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アウトなら続行、セーフならサヨナラ―有明の快進撃を止めた健大高崎・石田雄星の一打を巡る“運命のビデオ判定”

アウトなら続行、セーフならサヨナラ―有明の快進撃を止めた健大高崎・石田雄星の一打を巡る“運命のビデオ判定”

準々決勝
健大高崎(群馬) 1x-0 有明(熊本)
延長タイブレーク

2026年8月18日、第108回全国高校野球選手権大会準々決勝。健大高崎と初出場・有明の一戦は、9回を終えて0-0という息詰まる投手戦となった。

延長10回タイブレーク、最後に試合を決めたのは健大高崎の主将・石田雄星(いしだ ゆうせい)。1死二、三塁から二塁への内野安打を放ち、三塁走者が生還。リプレー検証でも判定は覆らず、1-0の劇的サヨナラ勝ちとなった。

試合は健大高崎・石垣聡志(いしがき そうし)、有明・斉藤遼汰郎(さいとう りょうたろう)の両投手による投げ合いとなった。有明は7回、廣沢遼太朗(ひろさわ りょうたろう)の遊撃内野安打などから一、三塁としたが得点できず。健大高崎も斉藤を攻略できず、9回まで両校無得点。健大高崎7安打、有明5安打を放ちながらホームが遠く、試合は0-0のままタイブレークへ突入した。

10回表、有明はタイブレークの走者を生かせず無得点。その裏、健大高崎は送りバントなどで1死二、三塁とすると2番・石田雄星が打席へ。追い込まれながら二塁方向へ打球を転がし、三塁走者・藤村勇也(ふじむら ゆうや)が本塁へ突入。クロスプレーの末のビデオ判定となるもセーフとなり、健大高崎が1-0でサヨナラ勝ちした。

健大高崎 ― 甲子園でも接戦をものにして12年ぶりの8強へ

甲子園1回戦は八幡商を7-1で破り、石垣が9回4安打1失点の好投。2回戦では東海大甲府を1-0で下し、石田の安打と好走塁から佐藤麻恩(さとう まおん)の適時打で唯一の得点を奪った。3回戦は佐野日大に先制されながら、2回に岩井由來(いわい よしき)、豊永飛輝(とよなが あすき)、神崎翔斗(かんざき しょうと)の適時打で逆転し4-1。投手陣も4人の継投で1失点に抑え、12年ぶりのベスト8へ進んだ。

有明 ― 甲子園3連勝、すべて逆転で初のベスト8

甲子園1回戦では立命館宇治を6-3で破り、2回戦は長崎日大に3-2。2回に相手守備の乱れを突いて逆転し、その後は工修哉(たくみ しゅうや)、斉藤の継投で逃げ切った。3回戦の東日大昌平戦では7回まで0-1だったが、8回2死満塁から代打・廣沢が逆転2点打。さらに栄井彰(さかい しょう)が2点適時打を放ち4-1で勝利した。初出場で3勝、熊本県勢としても歴史的な8強進出だった。

勝負を決めた主将・石田雄星 ― 最後に「転がして」決める

延長10回裏1死二、三塁。長打は必要なく、内野に転がせば勝機が生まれる場面だった。石田は1ボール2ストライクと追い込まれながら、斉藤の球を二塁方向へ。二塁手が処理する間に藤村がホームへ突入し、間一髪セーフ。派手な本塁打ではなく、走者と打者が一体となって1点をもぎ取る健大高崎らしい決勝打だった。

石田は2回戦の東海大甲府戦でも安打から好走塁で唯一の得点に絡んでいる。走塁、打撃、主将としての判断力 ― この夏に繰り返してきた「1点を奪う野球」が、準々決勝でも最後の最後に結実した。

サヨナラか?アウトか!?運命のリプレー検証

最大のハイライトは、石田の打球そのものだけではない。二塁への内野安打で藤村が本塁へ突入すると、捕手とのクロスプレーはセーフ判定。有明側はすぐにリプレー検証を要求した。場内が判定を待つ緊張に包まれる中、映像確認後も判定は変わらず「セーフ」。その瞬間に健大高崎の準決勝進出が決まった。

0-0で続いた投手戦、延長タイブレーク、主将の内野安打、そしてビデオ判定。わずか1点を巡るすべての緊張感が最後の数秒に凝縮された、準々決勝屈指の名場面だった。

健大高崎で光った3選手

石田 雄星(いしだ ゆうせい)

3年/背番号8/中堅手・主将

右投げ左打ち。俊足、巧打、外野守備を高いレベルで兼ね備え、2番打者として小技から強攻まで選択できるのが持ち味だ。大会前から「三拍子そろった主将」と評され、甲子園経験も豊富。この日は最後の最後、延長10回1死二、三塁から二塁への適時内野安打を放ち、サヨナラ勝ちを決めた。

