今や知らない人はいないメジャーリーガー大谷翔平選手。二刀流を成し遂げ、2023年のWBCでは日本を優勝へ導き、MVPにも輝きました。ファンへの神対応や選手同士のお茶目なやりとり、ゴミを拾う姿など、野球のプレーだけではなく人間性の高さでも注目されています。
世界最高峰の舞台で常に最高のパフォーマンスを求められるそのプレッシャー、肉体的・精神的なストレスは、一般人には到底想像できないほど大きいでしょう。しかしそんな環境下でも、今もなお継続的に結果を残し続けているまさに超一流プレイヤー。
今回は大谷選手の肉体のベースを作っているウエイトトレーニングに迫ります!
美しいウエイトトレーニング
野球選手でありながら、BIG3と呼ばれるベンチプレス・スクワット・デッドリフトのフォームは非常に美しく、そして扱っている重量もすごい!動画で実際の動きを見ながら、
大谷選手のウエイトトレーニングのすごさを確認していきましょう。
美しいフォームのベンチプレス
正確な重量は分かりませんが推定120〜130kgの重量でベンチプレスを行っています。動画0:32あたりからのフォームをご覧ください。お手本のようなフォーム!
100kgのベンチプレスを挙げることができる人は日本で1%しかいないと言われる程難しいことなのですが、大谷選手は野球のパフォーマンスアップのために行う数あるトレーニングの中の1つでしかないベンチプレスで、これだけの重量を挙げていることがすごいところです。身体を強く大きくすることにも余念がないですね。
自前の腹圧で行うスクワット
こちらも重量は推定になりますが、おそらく180〜200kg(体重の約2倍)でスクワットを行っています。スクワットの後に行っているボックススクワットやデッドリフトもそうですが、大谷選手は「パワーベルト」や「トレーニングベルト」と呼ばれるものをしていません。
多くの方は重量が重くなるとベルトをしめます。ベルトをしめることによって腹圧が高まるため、腰回りが安定して姿勢が崩れるのを防ぐことができます。
ベルトをつけずに行うと下半身は強くても腹圧が負けてしまって持ち上げられないということがありますが、大谷選手はベルトなしでこの重量を非常にきれいなフォームで扱っていることから、その体幹の強さが窺えます。
日本人でここまでフィジカルトレーニングをやり込んでいる人はまだまだ少なく、これほど馬力のある選手は他にいないのではないかと思います。まさにフィジカルモンスター。この辺りも世界のトップに君臨し続ける所以でしょう。
体重の2倍以上を持ち上げるデッドリフト
重量は225kg(体重の2倍以上)!この重量でも上半身が丸まることなく、非常にきれいな姿勢を保ったまま挙上しています。この辺りからも下半身や背中の強さを感じます。
大谷選手のクレバーさがウエイトトレーニングに表れている
前述したウエイトトレーニングから分かることは、単に身体の強さだけではありません。大谷選手の頭の良さも、トレーニング動画には表れているんです。
目的意識が明確でエゴリフティングがない
筋トレ従事者に多いのは、重さにこだわるあまり可動域が狭くなったり、勢いをつけてフォームが崩れたりということ。しかし大谷選手にはそれが全くありません。
例えばベンチプレスだと、大谷選手は身長が高い分、腕が長く、可動域が広くなります。バーベルを上げ下げする幅が広くなる程、肩周りの柔軟性が必要になってきますが、その難易度の高さを全く感じさせず、広い可動域を保ったままトレーニングを行っています。
ヘックスバースクワットでは、膝主導で行うともう少し重い重量も挙げられるはずですが、それはせず、股関節を意識したフォームで行っているあたりに、パフォーマンスアップのためのウエイトトレーニングを徹底していることが伺えます。
ヒップヒンジ重視のトレーニング
人間の身体の中で大きな力を出せるのは股関節です。股関節が曲がった状態から勢いよく伸びる時、非常に大きなパワーが発揮されます。股関節をどれだけうまく使えるかは、パフォーマンスアップにおいて非常に重要な要素です。
大谷選手のウエイトトレーニングの種目選びは股関節を強化する種目が多く、ヒップヒンジを意識していると推測できます。
例えばボックススクワットは、通常のスクワットよりも股関節をより使ってしゃがむ種目になります。
また、バックランジも股関節を使ってしゃがむ動作になります。大谷選手がすごいところはバーベルを身体の前でかついでいるところ。バーベルを身体の後ろではなく前でかつぐと、バランスをとることが非常に難しくなります。しかし、大谷選手のトレーニング動画ではその難しさが感じられません。こういった身体能力の高さもトレーニングの賜物でしょう。
ヒップヒンジを意識した種目の選択や美しいフォームは、トレーナーの指導という部分も多いにあると思いますが、大谷選手自身が納得しているからこそ継続できるのであり、特にフォームに関してはトレーニングや身体の知識がないと、ここまで美しいフォームでトレーニングをし続けることはほぼ不可能でしょう。大谷選手自身もかなりトレーニングについて勉強していると考えられます。
基本に忠実なトレーニング
さまざまなトレーニングがある中、大谷選手はベーシックな種目を選択していることが目立ちます。BIG3を取り入れるなどトレーニングとしては王道といったところ。どうしても目新しいトレーニングを見つけると飛びつきたくなるものですが、基本に忠実にトレーニングを行っています。
おそらくトレーナーがそういう方向性をある程度示しているのだと考えられますが、どういうトレーナーを見つけるかというところも選手の知識が関係します。大谷選手がトレーニングについて勉強しているからこそ、質の高いトレーナーを見つけることができるのでしょう。
シンプルに筋量がすごい
大谷選手の身体の成長はボディビルダー目線でも立派なものです!
