。この日は初回から内野安打で出塁。5回には宮本の内野ゴロで1点を先制した直後、2死二塁から中前適時打を放ち2-0とした。敦賀気比が7回まで優位に試合を進められたのは、鵜飼が追加点を奪ったことが大きかった。
しかし、その後は智弁和歌山の継投に抑え込まれ、リードオフマンとして追加の得点機を作れなかった。11回に智弁和歌山が大量点を奪ったことで、5回の適時打も決勝打とはならず。序盤に機能した敦賀気比の上位打線を、終盤は久葉が封じたことが勝敗を分けた。
川原 成翔(かわはら せいしょう)
3年/背番号3/一塁手
右投げ左打ちの一塁手。下位寄りの打順から出塁し、打線をつなぐ役割を担う。この日は5回に安打を放ち、敦賀気比が先制する攻撃のきっかけを作った。続く五十子の安打などで一、三塁となり、宮本の内野ゴロで川原が生還。智弁和歌山の米原から試合最初の1点を奪った攻撃の起点だった。
一方、敦賀気比は5回の2点以降、10回まで追加点を奪えなかった。川原を含む中軸から下位の打者が、久葉を中心とした智弁和歌山救援陣に抑えられたことが響いた。序盤に作った好機をもう一度再現できなかった点が、延長戦での敗因につながった。
アクシデント―11回、リプレー検証でも判定は覆らず
延長11回表にはリプレー検証も行われた。川原、山下の連続適時打で智弁和歌山が4-2とした後、黒川梨大郎が右越え二塁打。山下の本塁生還を巡って敦賀気比がリクエストを要求したが、映像確認後もセーフ判定は変わらなかった。さらに右翼からの悪送球も絡み、智弁和歌山は一気に6-2へ。緊迫したタイブレークが一転、大量得点へ動く重要な場面となった。
投手起用でも両校に大きな動きがあった。智弁和歌山は今夏初登板となった2年生左腕・米原佑真(よねはら ゆうま)を先発させ、久葉亮太へ継投。一方の敦賀気比は先発の辻琉成が長く粘った後、11回途中から鶴田啓人を投入した。智弁和歌山の継投が成功したのに対し、敦賀気比は最後に守備の乱れまで重なった。
戦評―川原一将が示した「7番打者」の恐ろしさ
智弁和歌山の強さを象徴したのは、4番でもエースでもなく7番・川原一将だった。
7回まで無得点。2点を追う8回2死。そこで同点の2点二塁打を放ち、敗戦寸前のチームを救った。そして延長11回、今度は自ら勝ち越し打。川原が試合を振り出しに戻し、川原が決着への扉を開いた。
智弁和歌山は9安打7得点。敦賀気比も7安打を放ち、辻琉成が長く試合を支配した。それでも勝負どころの一本で上回ったのが智弁和歌山だった。5年ぶりの夏8強。その立役者は間違いなく、7番バッターの背番号6だった。