それまでの打席では斉藤を決定的に崩せず、チームも9回まで無得点。石田の得意とする積極的な攻撃も長く封じられた。それでも最終打席では「長打ではなく転がせば得点になる」状況に対応。主将として求められた一打を最後に出し、苦戦そのものを勝利へ変えた。

石垣 聡志(いしがき そうし)

2年/背番号1/投手

右腕のエース格で、140キロ台の直球にカットボール、ツーシーム、ナックルカーブなどを織り交ぜる投球が特徴。この日は延長10回を一人で投げ抜き、5安打無失点。有明の俊足打線をホームへ返さず、サヨナラの舞台を整えた。2年生ながら「負ければ終わり」の準々決勝を完封したことが最大の勝因だ。

7回には広沢の内野安打などで一、三塁の危機を迎え、有明得意の足を絡めた攻撃を受けた。それでも後続を断ち、先制を許さなかった。打線が斉藤を攻略できない中、石垣が「0」を並べ続けたことで、石田の一打がサヨナラ打になる条件を作った。

大岩 翔斗(おおいわ しょうと)

3年/背番号2/捕手

正捕手として投手陣をまとめる3年生。石垣の変化球を生かす配球と、走者を背負っても落ち着いて投手をリードする守備力が持ち味だ。有明は永田を中心に甲子園3試合で9盗塁を記録しており、機動力が最大の武器。それを相手に10イニング無失点へ導いた大岩の役割は、数字以上に大きかった。

打撃では斉藤の前に決定打を放てず、健大高崎打線全体としても9回まで無得点。攻撃面で持ち味を十分に出した試合ではなかったが、捕手として斉藤との投手戦に付き合い、相手の機動力を大量得点へつなげさせなかった点で勝利に貢献した。

有明で光った3選手

斉藤 遼汰郎(さいとう りょうたろう)

3年/背番号1/投手

175センチ76キロの左腕。大きなフォームから140キロ台の直球を投げ込み、緩急も使いながら打者を打ち取る。有明の甲子園3勝を支えた大黒柱で、この準々決勝でも健大高崎打線を9回まで無得点に封じた。初出場校が全国屈指の強豪と延長まで互角に戦えた最大の理由が斉藤の投球だった。

唯一の失点は延長10回。タイブレークで走者を背負った状態から石田を内野安打に仕留めながら、三塁走者の生還を許した。通常のイニングでは最後まで崩されなかっただけに、敗因を「斉藤が打たれた」とするのは酷。むしろ最後まで健大高崎の強打を封じ続けた力投だった。

広沢 遼太朗(ひろさわ りょうたろう)

3年/背番号15/指名打者

右投げ左打ち。前戦の東日大昌平戦では甲子園初打席で逆転2点適時打を放った勝負強い左打者。この日は一躍5番・指名打者で先発に抜てきされた。7回には石垣のツーシームを高く弾ませて遊撃内野安打とし、一、三塁の好機を作った。有明が最も先制に近づいた場面の中心にいた。

しかし、前戦のように走者を返す一打までは出なかった。石垣は広沢の長打力を抑え、内野安打以外では決定打を許さず。有明としては3回戦のヒーローをスタメンへ昇格させる勝負手を打ったが、得点という結果には結びつかなかった。

永田 晴輝(ながた せいき)

3年/背番号4/二塁手

右投げ左打ちの俊足リードオフマン。熊本大会から盗塁と積極走塁で相手守備を揺さぶり、甲子園3回戦終了時点で14打数5安打、3盗塁。決勝でも安打から二盗、三盗を決めるなど「足で1点を作る」有明野球の象徴だった。

しかし準々決勝では石垣-大岩のバッテリーを相手に、得意の機動力を得点へ変えられなかった。有明は5安打を放ったものの打線がつながらず、10回を通じて無得点。永田を起点に走者を動かし、一気に畳み掛けるこれまでの攻撃パターンを健大高崎に封じられたことが敗因となった。

戦評 ― 主将・石田だからこそ知る「1点の重み」が試合を決した

健大高崎が奪った得点は、たった1点だった。

石垣聡志が10回をゼロに抑え、有明の斉藤遼汰郎も9回まで一歩も譲らない。長打で試合を壊す展開ではなく、送り、走り、転がし、ホームへ飛び込む。その最後の役割を担ったのが主将・石田雄星だった。

石田は東海大甲府戦でも、自らの安打と走塁で1-0の決勝点に絡んだ。そして有明戦も1-0。その一点を今度は自分のバットで直接もぎ取った。

初出場の有明旋風を止めたのは、派手な大量得点ではない。主将が最後まで勝つ可能性を探し続け、内野への一打と全力疾走で奪った「1点」だった。

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