身体の大きさからして、体重はおそらく100kgを超えていて、体脂肪率はおそらく12〜15%ほどだと思われます。それで計算すると、除脂肪体重はおおよそ85〜88kgほど。これは日本のナチュラルボディビルダーのトップ層よりも筋量自体は多いんです!大谷選手の場合は背が高いのでそこまでムキムキには見えませんが、これはかなりの筋肉量です。
トレーニングだけではなく、睡眠や食事にも相当気をつかっているという情報をよく目にします。ウエイトトレーニングだけではなく、当たり前ですが野球の練習も含め、他にもたくさんのメニューをこなしていることを考えると、起きている時間はほぼ全て野球のために時間を使っているのではないかと想像できます。世界トップレベルで活躍するためにはここまでの努力が必要だということですね。
ちなみに、ボディビルダーであり、骨格筋評論家であるバズーカ岡田こと岡田隆さんが、大谷選手の身体の変化について解説している動画があります。岡田さんも大谷選手の身体の成長、筋量アップは並大抵のことではないと太鼓判を押しています。
野球だけでつくレベルの筋肉量ではない
10年以上前の高校時代の大谷選手と比較して、身体の大きさがものすごく変わったことは明らかでしょう。岡田さんも「これは野球だけでつく筋肉ではない」「あそこまでの筋肥大を実現するためには、本人の努力、計画性、理念、全てが揃っていないと成し得ないレベル」「並大抵のことではない」と話しています。
スクワットやデッドリフトもかなり深くしゃがむようなフォームで行っていたり、扱っている重量がかなり高かったりと、筋肉を大きくするためのトレーニングをしっかり行っていることが窺えます。プロの選手とはいえ、ハードスケジュールの中で筋肉を大きくするということは簡単なことではありません。筋肉をここまで大きくするということもすごいですが、大きくした筋肉を使いこなすためのトレーニングもしっかり行っているところもまたすごいところ。
日本だけかもしれませんが、筋量が増えることがパフォーマンスアップに繋がるということがそこまで認識されていないように感じると岡田さんは話しています。
筋量はエンジンのようなものです。筋肉が増えれば、物体を加速する力が上がります。同じボールをどれだけ加速できるかという能力が上がるため、速いボールを投げたり、打球を遠くに飛ばすことができるようになるのです。また、同じボールスピードであれば、筋量がある方が余力ができるため、その余力でコントロールの精度を上げることもできます。そして、その余力は持久力にも繋がります。
筋量アップはパフォーマンスアップに直結します。世界トップで大谷選手が活躍し続けている理由の1つにフィジカルの強さがあることは間違いありません。逆に、世界で活躍しようと思うと、大谷選手のようなフィジカルの強さが必要だということになります。
ボディビルダーの岡田さんも驚くほどの大谷選手のフィジカル。野球に限らず何か競技に打ち込んでいる方は、大谷選手を見習って、筋量をアップするためのウエイトトレーニングも練習に組み込んでみてはいかがでしょうか。
参照元:【WBC】大谷翔平選手の筋肉を語るボディビルダー【バズーカ岡田新チャンネル】 #バズーカ岡田
大きな筋肉を実際に競技で活かすための、ウエイトトレーニング以外のトレーニング内容についても少し紹介します。
90kgを持ってつま先立ち歩き
ウエイトトレーニング以外では、ファーマーズウォーク(別名ラッキング)と呼ばれるトレーニングも行っているようです。
ファーマーズウォークというトレーニングは重たい物を持って歩くというシンプルなトレーニングです。大谷選手は片手に約45kg、両手で約90kgというかなり重たいダンベルを持った状態で、単に歩くのではなくつま先立ちで歩くということを難なくこなしています。
重りを持ち続ける握力の強化、そしてダンベルの重さに負けて肩が抜けないよう、僧帽筋をはじめとする肩周りの筋力も鍛えられ、もちろん下半身にも大きな刺激をいれることが可能です。
このトレーニングを行っている大谷選手の後ろ姿、特にお尻にも注目です。片足立ちをした際にお尻がプリプリ動く様子が分かります。これは中臀筋と呼ばれるお尻のやや外側についている筋肉が働いているためです。中臀筋は片足立ちでもしっかり骨盤を安定させてくれる筋肉です。つまりバランス能力が強化されます。
90kgという重さは決して軽いものではありません。その重さでもここまで安定して動けるフィジカルの強さはさすがとしか言えません!
