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甲子園と大学で頂点を知る男、仙台へ―競合1位で獲得・渡部海に託された未来[東北楽天ゴールデンイーグルス]ドラフト2026

甲子園と大学で頂点を知る男、仙台へ―競合1位で獲得・渡部海に託された未来[東北楽天ゴールデンイーグルス]ドラフト2026

2026年のドラフト会議で、東北楽天ゴールデンイーグルスは青山学院大学の捕手・渡部海を1位指名し、中日との競合の末に交渉権を獲得した。支配下6人、育成4人という指名の中心にあるのは、チームの骨格をつくり直す狙いである。今季の成績と指名選手の顔ぶれから、楽天の現在地と再建への道筋を読み解く。

1位・渡部海のプロフィールとエピソード

渡部海(わたべ・かい)は、2004年8月20日生まれ、大阪府出身の22歳。身長180センチ、体重90キロの右投右打の捕手で、智弁和歌山高校から青山学院大学へ進んだ。

高校2年夏には正捕手として甲子園優勝を経験。 その成長を語るうえで欠かせないのが、高校時代の恩師・中谷仁監督である。元プロ捕手の中谷から学んだのは、捕球や送球だけではない。ミットの構え方の強弱、声のかけ方、サインの出し方によって投手へ意思を伝える技術など、海部の根底を支える全てといっても過言ではない。

高校卒業後の進路でも、中谷の助言を受けて大学進学を選択。青学大の安藤寧則監督とは、4年後にドラフト1位でプロへ進む目標を共有。大学では右肩の故障も経験したが、周囲の助力を得て復帰に合わせて動作を改善するなど、逆境にも負けない精神力も鍛えあげた。

華やかな優勝歴の裏側には、指導を吸収し、課題を修正してきた積み重ねがある。今回の1位指名は、恩師二人と共に描いた目標の実現でもあった。

公式戦の実績 ― “強打の捕手”の名を欲しいままに

渡部の実績は、強豪の正捕手として勝利を重ねてきた点にある。青学大では1年春からマスクをかぶり、2023年春から2025年秋までの東都大学リーグ6連覇に貢献。全日本大学選手権と明治神宮大会でも、それぞれ2度の優勝を経験した。2024年秋には13試合で打率.356、1本塁打、9打点を記録し、最高殊勲選手に選ばれている。 

大学リーグ戦では通算11本塁打を放ち、2026年春は打率.282、1本塁打、10打点。長打に加え、四死球で出塁する能力も示している。守備では二塁送球1秒85を記録する素早い送球が武器である。

入団前の過去の優勝歴を、捕手個人の能力だけに帰することはできないのはもちろんだ。プロでの評価を左右するのは、強肩や長打力に加え、多様な投手の持ち味を引き出す対応力を再現できるかが鍵となる。だが、筆者としては海部は持ち前の探求心と努力によって、2027年シーズンからいきなりの開幕捕手、そして打席成績でも上位に食い込む可能性は大いにあると期待してやまない。

楽天の思惑と渡部に期待される役割

楽天の狙いは、捕手の補強と右打者の打力強化を一度に進めることである。吉井理人監督は球団公式の説明で、捕手と打撃の良い右打者が補強ポイントだったと明かしており、渡部は、その双方に合致する存在だった。

また、背景には捕手陣の不確定要素もある。主戦捕手の太田光は今季国内FA権を取得し、伊藤光は戦力外となった。安田悠馬も打力を生かして一塁や指名打者で起用される機会があり、捕手の層を厚くする必要が急務だった事情も垣間見える。4位でも東芝の萩原義輝を指名したことから、今回の補強は明確な重点策と言えるだろう。

そのため今回の中日との競合指名で交渉権を引き寄せたことは、2年前の4球団が競合する中で宗山塁を引き当てた強運を発揮してみせたことは、実に大きい。

今季の戦績と再建に必要な4つの課題

58勝84敗 ― 数字が示す得点力不足

楽天の2026年レギュラーシーズンは、58勝84敗1分、勝率.408の最下位だった。首位とは34ゲーム差。473得点はリーグ最少で、555失点との差はマイナス82点である。チーム打率は.239、103本塁打、防御率は3.63。打率、本塁打、防御率はいずれもリーグ4位であり、特定の数字だけが極端に悪いわけではない。それでも得点が最少だった点は重い。

安打数を増やすだけでなく、出塁を長打や進塁につなげる攻撃の抜本的な改善が上位進出への必須課題と言えそうだ。

課題① 出塁と長打を組み合わせ、得点を増やす

攻撃では、出塁する役割と走者を返す役割を明確にした打線を構築したいところだ。上位打線は打率だけでなく四球を含む出塁能力を重視し、中軸には長打を期待できる選手を置く。極めてオーソドックスな選手起用だが、2025年の楽天にはそれがうまく機能させられなかったという苦い思いがある。

