1月30日にチェコのオストラヴァで行われた世界陸連 室内ツアー・ゴールドの男子60mで桐生祥秀選手が見事優勝しました。記録はそれまでサニブラウン・アブデル・ハキーム選手が持っていた日本記録6秒54を0.01秒上回る6秒53。見事日本新記録です!
桐生選手は陸上競技の100m走において、日本で初めて10秒の壁を破ったパイオニア!しかしその後、2022年に一度休養に入り翌年に復帰しますが、なかなか目立った結果を残すことができずにいました。
2024年2月の段階でワールドランキングは日本人の中で5位。今まさに調子を上げてきている桐生選手が、標準記録10秒00を突破できるか、ここからランキングを上げられるのか注目です!
今回は、桐生選手が進化したポイントについて解説します。
進化のカギは僧帽筋!
2021年と2024年の桐生選手を写真で比較すると(動画0:40)、僧帽筋が明らかに大きくなってるんです。僧帽筋とは首から肩にかけて広がる大きな筋肉ですが、なぜ僧帽筋の発達が速く走ることに影響するのでしょうか?
僧帽筋は首から肩にかけて、つまり身体の上の方にあります。身体の上の方の筋肉が大きくなると、身体の重心が高くなります。この重心が高くなるということが、速く走るうえで非常に重要なポイントになるんです。
①重心移動させやすい
スタートの時、身体は大きく前傾姿勢になります。この前傾姿勢の時の身体の重心は足よりも前にあります。僧帽筋が発達している程、その重さで重心はさらに前に移動します。つまり、スタート直後から前への重心移動がしやすくなるというわけです。
②股関節パワーを最大発揮できる
走る時にパワーを発揮するのは大きな筋肉がある股関節周りです。その股関節が最も大きな力を発揮できるのは、股関節が体幹に対して90度の角度で曲がった状態から足を振り下ろした時と言われています。
この角度で足を出し、股関節のパワーを最大限利用してスタートできている点も桐生選手の進化したポイントです。
これを可能にしたのは、①の重心移動とも関連しますが、僧帽筋発達でスタート時の重心が前に移動したこと。この股関節の角度で足を出しても身体全体のバランスがとれるようになったためと推測できます。
③位置エネルギーを使える
足は低いところからよりも高い位置から振り下ろした方が大きなエネルギーを発揮します。重心が高い方が高い位置から足を振り下ろすことになるため、この位置エネルギーも加算され、さらに大きな力を地面に伝えることができます。
①から③全て、ただただ僧帽筋が発達したからではなく、当然それらをコントロールするフィジカルの強さ、そして走るテクニックがあってこそです。桐生選手が2024年のオリンピックイヤーにどういう活躍をするか期待しましょう!