メディシンボールでのプライオメトリックトレーニング
仰向けに寝転がり、落ちてきたメディシンボールを肘の屈伸を利用して、チェストパスのように真上に投げ返す「ドロップボール」というトレーニングも行っています。これは上半身の瞬発力を養うトレーニングです。
動画を見ていると、ボール遊びのように簡単に返していますが、このメディシンボールの重さは3.6kg。ウエイトトレーニングだけでなく、どんなトレーニングも美しくしなやかにこなせるのは能力が高い証拠です。トップレベルの選手の動きはまさに芸術ですね。
瞬発力を鍛えるようなプライオメトリックトレーニングは、身体への負担も大きくなるため、ある程度の筋力や柔軟性があることが前提になります。もし取り入れる際は、メディシンボールの重さや落とす高さなどは無理ないところで行うよう注意してください。
参照元:大谷翔平選手の最近話題になっているトレーニングについて解説します
フィジカルを支える食事と睡眠
ここまで大谷選手のフィジカルのすごさをさまざまな観点からお伝えしましたが、そのフィジカルを手に入れるためには、トレーニングだけでなく、食事と睡眠も管理する必要があります。
大谷選手の食事へのこだわり
大谷選手は食事の意識が高いことでも有名です。
1日の摂取カロリーは約3500〜4500kcal。たんぱく質摂取は1食で60gと言われています。これは一般の方でそれなりにたんぱく質を意識して摂取している方の2〜3倍の量。
この量を毎日摂取しようと思うと、内臓の強さも必要になりますが、その辺りは高校時代の食トレで鍛えられたのでしょう。
花巻東高校では1日ご飯10杯が義務づけられていたそうです。当時の大谷選手は身長が190cm近くあったにもかからわず、体重は60kg台とかなり細身の体型でしたが、食トレを経て、3年間で20kg増量しています。このエピソードは、フィジカルを強くするためにはトレーニングだけではなく、食事も非常に重要だということの裏付けとなるでしょう。
たんぱく質を補うためか、2023年のWBCの時には、毎食茹で卵を3つ食べていたとか、間食で茹で卵を4つ食べていたといったエピソードが紹介されています。また、調味料を使わないことも有名です。大谷選手にとって、食事は楽しむものではなく、野球をするための身体作りの一環。基本的には食材を栄養素でしかみておらず、野菜も茹でてそのまま食べるそうです。
日本ハム時代の大谷選手は、調理師や管理栄養士の方に栄養面の管理を任せていましたが、メジャー挑戦を見据えて、自ら栄養の勉強を始めます。食品に入っている栄養素に興味津々で、管理栄養士に質問をよくしていたとか。
プロにもなると、周りにそれぞれの分野のプロが揃っているはずですが、その中でも自ら勉強する大谷選手の姿勢は見習いたいところですね。食事についても自ら勉強して実践するストイックさが大物であることを表しています。
睡眠も抜かりなし
大谷選手は食事と同じくらい睡眠も大事にしています。
日本ハム時代は睡眠の質の維持のため、遠征時は専用マットを持って行っていたそうです。登板日から逆算し、いつどのくらい寝るのかを計算して睡眠をとっており、10時間以上寝ることもしばしばあるそう。寝具メーカーと睡眠コンディションサポート契約を結んでいて、オフには寝具の測定を行い、大谷選手に合ったマットの特注なども行っているといいます。
トレーニングだけでなく、食事・睡眠の面からも、強いフィジカルを支えていることが分かりますね。
参照元:【衝撃】ダルビッシュら全日本人選手がドン引き!大谷翔平の異常すぎる食生活エピソード50選
大谷選手は歴史を変えた選手です。もちろんまだまだ歴史を作っていくでしょう!ここまでBIGになるには理由があります。トレーニング種目や種目の選択、食事や睡眠の意識の高さなど、何か一つでもご自身の人生に取り入れられるものがないか、是非参考にしてみてください。