そのため今回のドラフトでは、2位に岡田啓吾を俊足巧打の内野手、5位に高 義博を走攻守のそろった選手をそれぞれ獲得したことからも、打線の厚みと充実度を重要視している姿勢が見てとれる。

両者を出塁や走塁の競争に加え、渡部には捕手としての適応を進めながら右の長打力をさらに伸ばすという、今回のドラフトにおける世代が担うそんな未来像を描いていると言えるだろう。

課題② 捕手の競争を、投手陣全体の改善につなげる

渡部と合わせて4位指名の萩原は、送球や低い投球を体で止めるブロッキングの能力を高く評価されており、捕手層を厚くする絶好の機会となる。

提言したいのは、捕手ごとの役割を明確にしながら競争させる運用である。投手との相性、連戦時の負担、打撃の状態を踏まえて起用し、防御率や勝敗だけで捕手を評価せず、捕逸、送球、投手との意思疎通といった細かな能力も個々に判断しながら起用を見定めることになるだろう。

捕手の交代だけで失点が減るわけではないが、投手の制球や球質、野手の守備まで含めて改善してこそ、補強の効果が表れると言える。

課題③ 与える走者を減らし、投手の役割を整える

2025年シーズの楽天投手陣は404四球、62死球を記録した。死球はリーグ最多であり、無償で走者を出す場面を減らすのが、改善の大きなポイントの一つといっても過言ではない。防御率3.63はリーグ4位で、上位球団との差を縮めるには失点抑制も欠かせない。

改善策としては、先発と救援の役割を整理し、各投手がストライクを取れる球種を増やす取り組みを進めたい。単に四球を恐れて甘い球を投げるのではなく、有利なカウントをつくれる配球と制球力を磨くことが、シーズンオフからキャンプに向けて個々に取り組むべき課題と言える。

その点、今回3位指名の樋口 新は試合を組み立てる能力、6位指名の渡邉 都斗は速球と多彩な変化球を評価された左腕だ。 樋口は社会人、渡邉は独立リーグ上がりと、それぞれ経験の点では即戦力として期待できるだけに、両者の適性を見極め、既存投手との競争を通じていかに一軍投手陣として機能させるかが、楽天ピッチングスタッフ陣の腕の見せ所だろう。

課題④ 育成と一軍起用をつなぐ方針を持つ

今回のドラフトでは、即戦力候補に加え、育成でも外野手、左腕、長距離打者を指名した。 大切なのは、指名後に各選手の到達目標を具体化することだと筆者は考える。

例えば、打者なら選球眼や速球への対応、投手なら制球や決め球の精度など、一軍で起用するための課題を明確かつ具体的に共有する。短期間の打率や勝敗だけに左右されず、改善が見られた選手には実戦機会を与え、うまくチームとしての核を作り出したい。渡部を中心とする2026年の指名を再建の成果へ変えるには、補強、育成、起用を同じ方針でつなぐことが求められる。

昨季2025年は三木肇前監督が成績低迷の理由により、シーズン途中に「休養」という名の事実上の解任がなされた。その後を引き継いだ吉井理人GMが監督として就任するも、チームの低迷ぶりは如何ともい難いまま戦いを終えてしまった。

ファンとしては「来期こそ巻き込む優勝を!」と意気込む気持ちは分からぬではないが、今はチームとしての再構築を軸として、勝敗や順位にあまり拘泥せずに、じっくりと腰を据えて「チームがどう変わっていくのか」の途中経過こそを楽しみにするような、そんな2027年シーズンを送ることが寛容ではないかと筆者は考える。

楽天に希望はある。

2026年ドラフト・楽天ゴールデンイーグルス指名選手一覧

支配下指名

指名順名前読み仮名年齢守備位置指名時の所属
1位渡部 海わたべ かい22歳捕手青山学院大学
2位岡田 啓吾おかだ けいご22歳内野手明治大学
3位樋口 新ひぐち しん24歳投手王子
4位萩原 義輝はぎはら よしあき25歳捕手東芝
5位高 義博たか よしひろ22歳内野手オイシックス新潟アルビレックス・ベースボール・クラブ
6位渡邉 都斗わたなべ みやと24歳投手高知ファイティングドッグス〈四国アイランドリーグplus〉

育成指名

指名順名前読み仮名年齢守備位置指名時の所属
育成1位根本 剛希ねもと ごうき21歳外野手富山GRNサンダーバーズ〈日本海リーグ〉
育成2位藤原 佑ふじはら ゆう20歳外野手徳島インディゴソックス〈四国アイランドリーグplus〉
育成3位金 韓根きむ はんぐん22歳投手茨城アストロプラネッツ〈ルートインBCリーグ〉
育成4位寺井 広大てらい こうだい19歳内野手徳島インディゴソックス〈四国アイランドリーグplus〉

※年齢および所属はドラフト当日の2026年10月22日時点。

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